表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赫蒼の殲滅者  作者: 怪奇怪獣魔爾鴉男
10/39

第10話 「血を吸う少女」

久々の投稿な気が致しますわね


A.


ごめんなさい椋椅、(わたくし)の我が儘の為にこんな目に遭わせてしまって....主人として不甲斐無い、病院のベッドに横たわる苦し気な寝顔に我が身を責めずには居られません。



「お嬢様....此処は?」



あれだけのダメージを受けていながら、もう目を醒ますだなんて流石は私がメイドに選んだ女ですわ!



「病院よ、暫く安静にしてなさいな」



「私は負けてしまったんですね、申し訳ありません」



「気にしないで....私だって負けてしまいましたし。それに謝るのは此方の方ですわ、あんな無茶を言ってしまったばかりに」



私達では、あんな強力な能力を持った二人に勝てる確率が低いのは分かっていました。それでも風見さんを守る為とは言え椋椅にも戦闘を強要してしまったのです、私は....!



「お嬢様....やはり戻られるのですか?」



「ええ、あなたの頑張りを無駄にする訳にはいきませんし」



「お気をつけて」



有り難う、あなたは自慢のメイドです。さあ、待って下さい風見さん....今すぐ戻りますわ!




第10話「血を吸う少女」



B.


「えーっ、この遊園地中から私たち見られてたの!? 何だか気味悪いよ」



確かに緋美華の言う通り、遊園地中から見られてるなんて気持ち悪いわね。普通なら直ぐに気付けるハズ....でも姿が見えなかったし気配も感じない、まさか幽霊!?



「大丈夫、倒せば良いから」



「気付かれた以上は倒すしかないよね。くすくすくすくす」



遊園地中から何者かの笑い声が聞こえてきたかと思うと夥しい数の....蛭と蛆が合体したみたいな蟲が集まり始めた!



「何よこれ、気持ち悪い!」



「うええええ!」



虫とか気持ち悪くて嫌いなのに....幽霊のが余っ程マシだったわ! でもまだ我慢できる範囲ね、芋虫とか百足とか蚰蜒(ゲジゲジ)だったら気絶してたけど。



「そうだアンタの焔で燃やしなさいよ」



あまりのキモい光景を見て私の後ろへ隠れた緋美華にそう提案....と言うより指示を出すと、彼女はう....うん、と頷いて焔を放った。



「うえええん気持ち悪いよおおおー!蒸し焼きならぬ虫焼きだよー!!」



「なーに寒いこと言ってんのよ焔属性の癖に」



「属性?」



こんな緩いやり取りしてる間に蟲達は焼け死んで灰になって....無い!? それどころか業火に身を焼かれ黒焦げになり(ながら)も一ヶ所に集合し合体、女性の姿に変身した!



「わわわわ!?」



「私達を見てたのはお前?」



「そうだよ、蟲に分身してこの遊園地中からね」



津神の問いに答えた彼女は、長く艶やかな黒髪に琥珀色の眼、華奢な体。気持ち悪かった蟲の姿とは裏腹に綺麗な容姿だけど....片眼が髪に隠れ口角が異様に上がっていて美しいよりも気味が悪いと言う印象が上回るわね。



「目的は何なのかな? えーっと、悪い人じゃないよね?」



「なんて直球な質問」



緋美華(こいつ)は昔からこんな娘よ、単純で分かりやすいのよ」



其にしても良く見るとこの蟲女....サラファンって言う露西亜(ロシア)の民族衣装を着てるわね、中々にレアな格好だわ。



「単純なんて酷いよー!」



「てかさっきコイツ私達を倒すしかない、とか言ってたわよ」



園内から聴こえてきた声とコイツの声は同じだし、訊くまでも無かったわね。善良な私達を倒そうなんて悪者じゃなきゃ考えないでしょうし!



