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赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
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第11話「狼達の殺戮大パーティー!」

あ、あるキャラの髪の色を変更しやした。


A.


「ご苦労だったな血透蟲触(インジブラド)、ステル・フィエーアよ」



人気の無い廃工場へとやって来たサラファン姿の女は軍服姿の女....百狼牙盟ティンダロス、通称ダロスに名を呼ばれるとハァと深い溜め息をついた。



「いやぁ疲れたよ、可愛い娘の美味しい血を吸えたから良いけどね。でも未だ空腹は満たせてないや」



「では彼処に見える二人で腹を膨らませるがよい」



ダロスが指差す方向にフィエーアが眼を向けると、一組の男女が抱き合っているではないか。それを見たフィエーアは腹の虫を鳴かせ、滝の様に涎を垂らしながら二人の目の前に躍り出た。



「男は要らないけど、女の方は美味しそうだね。戴きまーす」



「なんだお前!俺の彼女(おんな)に手は出させねえぞ」



「邪魔だ、どけ。なんてね」



軽口を叩き、ニタァとフィエーアは不気味に微笑を浮かべ男の心臓を触手で貫くと、其の儘錆び付いたコンテナに叩き付けた。



「あ、ああ....!」



「可哀想に、怖いんだね。今すぐその恐怖から解放してあげりはよ」



まるでお子様ランチを前に眼を輝かせ、だらしなく涎を垂らす子供の如き表情で近付いて来るフィエーア。


彼の次は自分が殺される....逃げなくてはと思いつつも女は腰が抜けて動く事が出来ない!



「きゃあああああ!」



遂にフィエーアの触手は女の首筋に針を突き立られ、彼女の血液を吸い始めた。この様な食事を摂る事からフィエーアを知る者の中には吸血鬼と呼ぶ者も存在する。



「あ、あぁ....」



「ククク、いつ見ても気味が悪いな。出来の悪いホラー映画みたいだ」



「酷いなあ、これでも私は乙女なんだから傷付くんだよ?」



フィエーアは血を吸い尽くすと干涸び木乃伊と成り果てた女をし、もう稼働する事の無い焼却炉へと投げ込んだ。



「ふん、全く偏食家め。たまには男も喰ったらどうだ?」



「女の子の血じゃなきゃ飲む気になりませーん。男の血は不味いし、それに....」



フィエーアはダロスの肩に顎を乗せ、君も女の子にしか興味ない癖に....と耳元で囁いた。


その瞬間ダロスは薄暗い此の場でも居場所が直ぐに分かる程まっ赤に頬を染めた。普段は冷静な彼女も流石に動揺したらしい。



「ば、ばれてたのか!?」



「普段から矢鱈と男がどうこう言ってて逆に怪しいし、美人なのに彼氏作らないから」



「馬鹿者、我々に恋人など不要なのだ」



「私がなってあげても良いんだよ、恋人。私もダロスの事好きだったし」



「本当か!」



「でも不要なんでしょ、恋人」



「ゴホン、その通りだ。男だろうが女だろうが恋人など必要ない!! ただ目的を果たす為に働くだけだ」



「そうだね。じゃあ若しも目的を達成できたら、私の恋人になってくれない?」



「本気か!? まあ良かろう、実はずっと可愛いなとか思ってたからな」



「やーん嬉しい!」



こうして敵陣営の中でも女性同士のカップルが誕生しようとしていた、非常に御目出度いのだが悪党達なので複雑な気分である。



「いやあ君達、青春だねェ」



ダクトの中から高音域の声が聞こえたかと思うと白衣の幼女が現れた。コイツにやり取りを聞かれていたと察してダロスは再び頬を赤く染め、目線を泳がせた。



「い、居たのか千戦狂叫。覗きとはタチが悪いな」



「タチは君だと思うよぉ百狼牙盟ティンダロス」



「えー私がネコなのぉ? タチが良かった」



「なななななな!! と、とにかく仕事に戻るぞしかしまだ戻らんのか、何をしておるのだ奴はーーーーッ!」



ダロスが怒声を上げると同時に春野たちの通う亜神高校の屋上にて、シースドレスの上にパレオと半透明な上着・カラシリスを着用した紫髪の女がうるせェなアイツと舌打ちした。




第11話「狼達の殺戮大パーティー!」



B.


風見さんを助けに戻って来てみれば、長閑な亜神町は其処等じゅうに人間の亡骸が転がっている地獄の一丁目と化しているでは有りませんか!



