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81杯目 僕と決闘


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」


「・・・・」



誰も声を発しない。


僕は乗り出し睨みつけるように意志をこめてヴォルフを見る。

見続ける。



金の瞳がゆらゆらと揺れる。

しかし目が逸れることはない。



僕らの動きは静止していて、声も発してはいない。

しかし僕の心は震え、高々と声をあげる。音を出す。




延々と、滾々(こんこん)と言葉が生まれ放たれる。


いや、言葉ではないか。

言葉にできないこの言葉は。


そう、意志だ。



言葉では伝わらない。

言葉ではない。

ただこの両の瞳をもって伝えるは僕の意志。



意志だ!!





「・・・・ぁ・・・しょう、ねん。シュンヤよ?」



掠れたような声を出す大男。

その姿に僕は既視感。


これはいつも見ている姿だ。




「改めて。改めて訊ねたい・・・」




からからに乾いた喉だろう。

脳みそは冷たく、息がし辛く、緊張で吐きそうになる。



そんな状態なんだろう?



よく知っている。

一度も直接見たことはないけれど一番よく見ている状況だ。





なぁ、ヴォルフ(弱者の僕)よ?







「シュンヤは、なぜそんなにも彼女を信じられる?騙していた、操っていた彼女を信じられるのだ?」






どこか縋るような。闇の中で光を求める旅人のようなヴォルフに。


ヴォルフ(弱者)(強者)は答える。









「理由なんてないさ。・・・・惚れた弱みってやつだよ。」







弾かれたように動いたのはヴォルフ、ではなく。



「はぁあ!?なんだそれは!!!」

矢撃だった。










「可笑しい、それは可笑しい!!なぜだ?自分を操って死ぬような状況に叩きこんだ奴をなぜ理由もなく信じられる!?」


「・・・急に元気だな。」

僕は少しばかり引いたような言い方をする。



「答えろ!!!」

そう言った矢撃には余裕がなくまるで地面がなくなってしまったかのような。もしくは酸素が残り数分で尽きると言われたような。そんな必死さを感じる。




「いいか矢撃。僕が彼女に操られていた。それはそうだ。」



フゥゥ、フゥゥ、とこちらを荒い息のまま睨みつける矢撃に声をかける。



「しかし今は操られていないんだよ、矢撃」



「・・・あぁ?」


だからなんだ?といった意思を隠しもしない矢撃。





「操られていなくとも僕はこんなにも彼女を助けたい、それが答えだ。」




「答えになってない・・・」

なぜか泣きそうな矢撃に僕は言葉を重ねる。




「矢撃?僕はね人を愛するという気持ちがわからない。そりゃ好き嫌いはあるさ。食べ物と同じようにね。でも食べ物と同じでなければ他の物を食べよう、あったほうが嬉しかった程度なのさ。」



一度見渡すが誰も何も言わない。

仕方がないので僕は何の意味もない自分語りを続ける。




「そんな僕が初めてこれがないなら餓死しよう。そう思えるモノにあったのさ。」



「それがエーデルガルドだと?」

ヴォルフの問いに僕はただ頷いて答える。




「それは・・・それは操られていたからだろう?その時間が長すぎてそう心が錯覚している、それだけだろう?」

矢撃がボソボソという。




「さて、それはわからないが僕がそう感じるんだ。(・・・・・・・・・)矢撃?君の話じゃない(・・・・・・・)









パン、パン、パン、と音がする。

手袋に包まれた大きな掌が打ち合わされている。


そこまで見てようやくこれが拍手だと気が付いた。






「見事だ。シュンヤ。」



感じ入ったようなヴォルフの声。

晴れやかな顔をしていて先ほどまでの弱者の気配は感じない。




「・・・急にどうしたんだ。」


矢撃と言い突飛な行動が多い。




「いや、何。ここに至って最初の、本当に最初の目的を思い出したんだよ。」


「目的?」



「私はエーデルガルドの仲間を作ってやりたかった。封印、解放を繰り返され記憶やルーツもわからず、どうしようもなく不安定な彼女の。」



「あんたじゃダメだったのか?」

僕は聞く。ヴォルフは少しだけ痛みをこらえるような表情で答える。



「私は私の意志で彼女についている。だが、彼女によって操れる立場、眷属であった。」



「・・・彼女にとっての本当の仲間ではないと。」



「ああ。思い通りにいうことを聞く、そんな人間は仲間と呼べるのかね?・・・だから私は探していた。」



「仲間を、か。」




「眷属でなく、彼女の仲間をするものはいた。しかし(ことごと)く彼女の能力目当てや彼女の力におびえて、だった。最後には皆彼女の力の暴走の前に逃げていったよ。」



「・・・目に浮かぶようだね。」




「ふっ。目に浮かんでたまるか。あのような苦労、気持ちは当事者以外にわかろう筈がない。」




「・・・・・・」

藪蛇だったらしい。




「・・・だから私は諦めていた。それはそうだ。彼女の力は増していくばかり。一時的に仲良くなろうとも彼女の能力やまして操られなどしたら離れていく。」



「・・・・」

黙って聞く。




「だから私は意志を。強い意志をもって彼女に寄り添うものを探した。そのために組織から彼女を攫いだし、解放した。」



「あんたが逃がした本人か。」

これで助ける役をしていたらマッチポンプというが…。自ら悪役をやるのはどういうんだ?




「そして見つけた。強靭な意思をもって。損得でない、仲間になりえるものを。」




僕は背筋を正し、ヴォルフに再度視線を向けなおす。




「少年。今まで話した話に意思に、嘘偽りはないか?」




その問いに僕は訊ねる。

「聞かなきゃわからないか?」





にやり、といつものように口がゆがむ。



「結構。大いに結構!!!少年、いやシュンヤよ!!!」




(とどろ)く声。








「裁定者第八席・ヴォルフはシュンヤ・マシロに全存在をかけ!決闘を申し込む!!!!」









「はぁっ!?そんなの俊也が不利すぎ・・・」









「受けて立つ!!かかってこい!!」









矢撃の声を遮って僕が叫ぶ。




僕の意志を、見せてやろうじゃないか。

亀更新続いております。

読んでいただき感謝いたします。


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