「お腹が空いちゃったんだもん仕方ないじゃーん、私は人間の血が大好物なんだよねー!」



「ふぇあっ!?」



コイツ能力者ってよりはただの化け物じゃないの、緋美華が驚いて間抜けな声上げるのも無理も無いわ。


人間の血が好きなんて吸血鬼の類いね....何となく誰か鞭で戦って欲しい、でも今のところ武器が鞭の奴は居ないか。



「私が来園者達やジェットコースターを転移させていたのは危険(コイツ)から貴方達を遠ざける為ですわ!」



「ぐえええ」



蟲女が突然、ブラウンのブーツに蹴り飛ばされた! この甲高い声は金城....戻って来たのね、戻って来て欲しくなかったけど。



「アンタは気付いてたの?」



「私の目は誰にも誤魔化せませんわよ」



私や緋美華も気付けなかった微かな気配に気付くなんて、結構やるじゃない。ちょっとだけ見直したかも、嫌いなのは変わらないけどね!



「じゃあやっぱり殺すしかないか」



「殺すってアンタね、此処に居る奴等を舐めんじゃないわよ?」



「ひよりの言う通り、私と水無ちゃんの超最強なコンビと金城さん....このチームはきっと無敵なんだから」



緋美華と津神に加えて金城も参戦したし、得体の知れない相手とは言え三対一なら楽勝でしょ!




C.


三対一だから楽勝でしょ、みたいな表情をなさっている風見さんも可愛いくて素敵ですが現実は甘く有りません。



「いま目の前に居る女は、我が風見家の能力者で結成された精鋭ガードマン約二十人すら瞬殺するほどの強さです」



「えーっ!?」



私も監視カメラで彼女が侵入して来て、排除に向かった彼らを一瞬の内に鏖殺《みなごろ》しにするのを見た時は驚きました。


こうなればと転移させ我が身は守れましたが、遊園地に潜伏していたなんて。


しかも風見さん達もそこへ向かうと気付いて敵に意図を知られずに帰そうと春野さんと津神さんに闘いを挑んだのですが....この事は闘いが終わった後に話しましょう、約束は約束ですからね。



「舐めてたのは風見の方みたいだね」



「ま、まあそれでもアンタ達なら大丈夫でしょ!」



春野さんと津神さんの能力が強いと言っても本人達はまだまだ未熟ですし勝てるかどうかは分かりません。其こそ敵を舐めて掛かっていては余計に!



「いやあ嬉しい美人さんに誉められちゃうなんて。それに可愛い娘ちゃんばっかだし」



女はそう言って半開きの口から涎をダラダラと垂らし、袖の下から抹茶色の触手を素早く伸ばして来ました!


此の触手でガードマン達はあっという間に全滅してしまったのです。速さも()事乍ことながら先端がナイフの様に鋭く尖っていて殺傷力も高い厄介な武器ですわ!



「触手っ!?」



「気持ち悪い....」



ヌメヌメとした液体まみれの触手に胴体を締め付けられる津神さん、幼女に此れは....ちょっとマズイ絵面な気がしますわ。



「あぅぐ、液化!」



でも彼女は自らを液体化するという器用な技を使用して脱出したので一安心しました、幼い割には頭が回りますわね。



「風見さんは隠れていて下さいな」



「え、ちょっと!?」



賢明な私は非戦闘要員である風見さんを安全な場所へ瞬間移動させ、彼女の安全を第一に確保。風見さんの私に対する好感度が此で少しは上がれば嬉しいですわ!



「二人とも厄介な能力だね」



拘束に使用していた触手で次は思い切り叩き付けて来ましたが動きは余り速く有りません。なので私は優雅に瞬間移動して回避しますわ〜!



「水刃!」



津神さんは避けずに水のカッターを放って触手を切り刻みますが触手は瞬時に再生してしまいました。



「ちっ....」



厄介ですわね....けど津神さん、花も恥じらう乙女が舌打ちは如何な物かと思いますわ。



「面倒だなあ。早く女の子の血を吸いたいのに、そうだ!」



「あっ....風見さん!?」



「もう其処に居る不味そうな娘からでも良いや!」



女がアイスクリーム屋の下に触手を伸ばしました、其処には風見さんのお姿が....出来るだけ自分のお側に居らして欲しいと言う欲望が反映されたのか無意識に近くへと転移させてしまって居たなんて私の馬鹿!



「ちょっ....見つかるなんて聞いてないわよ!」



「はあっ!」



「水 刃」



春野さんの火焔弾で焼き切られても津神さんの水のカッターで切断されても再生しながら、気付いて逃げようとする風見さんの背中へ向かって行きます!



