表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/86

78杯目 僕とルインの現状と


「・・・で?続きは?」


僕は一心にヴォルフを見る。

確かに知らない情報だ。

ただいまの状況とはあまり関係がなかった。

それはいい。すべて話せと言っているのは僕だ。


だから、早く話せ話せ話せ話せ!話し続けろ。




「わかった。わかった。」


僕の視線に押されてか。

言いにくそうにしながらも話を続ける。



「ルインの完成、と言い切れる理由も話しておこう。実はルインは今まで分割されていることがほとんどだった。」


「分割?」


「ああ。貴様たちも見ただろう。ルインというのは浸透した体がある程度まで損傷しても回復する。いや正確に言えば生命を消費して戻すことができる。」



ヴォルフが矢撃を見る。


矢撃は苦々しい顔をする。



「・・・あの腕が戻ったのはそういうことなんだな。つまり何の意味もない、無駄だったと?」




苦々しいその顔にどろりとした気配が混じる。

炎よりも熱く。黒曜石よりも暗く。

溶岩のようにどろりとした。


憎悪。




「・・・勘違いしているようだから伝えておくが。ルインの四肢を落とすほどのダメージを与えた者はおそらく初めてだ。(やいば)はもちろん、馬車での突貫や、バリスタの直撃ですら無傷だったそうだ。そして命を消費して再生するとは言ったが、一つの命で再生できたりするものではない。小さな擦り傷でも数百から数千という命を消費しているらしい。」



つまりは数千の命を、ルインの力を削った。そう言いたいのだろう。




「数千、ね」


「いや、数万には達しているはずだ。」



そう諭すように言うヴォルフ。



「はっ。で?あいつの命は何万だっけ?下手な慰め、いらねぇよ。」




・・・・僕の推察が正しければ矢撃は先ほどの一撃で肉親の魂(・・・・)を犠牲にしている。

僕には推察すらできない。

推察すらできないが。


穏やかな感情ではないだろう。



矢撃は一言、続けな。とだけ言うとフードを深くかぶり眼元を隠す。


話したくない、のだろう。




僕は視線をヴォルフに戻す。



「まぁ、そういうわけでな、奴は傷は再生するからと大抵体の一部・・・腕を分離させていたようだ。・・・あぁ、分離といってもルインを封印状態の時に切断していたそうだから少女の肉体を切断する程度の労力しかかからなかったそうだ。」



なるほど

先ほど腕を切断するほどのダメージ、という回りくどい言い方をしたのはそのせいか。




「彼女、ルインは今体のすべてがそろっている。しかもその魂、とでもいうべきものもすべてが一つの体に取り込まれている。現在のルインには枷がない。すべてがそろっている。」




「でも、世界は滅んでない。」

僕はヴォルフに問う。




「ヴォルフは言ってたよなルインの完成は世界の終わりだと。今終わってない。では完成していない、そういうことだよな?」



「うむ。まぁ、それはそうだな。だがそれは時間の問題だ。ルインの力が体になじむまでに時間がかかっている、それだけだな。」



「まだルインにはならない、そういうことでいいんだな?」



「それは違う。なじむまでに時間がかかっている、だけだ。いずれなる、そこに間違いはない。」



「今までに完全なルインになったものを見たことがないのに?絶対か?」



「言いたいことはわかった。確かにシュンヤの言うとおりだ。確実ではないかもしれん。だが、体に別の精神が入ったとき主導権は綱引きになる。これは何例も実績がある事実に他ならない。実際エーデルガルドもルインと綱引きはしていただろう?異常な攻撃性など時には影響を受けているのも見ただろう?そして今までエーデルガルドに含まれていたルインはごく微量だった。今回は数百倍はくだらない。」



相変わらず疲れたような言い方でヴォルフは語る。



「いいかね?確かに絶対ではない、絶対ではないが。今まででも時に負けていたのに相手が数百倍以上になった。これで勝てると思うのかね?そう思うのならば君はもう帰った方がいい。それは信じるとは言わない。現実が見えていないだけだ。」




「・・・・」




「どうしたんだシュンヤ。納得したかね。」




「・・・なあヴォルフ。」





僕はここまで話を聞いていてずっと不思議に感じていることを聞くことにした。






「・・・・」




「なぁヴォルフ?」



「・・・なんだ。」



「あんたはなんだ。どうしてそんなに諦めて(・・・)いるんだ?」


「諦めているわけではない。ただ事実を言っているに過ぎない」



ただ事実を言っている。それはいいさ。




「事実だから終わる?事実だからあきらめろという?」

ヴォルフに。

僕は話しかける。いや、叩きつける。



「そんな当たり前の人間?俺がこの数か月見てきたヴォルフって男はそういう人間には見えなかったな。ヴォルフ?あんたは何でこんなところまで来たんだ?」



「・・・今は関係ないだろう?」



「いいや、ヴォルフ。すべてを話せ、と言ったじゃないか。」





ふぅ・・・。


一瞬何の音かわからなかったが。

顔を見てヴォルフのため息だったと知る。





「・・・長い話になるぞ。何せ80年分だ。」




「今はずべてを知ること、それが一番だ。」







本題とは違うけれど。

僕の予想・・・いや、勘ではこの話は絶対に聞かねばならない、そう感じた。



偶には年長者の話も聞こうじゃないか。





読んでいただきありがとうございます。

亀更新ですが、努力いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