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71杯目 僕と神降ろしと大男と。

遅くなりました。

切り飛ばされた手首が宙を舞う。

余りに細い手首。それだけ見ていたらあんな怪力が秘められているとはとても思えない手首。



その細い手首を切断する。そのために矢撃のはらった代償は大きいのか。妥当なのか。

僕程度じゃ想像することもできない。


その手首が重力に捕らえられ、緩やかに降下を始めたそのときポウ、とでも言おうか。

激しい光ではなく、柔らかい光が僕の後ろから指す。



「その意気や、よし。よかろう、汝の働きに免じてほんの少し力を見せてやろう」



歩いてきて僕の横を抜ける聞き慣れない口調。




「本来は神降し、と言っても力の一部を貸し与えるだけなんだがの。」



カラ、コロン、カラ、コロン。

下駄と石畳が奏でる音。




「神降ろしとは何たるか、見せて進ぜようではないか。」




「ぐいぃいい・・・・が、・・・あぁ・・・ぐ・・」

口の端からよだれを垂らしブクブクとあぶくを立てながら右腕の手首を左手で抑えるショニエッター。




それに向かって正面から向かっていくは紅白の衣装に身を包み、全身を淡く光らせる祓。


いや、祓のような何か(・・・・・・・)




「ショニエッターといったかの?土地神が一、アマノミコトの力とくと見よ。」



おろしていた腕をゆるりと横に開く。



発光。



ドォっと、としか言いようのない洪水のような勢いで一気に光が駆け抜ける。

しかし時間は短く一瞬か二瞬か。



くらんだ眼が慣れたころには祓は祓ではない、しかし祓の姿をした何かに完全に変わっていた。



そこでようやく落ちてくる切り飛ばされ発光の威力で再度舞いあがったショニエッターの手首。




開いていた右腕を振るい、空中でその腕をとらえる。





「これが、神だ。」




じゅぉ!!という音と共に握った右手の中でショニエッターの手首が青白い炎を上げながら一瞬で消滅。




同時に矢撃も着地の衝撃から解放されたのか、ショニエッターの横から飛びず去るように退避。

同時に英霊たちも塵に戻る。




「さて、神秘の薄いこの時代。この体の負担を考えれば長時間は好ましくないのでな。」


そう言って右手から再度発光。

発光が収まるとそこには木扇。



()ね。」



波打つように複雑な軌道を描きながら扇を振り上げる。

ショニエッターが腕を抑えたままこちらを見上げる。




扇一閃。





瞬間、生じた音を形容する言葉を僕は持たない。

白光が天より落ちて、ショニエッターを直撃。

(まご)うことなき神の御業。


神鳴り、雷。





先ほどの矢撃の総攻撃の際に自然災害に例えたが、撤回しよう。

真の自然災害とは。

真の落雷とは。



こんなにも恐ろしい!!!







露出した肌が焼けるような痛み。

空気混ざる独特なにおい。

パチパチと音を立て立ち燃える木。

耳鳴りがひどく、衝撃に立ち上がることもできない。

視界も閃光に焼かれやけに暗く、何もわからない。




数瞬立って、周囲を見て僕は愕然とする。

地面が吹き飛び、ただでさえ少し低い位置になっていたショニエッターは今や完全に姿が見えない。

吹き飛んだ石や土が周囲の木々などに付着していたり、あるは抉ったりしている。




そして僕の周囲には薄っすらと結界が張ってあり、そのおかげで僕の被害がこんなもので済んでいた理由を知る。

そう、結界があったから、こんな至近距離で落雷が起きたのに僕が感電や大やけどを負わず、失明など市しないで済んだのだ。

そう、こんな数メートルの距離では人間なんて死にかねない。



では、直撃を受けた、彼女(ショニエッター)は?







「あんときと同じ状況だなぁ!!」






そんな叫び声と共に大きな風呂敷がショニエッターがいるであろう穴へと投げ込まれる。

飛んできた方向には。矢撃。




以前矢撃は言っていた。

ヴォルフを倒そうとしていた際。

爆発を起こしたら死んでいるかわからないじゃないか、の問いに対して関係ない、と。

小説や漫画ではないのだから、完全に滅ぼし切れる、過剰な攻撃でちょうどいい、と。

そうして落とし穴の中のヴォルフへと用意できる限りの攻撃を仕掛けた。





ならばあの中身は。





「我が血を捧げる!!!」

矢撃の血液(爆発物)




ズドォオオと先ほどの落雷よりは小さいものの十分な爆音、発光。


その一瞬前(・・・)に跳びあがる影。



空中で爆風を受けさらに舞いあがり、空中でで態勢をわずかに崩す。

地面にドシャと音を立てながら着地。膝をつき失った腕を抑えている。



姿は大きく変わっており、結んでいた髪は弾け燃え、ボロボロに。

ドレスも左肩のひもがちぎれ全身が泥まみれだった。



顔はうつむいていて表情は見えない。





躱された!!でも、だが!効いている!!弱ってる!!

そりゃそうだ人間なら跡形もないであろう

むしろまだ動ける、そのことこそが彼女が化け物であることをしめしている。






しかし彼女はまだ動く。

彼女が押さえていた手首から手を放し左手を地面にかざす。


するといつか見たように地面が水面のように揺らめき巨大な握りが水面に浮かぶ氷のように浮かんでくる。


巨大斧(グランギニョル)!!?



僕が気が付いた瞬間には素早く握ったその斧を地面から抜斧。



振りかぶった彼女が正面にいる祓・・・いやアマノミコトに切りかかる!!





その途中でガクン、と動きを止める。



僕が付いていかない視界でようやく状況をとらえる。

踏み出した時の爆砕音とほぼ同時だったためわからなかったが、彼女の巨大斧(グランギニョル)が地面にめり込んでいる。


振りかぶった勢いそのままに背後から地面に撃ち落とした、いや叩き落した(スマッシュ・アップ)したのだろう。







「やぁレディ。叩き潰すもの、ヴォルフだ!!」




動きの停まった少女に

大男(ヴォルフ)の拳が突き刺さった。




お読みいただきありがとうございます。

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