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7杯目 彼女と法則

僕は床から立ち上がり、ソファーに腰掛ける。


彼女はマグカップを傾けて一口飲む。

ゴトリとテーブルに置き彼女はこちらを見る。


どうぞ、ってことかな。


「説明してほしいことはいっぱいあるんだけれど。まずは、この部屋かな。」


コンコンとテーブルを叩く。


「吹っ飛んだけど?これ。なんで直ったの?」


「それも私たちにとってはそういうもの、なんだけれど。できる限り説明するわね。」


「私は化け物。それはいい?」


・・・よくないんだけど。


「話が進まないから、いいということにする。」


こっちの訴えるような視線は無視された。


「ならなぜ化け物がいるのか。あるいはいるのに見つからないのか。」


「この二つは一つの法則が原因で起きている。」


「それは・・・」


彼女の説明によると世界はバランスをとる、だそうだ。作用反作用の法則、慣性の法則、エントロピー増大の法則、などが代表例ならしいがとにかく世の中は偏りにくい、らしい。


物を押せば自分も押される。

進もうとすると留ろうとする。

熱いものは冷める。

冷たいものは温まる。

世の中はバランスをとる。


それは彼女らにとっても同じそうだ。


化け物なんていない、だからいる。

そんな力はあり得ない、だからある。


いないという人間がいる限り化け物はいる、らしい。


その法則の力は物体にも影響を及ぼすらしい。

あり得ない力がある、という事実。だからこそない。

壊されたものは、壊されていない。


「それはおかしい。なら世の中の物理法則はどうなる?壊したものは壊れる。その理屈でいえばだからこそ壊れない、だろ?」


「そのとおり。もう一つ重要なファクターがある。」


世の中はバランスを取ろうとする(・・・・・・)がバランスを保てるわけではない(・・・・・・・・・)


先ほどの例でいえば

押せば押される、だが押せる。

進もうとすれば留まる力が働く、だが進める。

熱いものは冷める、だが熱せる。

世の中はバランスが取れてはいない。


「絶対量。」


要は多い方が勝つ。これもまた世界の法則、とのことだ。


「なんとなくわかってきた。」

「僕らは科学を信じてる、だから非科学がいる。」

「非科学ははなくならない、けれど勝つのは科学。」

「なぜならば信じている人が多いから。」


彼女はこくりとうなずく。


「最初はすべて同じ量だった。信じた分だけ生じるのが私たちの基本。けれどそこには一つ問題があってね。」


「あなたの例でいえば科学的を信じている人間、だからこそ起きた非科学。それはなにか。」


こちらを見る目は平静だった。


「悪魔の仕業?鬼の仕業?妖怪?偶然?神の力?奇跡?あるいは気が付かれない?」


それって・・・


「そう。散ってしまうのよ。科学的、というのは体形だっているからね。どこにだってあってそれは一つ。でもそこから発生するだからこそ、は土地、状況、内容主義主張によって分かれてしまう。」


さらに言えば非科学、だからこその科学的という力はすべて科学力に戻る。


「だから今では科学が強すぎて一人や二人の妄想じゃだからこそ、はほとんど観測できなくなった。」


「科学の勝利・・・」


平静な目は達観した目だった。もっと言えばこれは、そう。


「私たちは敗北者なの。」


敗北を受け入れた、敗者の目だった。




「話が脱線した。元に戻すとなぜ直ったかだったわね。それは化け物が戦って部屋がめちゃくちゃになる、より壊れたということはなかった、という方が世界では強かった。だから直った。」


うん。なんだ。


「やっぱり納得がいかない。」


「ならば最初に言ったとおりね。そういうものよ。」


・・・理屈なしか。


「あぁ、ちなみにすべてが戻るわけではないわ。今回の例でいえば食べられたりなくなってもおかしくないカルボナーラやコーヒーだとかはなくなったままね。」


「あ、ティーポットもない!!」


「残念ね。」


「え?なんでだよ!基準は!?なにが戻らないのさ!」


「正直誰もわからないと思う。何度でもいうわ・・・・」

「そういうものってことね!聞き飽きたよ!!気に入ってたのに・・・」



コトン、と軽くなったマグカップの音。



「空になったわ。」


「・・・え?淹れるの僕なの!?」


「そうじゃないと効きが悪いの。」


「インスタントだよこれ!?」


大した手間じゃないけども・・・釈然としない!


飲み物を淹れるのは結構好きだからいいけども。



粉、お湯。出来上がり。



「はい。いいけど次は自分でやってよ?」


「いえ、申し訳ないのだけれどせめてあと数杯はお願いしたい。」



頭を下げるエーデルガルト。いや、エディ。


「え、そこまで?」


意味が分からない。ドリップコーヒーならまだわかるが・・・


「何なら貸し1を使ってもかまわないから」


「わかった、わかったよ。そんなことで使われたくない!!」


卑怯な言い方だ。僕がケチな奴みたいじゃないか。・・・いや彼女の顔を見るにわざとではないらしい。


「はぁー・・・君はよくわからないな。」


そういえば。


「ところで君はなんなんだい?えっと、性格とかでなくて種族?的に」


まさか生涯でで種族を聞くことがあろうとは。


「あぁ、あなたの考えで合ってたのよ。吸血鬼。」


「吸血鬼ぃ?」


「亜種だけどね。」


「血は?」


「飲まないわよ悪趣味な。亜種だからほかのもので生きてるの。」


コーヒーを飲みながら上目でこちらを見る。


「あぁ」


口づけ、で起きる。なるほどね。精気とかそういう。


「だから僕に手紙まで書いてやらせたわけね。」


「そう。流石に偶然に頼るにはあまりにもありえないから」


「そうかなぁ。案外昔からある話だと思うけど。」


それこそ眠れる森の美女とか。・・・僕は王子様ってタイプじゃないけど。


「そう?きいたことないわ。」



彼女はそう言ってコーヒーを飲む。


はいはい、お代わりね。

お読みいただきありがとうございました。

今日はあまり更新できませんでした。明日はもう少し頑張ります。


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