「触手は無視して本体を....」



「食事の邪魔しないでよ」



「きゃっ!」



津神さんが如何にも高級そうな....売れば何千前円はするであろう絢爛な錫杖で蟲女本人を叩き付けますが、なんと女の口から触手が伸びて来て弾かれてしまいました!



「口から....なんて気色の悪いやつ」



こうなれば私が瞬間移動で風見さんを助けに....そう思った瞬間、女のもう片腕から放たれた触手に脚を取られ不覚にも動きを封じられてしまいましたわ!



「くっ....風見さん!」



ダメっ....風見さんの肩スレスレに触手が迫って居ます、此れでは間に合いませんわ!!



「ごめん、ひより!」



「きゃっ!」



「うあああああああ!」



風見さんを咄嗟に突き飛ばした春野さん。彼女の肩に触手が貫通してしまいました....やっぱり気に入りませんわ、身を挺して風見さんを守るなんて。


好きでも無ければそんな事をする筈が有りませんもの、恋敵で有る事は決定的ですわね....とは言えお陰で風見さんが傷付かずに済んだのも事実、ちと癪ですが特別に褒めて差し上げても良くってよ。



「このっ!」



津神さんが触手を水で切り裂き、春野さんは解放されましたが血を吸われてしまったかの様に顔面蒼白ですわ。



「ちょっとしか吸えなかったじゃん」



「大丈夫?」



「平気だよ....わわっ、貧血?」



春野さんはふらっと風見さんの胸に倒れこんでしまいました、本当に血を吸われてしまったのですね、それも短時間で結構な量を。普通の人間なら木乃伊になって居たかもしれませんわ!



「ごめん、私を庇ったせいでアンタが」



「気にしないで、これくらい平気だから!」



「でもっ」



風見さん、悲しそうな表情も儚げで美しいですが赦せませんわ。彼女を泣かせて良いのは私だけ....それを!



「あははは、仲良しだねえ....つい見入っちゃった。けど、そろそろ食べさせて貰うよ!」



「お前は殺す」



「あなた殺しますわ!」



「がっ....今の二人の蹴り、見切れなかった!」



津神さんと攻撃も台詞も少し被りましたわ、まさか彼女も風見さんの事を想ってますの....!?



「風見はともかく緋美華の血を吸うなんて」



「私はともかくって何よ!」



あら恋敵では無いみたいで少し安心しましたわ....でも風見さんではなく春野さんに好意を抱いているなんて都合が良いですわ。


春野さんには津神さんと結ばれて頂いて傷心した風見さんを優し車抱き締めて其の後に蜜月の時を....きゃーっ!



「いえ....耽美なる想像に耽るのは先ずコイツを倒してからにしてからですわね」



「同意」



津神さんが錫杖で女を突くと女は蹌踉めきました、そこへ透かさず(わたくし)は我が金の斧を頭部に叩き込んでやりましたわ!



「いってぇ!! はは、少し侮ってたかも」



「コイツ不死身ですの!?」



頭を割られて立っているだなんて....能力者は確かに身体能力が向上しますが流石に此れを受けて平気で居られる筈が無いのに!



「や、やばい空腹と相俟ってヤバい。こうなりゃ能力を使っちゃお」



「能力って触手が能力じゃなかったの!?」



女の姿が一瞬にして消えてしまいましたわ、これが彼女の能力....!



「金城と同じ様に瞬間移動でもしたの?!」



「いえ、違いますわ....」



気配がまだ付近に有ります、私の様に瞬間移動したのなら気配を遠くに感じる筈ですわ。



「不可視侵域《インビジブル・テリトリー》...

.透明化能力、大天使級(アルヒアンゲロイ)



透明化は暗殺や潜入工作には便利ですが、真っ向から挑んで来て途中で透明化されたところで幾らでも対策出来ますわ!



「この能力で隠れて私達を見てたって訳ね」



「戦闘向けの能力じゃないって言っても、何処から攻撃が来るか分かんないのって怖いよ!?」



「大丈夫だよ、気配を感じとれば何処に居るか直ぐに分かる。微かだけど集中すれば」



「無能力者相手ならともかく、能力者相手にはハズレの能力ですわ!」



「それはどうかな」



再び透明になる女、何度やろうと....って今度は気配を全く感じ取れませんわ!! 其れよりも先ずは!



「きゃっ!?」



再び風見さんの転移を完了、今度は近くでは無く出来るだけ遠くにと意識したので大丈夫。此れで風見さんは完全に安全ですわよ!



