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63杯目 僕と修練の成果と。

そうして一週間。

僕は右ストレートの修練だけを積んで過ごした。


いや、もちろん比喩で合って別に飯も食わずに、というわけでもない。

宣言した通りに(はらえ)矢撃(やげき)、ヴォルフ組とエーデルガルドとの橋渡し的な役目も続けている。


エーデルガルドはいまだにあのとりみだした僕の姿が印象に強いらしく、ひどく気遣われている。

僕としてはもう普通に話してくれていいんだがなぁ。


まぁ、そんな反応をされているのでまだ彼女に僕がやって(修練して)いることは言っていない。

ただタイミングを失っているだけ、ともいえる。



まぁ、そんな風にやることはやっているがそれ以外は日がな一日ひたすらに突いている。


今は木に布団を巻き付けそれをひたすらに突いている。

最初はポフ、という音やボフン、という如何にも弱そうな音しか出なかったが、ヴォルフの指摘によりだんだんと音は鋭さを増してきた。



「いいか、少年!!物を殴るときはその表面を殴るんじゃない。その奥を殴れ。」


「その奥。」


「そうだ。拳を触れた時点で力を緩めてしまえばそのエネルギーは伝わらん。すべて伝えきるためにはその奥を打つのだ。腕なら骨を。頭なら脳を。胴なら心臓を、だ!」


「ならば、これでは・・・・木を!!打つ!!!」



ズ、ドン!!という響く音。



僕の体をかけ抜ける衝撃。

僅かに、だが確かに揺れる木。


会心の一撃。




パンパンという拍手の音。

振り返るとそこではヴォルフがその白い手袋に包まれた大きな手を打ち付けていた。



「うむ。よろしい。」


そう言って満足げに笑うヴォルフ


「しかし、最後の練習をしなければならないな?」


「ん?まだあるんだ?」


「おお。その通り。君の目標は?一矢報いる。攻撃することだろう?」


「ああ。」


「ならば、相手が、いるな?」



バサリ、とコートを脱ぎジレ姿になるヴォルフ。

近くの木の枝にコートをかける。

神社、に洋装の大きな体格の外国人。


ミスマッチだな、そんな風に感じる。




あぁ、うん。



脳が逃避を始めたんだな。



いやだって・・・これ・・・。



「え、いや。まさか。」



「ほぉ。以前よりは察しがよくなったんじゃないか?そういうことだ。・・・・フン!」



気合の声とともにギジィ!と音が聞こえそうなほど隆起する筋肉。

多少余裕があるシャツだったためボタンが飛んだ、といったことはなかったものの。

二の腕の当たりなどは限界まで引き伸ばされている。


「さぁ!かかって来い!!来ないならこちらから行くぞ!?」



正直体が動いたことを僕は褒めたい。

自画自賛、だ。



「う、うぉおおおおおお!!!」


渾身の右ストレート。


胸板に直撃!!


身体を駆け抜ける衝撃!!


結果は!





「効かぬわ!!」



直撃、しかし全く減速しないまままっすぐこちらに突っ込んで


まっすぐに拳を突き出して・・



身体を駆け抜ける先ほどとは比べ物にならない衝撃。

恐ろしいまでの加速。



僕が覚えているのはここまで。





吹き飛んで先ほど殴っていた気を背中で叩き折ったそうだ。



よく、生きてたな、というのが後日その折れた木を見た矢撃の感想だ。




















さて、僕はあの後よくわからないが何の後遺症もなく立ち上がることができた。

実に意外なことだが、ヴォルフは手加減していたのかもしれない。

さもなくば僕は少なくとも背骨を折ったり、と大けがをして二度と歩けなくなっていたかもしれない。



そんなことを見慣れない布団と畳の部屋で立ち上がって考えていると遠くからヴォルフたちの声が聞こえる。




「いくらなんでも法外過ぎないかね?」7


「いや、あんたあの傷どういうレベルだと思ってんだ?普通なら死んでるレベルの攻撃で、アイツは普通の人間なんだぜ?」


「むぅ。手加減したんだが・・・」


「まぁ、頭が爆散してないからな。だが、顔面つぶれて、背骨の骨折だぞ?うちの最高の札と秘術をどんだけ使ったと思ってやがる。別にこの際儲けはいいから使った分の補てんだけでも出せ。」


「そうですよ。私たちの土地の中で土地神様の力をお借りできたので何とか生かすことができたのです。私共に金子(きんす)は不要ですがしっかりと本心から神に祈りなさい」


「私は無神論者だよ。とにかくその金額を払うことは無理だ。」


「無理だ、じゃなくてでな・・っと。ここだ。」





ガラッとふすまが開く。



うん。




「僕そんなにやばい状況だったのかよ!!?」



「ん?あぁ。そんなことないぞ擦り傷だけだ。」


「ん?おぉ、そうだぜ俊也かすり傷かすり傷」


「ん?そうね。かすり傷だったわ。」



「その不自然なアイコンタクトが何よりの証拠だよ!!!」




ヴォルフめ!本気でいってんのかよ!?

僕の目とかちゃんとした位置にあるんだろうな!??




「ふはは!冗談だよ少年。ほれ鏡だ怪我一つないだろう?」



そこに映るのは代り映えしない僕の顔。

不細工にもイケメンにもなっていない。



「頭を打っただけだ。検査はしたが異常はなかったよ。」



「ほんとだな?本当に何もなかったんだな?」


な?と念押しするように祓を見る。




「エエナニモナイワ」



「なんで片言なんだよ!?」












「さて、シュンヤ。お遊びはここら辺にして。そろそろやるぞ」




その言葉でだれていた空気が引き締まる。


気が付けば祓や矢撃も真剣な表情になっている。



「全員の体調はある程度整った。計画の準備もできた。」



「時間稼ぎももはや限界だ。やるぞ。」



「処刑人、ショニエッターを倒す。」







「死神狩りだ。」









読んでいただきありがとうございました。

明日か明後日一日更新抜ける可能性があります。

申し訳ありません。

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