「どういう事ですのこれは!」



“緊急事態が発生しました、直ちに亜神高校へ避難して下さい“と繰り返されるアナウンスや鳴り響くサイレンを聞いていると、何が起こったのか分かりませんが風見さんの安否がますます心配になって来ますわ。



「あーもう何故にスマホを忘れてしまいましたの!あ、落ち着きなさい私、此くらいで取り乱して居ては風見さんに失望されますわよ」



自分にそう言い聞かせて取り敢えず春野家へと転移。使用者である椋椅の知る者以外には破壊する事は不可能の結界が張られて居るので安全ですわ....私の様に瞬間移動能力が有れば侵入は可能ですが。



「グルルル」



「ハッ!?」



春野家の貧相な門前に着いた瞬間に聞こえた低い獣の唸り声に振り向くと巨大な犬、と言うよりも狼達が飛び掛かって来ました!



「動物を攻撃するのは心が痛みますけど」



「ぎゃうっ」



「私は絶対に風見さんを助け出さなくてはなりませんの、悪く思わないで下さいまし!」




我が武器、金戦斧・ゴルアクストで撃墜し狼の餌にならずに済みましたわ。しかしオカシイですわ、日本の狼は絶滅したハズ。


ハッ、もしや此の狼が街の人々を? 有り得ませんわね、たかが一匹の狼なら警察でなんとかなる筈ですし此の混乱に乗じて何処からか逃げて来たに違い有りませんわ!




「動物園から逃げたのでしょうか。それにしても黒い狼だなんて絶対悪役ですわ、金色の狼に倒される役ですわ!」




なんて自分でも良く分からない事を言いながら風見さーん!と名を叫びながら春野家へ....ですが人の気配が全く有りません。


御手洗いに台所に寝室に御風呂、すべての部屋を探しましたが見付かりませんでした。



「もしや御自宅に戻られたのでは?」



....と思って風見さんの御自宅にも来てみましたが、うう....風見さんの匂いが充満しています、これぞ正に天国ですわ。あわよくば箪笥の中やベッドの下なんかも確認したい。



「でも風見さん自分の家を私が漁ったと知ったら....いえ緊急事態ですわ、嫌いになられたって死なれるよりマシですわ!」



さっきのオオカミに襲われた際に負傷して見付かりにくい場所に隠れて力尽きていたりするかも知れませんし。でもそれなら血の臭いで気付くのでは、とにかく探して探して探しまくりますわ!



「....誰も居ませんわ!!」



確かに此の街には居るはず、ああ何処に居るか訊いてから来れば良かったですわ。自宅にスマホを取りに戻って....風見さんの電話番号知りませんわ、頼んでも教えてくれなかったから。



「そうだ、生き残った人は亜神高校に避難しろとアナウンスで言っていましたわね。では風見さんも其処へ非難なされたのでは!?」



となれば亜神学校へ早速転移! そのグラウンドに着きましたが先生や警察の方々の死体だらけですわ。


入り口には机や椅子でバリケードが築かれて居ます、何かの侵入を防ぐ為に作ったのでしょうか。でも此れでは新たに避難して来た方を入れる事が出来ないのでは?



「....っ、この街の惨状はあなた達が」



殺気を感じて気付くと黒い狼達に囲まれていました、どうやら先ほど襲ってきたものと同種みたいですわね。



「キャウキャウキャウ」



「ハァッ!!」



「ぎゃん」



数匹を纏めて叩き斬ってやりましたわ。それにしてもコイツらの凶暴性、人々を食い殺して此の街を混乱に陥れた元凶に違い有りませんわ!



「グルルァ!」



「ハァッ....あうっ!?」



痛い痛い痛いですわ〜〜〜この私の肩に噛み付くなんて下郎ならぬ下狼の分際で生意気なので死刑ですわ!



「この、離れなさい!」



「きゃんっ」



ゴルアクトで幾ら倒しても次々と集まって来てキリがない、このままでは数の暴力に屈してしまいますわ。こうなれば魔力消費が激しいけど、あの大技を使うしか!



「....地空天陸」



「ギャウ!?」



逆さまになったグラウンドごと群狼を上空二千メートルに転移、彼らは皆、コンクリートへ落下し一瞬で全滅しましたわ。



「後始末もしなくてはいけないのが、地天昇の面倒なところですわね」



グラウンドも落下する前に触れて元の場所に転移させ、巨大な衝撃が発生し周囲に被害が出るのを防ぎましたわ。


そして本来の目的である校内へと転移、外にはあんな奴らだけらけ。という事は此所に居てくれないと生存している確率が低く....!