「痛っ....いま何処から攻撃して来たの!?」



「散れ!」



津神さんが気味の悪い本を取り出して、そう呟くと不可視の触手で攻撃され春野さんの肩に出来た傷口から流れる血が周囲に飛散しました。そう言えば津神さんは水を操れましたわね、初歩的だけど良い手ですわ!



「あっ、血が浮いている!」



「此れで居場所が分かりますわね」



「同じ様な方法を考えた者は結構いたよ、血は拭いてもなかなか落ちないからね。普通の能力者が相手なら良い作戦だった」



「なっ」



さっきまで浮いていた血が一瞬にして消えてしまい、また敵の位置が不明になってしまいましたわ!



「自分に付着した血を啜ったか」



「これでは結局、何処に居るか分かりませんわよ....っ!」



痛いっ、太腿を刺されてしまいました。咄嗟に転移したので事なきを得ましたけど危うく血を吸われるところでしたわ!



「焔張塗! 二人とも私の近くまで来て!」



春野さんが自分の体に焔を纏いました、夏には使いたくない見るだけで暑苦しい技ですわね。



「そっか、あいつは蟲の集合体。火には近付きにくいはず」



蟲が合体した姿なんて驚愕ですわ、或いは蟲に分裂する能力を持っているか。どちらにしろ焔が弱点の可能性は高いですわね、そして此方には焔を使う春野さんが居る、有利ですわ!



「さっきの金髪ちゃんとの戦い見てたから赤髪ちゃんが焔使うのは知ってるよ。私の方が不利って事もね!」



「じゃあ何で逃げないの?」



「いやもう逃げるよ、実は役目はもう果たしたしさ」



「逃がさない....っ、魔力が。そうだ」



津神さんはウォータースライダーの水を飲み始めました、喉でも渇いたのでしょうか?



「ご馳走様....これでいける。どりる、この遊園地壊すけど弁償しなくても良い?」



「ど、どりる?これは縦ロールといふ立派な髪型ですのよ!まあ良いですわ、悪を討つ為ならば」



「それに我が金城家の財力なら直ぐに再建でき...」



「命の源よ、母なる力よ、あなたの子のに深蒼の力を。深淵螺旋海砲....!」



津神さんがそう呟くと本から横幅三十メートルは有る超極太の高圧水流が発射され、前方全ての物が一瞬で水圧により破壊されてしまいました!



「津神 水無、恐るべき力ですわ」



「えっへん!」



「ちょっと何で貴方が誇らしげですの」



しかし蟲女が前方では無く後方に居る可能性も....どんなに威力が高い攻撃も当たらなければ無意味ですわ!



「私の魔力は水分を補給する事で回復するの、だから変な娘だって思わないでね」



「思わないよ、水無ちゃんはあんまり無意味な事しないもんね」



「うん、ありがとう」



出会って一週間も経って居ないのに此の姉妹のごとき仲睦まじさ....風見さんに勝機は有りませんわね、好きな人の敗北確定は複雑ですが少し安心したのも事実ですわ。



「あれ? ひよりから着信が!」



「変なとこに飛ばされて、其で救助の電話かもね」



「可能性は否定できませんわ」



出来るだけ安全な場所へと思って転移させましたが、心に乱れが生じた時は指定の場所へ転移出来ない場合があるので不安だわ。



「もしもし、ひよりー! 大丈夫? え、大丈夫じゃないの」



大丈夫じゃないですって....もしかしたら本当に危ない所に転移させてしまったのでしょうか、戦場とか無人島とか。



「か、風見さんは何と仰有ってましたの?」



「街が大変な事になってるから早く帰って来なさいって!」



「謀られた、あいつは私達を引き付ける為の囮。狙いは街に有った」



間抜けにもまんまと敵の術中に嵌められた訳ですわね私たち、不覚ですわ!!



「くっ....風見さん、何が起こったのかは分かりませんが今すぐ向かいますわ!」



「一人じゃ危ないよ金城さん!!」



風見さんの安否が心配で仕方ない私は春野さんと津神さんを置いて一人で亜神町へと転移、愛する彼女の元へと向かうのでした。



つづく

赤髪ロング主人公の某ラノベアニメのサントラが届いた、これで勝つる!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