「三度目の正直で有ります様に!」



しかし其の願いも虚しく風見さんの姿が全く見えません。御手洗いにいらっしゃるのでしょうか。



「アイツらから私達生徒を守る為に先生や警察の人たちは....」



「世の中腐った大人たちばかりだと思ってたけど、その勇気ある行動に敬意を表すよ」



どうしてこんな事にと泣き喚いたり怒鳴ったり、ブツブツと独り言を繰り返す生徒達の中に達観した会話をしている生徒二人。


比較的冷静な彼女達に風見さんを見てないか訊くとしましょう、風見さんのクラスメイトなので知ってる人ですし。この事態の詳細を訊きたいですが風見さんを見付けるのが優先ですわ!



「石掘さん、風見さんを見ませんでしたか?」



「えー風見さんは居ないよ、逃げ切れなかったのかな」



「運の良さ十点くらいだね、かわいそう」



石掘さんは見た目は可愛らしいし勉強も運動もそこそこ(こな)す娘なのですが、何にでも点数を付けたがる糞みたいな癖がムカつきますわ。いつも一緒に居る三尋木(みぞろぎ)さんはマトモな方ですのに....!



「こんな時まで不謹慎な。あ....か、風見さんの気配!」



グラウンドから力強くも繊細で優しい気配を感じます、やっと、やっと....愛する風見さんに出会える。そう思うと体が勝手に風見さんが居る筈のグラウンドへ転移してしまいましたわ!



「うわ消えた」



「三十点くらい驚いたよ」



「低っ、あんま驚いて無いじゃん」




C.


ああ....この吊り目と茶髪ショートとピンク色のピアスは間違いなく風見さんですわ!



「風見さん!」



「ちょっ、金城....」



「あ、ごめんなさい」



思わず抱き付いてしまいましたわ、私とした事が(はした)ない....でも無事でいてくれた事が嬉しくて嬉しくて!



「良いわよ、緋美華たちは?」



やっぱり風見さんは何時だって春野さんの事ばかり、だから嫉妬に狂ってしまうのですわ。



「焦って置いてきてしまいました、ですがそろそろ戻って来る筈ですわよ、それとその犬は?」



さっきから気になっていた、風見さんが腕に抱き抱えてる黒い子犬に言及すると彼女は顔を赤らめて「狼みたいな奴に襲われてたから助けたのよ」と小声で呟きました。



「まあ!」



「そのせいで痛い目を見たわ、慣れない事はしないもんね」



「そんな....御立派ですわ!」



嗚呼、能力を持たないのに勇敢にも小さな命を救う為に自分の命を省みずに戦うなんて。この美人で聡明で金持ちの私が惚れただけ有りますわ!



「あの、ごめんなさい。こんな事態になってると知らなかったとは言え却って危険な場所に転移してしまうなんて」



「良いわよ、善意でやってくれたんでしょ。お陰でこの子も助けられたし」



そう言いながら子犬を撫でる風見さんの天使と言っても差し支えない笑顔に安堵し、涙が勝手に流れてキマシタワー。



「うう、ぐすっ。本当に心配しましたのよ」



「何よアンタ、泣いてくれてるの?気味悪いわね」



「酷いですわ!」



「冗談よ、ありがと。アンタのことちょっとだけ好きになれたわ」



え、えっえっすっ好き....好きって、いま私のことを好きにって仰られましたの!? 分かっています恋愛的な好きと意味の言葉では無いくらい、それでも嬉しいですわ!



「風見さ〜〜〜〜〜ん!!」



「ちょ、ちょっと」



「うぅっ....何で私が来るまで春野家に居ませんでしたの」



「あそこと離れた場所に飛ばされたからそこに隠れてたのよ。で、この子が襲われてるの見えたから助けて、ここまで全速力で走って逃げてきたわけ」



「そうでしたの....ごめんなさい」



「だから良いってば」



やはり風見さんはお優しいお方ですわ、初めて会った時からずっと....あら?



「ちょっと上着脱いで下さいまし」



「嫌よ変態」



変態だなんて、私だって出来れば破廉恥な行為に及ぶ時でないと服を脱がそうとなんてしませんわよ。



「ぐぬぬ、お許し下さいませ!」



「わっ」



いくら上着を脱がそうとしても拒絶するので上着を私の足元に転移させて貰いましたわ。すると案の定、肩から血が流れていました....!



「やっぱり怪我してるじゃないですか!」



「見抜いてたの」



「微かに血の臭いがしていたので、まさか奴等に噛みつかれて!?」



「噛みつかれてたらこんな軽い傷じゃ済まないわよ多分、大丈夫....転んで出来た傷よ」



確かに奴らの牙は鋭くナイフみたいに尖っていて、私も能力者で無かったら肩に噛み付かれた時点でかなりの重傷を負っていた筈ですわ。



「だけど膿んだり黴菌が入ってたら大変ですわ、早く保健室へ行って御手当てを!」



こうして教室に行く前に風見さんと彼女が助けた子犬と保健室の前に一緒に転移しました、幸い其の様子は誰にも見られてませんわね。



「風見さんの傷の手当てをお願いしますわ!」



「ちょっと、声デカすぎ」



「あら、二人とも心配したのよ」



部屋に入ると養護教諭の神薬(らふぁ)先生が居ました、彼女曰く避難してくる迄に怪我した生徒の手当てを終えたばかりだとか。



「ご心配おかけしました」



いつも強気な風見さんだけど、ちゃんと礼節は守る。(わたくし)のお嫁さんに相応しい素敵な淑女なのですわ!



「じゃあ風見さん、怪我した所を見せてくれる?」



「先生、私より先にコイツの手当てをお願いします」



「えっ」



「アンタも怪我してるでしょ、それと私より頑張ったみたいだし」



「そんな....私なんかよりも風見さんの方が!」



言い辛い事ですが、私には能力と言う武器が有るけど風見さんには其れが無い。だから黒い狼共(アイツら)に挑むには私の数倍数百倍は勇気が必要なのに風見さんは子犬を助ける為に立ち向かったんですもの。



「良いから、先生お願いします」



「分かりました、金城さんにも素敵な友達が居るじゃない」



ふふふ、将来は素敵な友達から素敵なお嫁さんになるお方ですのよ先生。



「まあ私ですものわ当然ですわ。あ....あの、有り難うございます風見さん」



「気にすんじゃないわよ、それと緋美華たちには此の状況は説明済みだからアンタにも教え....」



「ワウッ!バウバウッ!」



子犬が急に吠え出したので吃驚しました。さっきまでは大人しかったのに、そう言えば犬は人より危機察知能力が高いらしいですわね。



「何よ急に?」



「せ、センセイッ!」



「え?」



先生の首が、背後から飛び掛かって来た黒い狼によって食い千切られてしまいましたわ!



「嘘....なんで此所に狼が!?バリケードで塞がれて入れないハズじゃ!?」



「まさか窓から....そんなバカな防弾ガラスですのよ、能力者ならともかく狼が割って入れる代物じゃ有りませんのに!」



風見さんが拾った子犬が狼に向かって吠え続けています、こうなる事を察知して吠えていましたのね。



「じゃあ何処から!」



「分かりませんわ....兎に角、私と一緒に遠くへ転移を」



「でも学校の皆はどうなんのよ!?」



うっ....此処で逃げたら、この狼は避難してきた人々を襲いますわね。やはり風見さんを御守りしながら戦う必要が有るみたいですわ!



「分かりました、退治しますわ。行きますわよ人喰い狼....あら?」



何故か神薬先生の頭を貪り食っていた黒狼がお座りをしたのです、子犬も吠えるのを辞めて風見さんの足にしがみつくし、どういう事ですの?!



「どうなってんのよ」



「まあ良いですわ、今のうちに殺してっ!?」



「金城!」



何処からか脚を銃で撃たれてしまいましたわ、だけど誰が何処から発砲して来ましたの!?



「困るな、我が可愛い眷属を殺されては」



殺意の込められた声でそう言いながら、何も無い場所から二匹の黒い狼を引き連れて鞭を持った黒い軍服姿の金髪女が現れました。その顔も喋り方も声も私は金色の眼帯も知っている!



「ヴォルフト!?」



「久しい名だな久しき友よ、だが今の私は百狼牙盟ティンダロスという名で呼ばれておるのだよ」



「え、友達?」



そう....嘗ては友と呼んだ人物、彼女が敵として立ち(はだ)かる時が来るなんて神様は酷く趣味の悪い方の様ですわね。



つづく



可愛い女の子を前にしたらあなたも狼に変わりますか?


女の子を前に女の子が狼になるなら美味いですね、三びきの子豚より美味い

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