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61杯目 僕と攻撃手段


「少年。なぜすぐついてこなかったのだね。」


全く、と言わんばかりのヴォルフ。


あの騒ぎの後公園まで走り、すっかり暗くなった公園でヴォルフに連絡。

電話が終わらどうかというタイミングでヴォルフが来た。


街灯の下で公園のレンガ作りの道の足元に影を落としながらヴォルフは話す。



「ついてって・・・死ぬよ・・・」


「そのままならな。当たり前だろう。下で受け止める準備をしていた。」


「いや、下でって。13階から落ちたらキャッチされても死にかねないよ。」


「大丈夫だ。やったことがある。」


「・・・あるんだ・・・」


「最も20階だったがな。」



いや、そういわれるとできた気がする・・・って。



「いや、それでも危険犯す理由ないだろ!?めだってたし!!」



「うむ・・・。まぁ今回はいいだろう。」

少し考えていたヴォルフだがそのまま話を続ける。



「さて、先ほど言ったすぐ始める、といったが。構わないな?」


じっと金の瞳に見つめられる。

相変わらず意志の強い目。

その目に負けないよう自分も意志をこめて。ヴォルフの目を見る。


「勿論だ!!」














その後習ったことは予想外に単純なことだった。



「いいか少年。今から君をまんべんなく強くすることはできないし、基本的な強化ではなんの役にも立たない。ここまではいいな?」



「ぐ・・・。」

改めて言われるとへこむな・・・

しかし事実なので頷く。



それに対して一瞬うっすらと口元に笑みが浮かんだ、気がする。



「ではどうするか?一点強化だ。」


「一点?」


「この場合通常ならば回避や逃避を鍛えるんだがな。」


「なぜ?」


「ん?単純な話、それが一番有効だからだ。回避や逃避が向上すれば君を守る手間が省ける。


「う・・・ん・・・」

やはり僕は基本的に足手まとい、ってことなんだろう



「だ、が!少年はそうじゃないんだろう?」


「・・・」

無言。ただ目で覚悟を伝える。


「よし。だからこそ、一点突破。たった一つだけに集中して技を教えよう。」


「それなら僕にも攻撃ができるように・・・」


「いや、おそらく無理だろう」


「・・・は?」


「少年の攻撃力は全く足りていないからな。可能性がない、から可能性がほぼない、に変わる程度だな。」



やはり、かなり厳しい、な。



「しかし、それでもやるんだろう?」


「・・・ああ!」


「ならば一つだけだ。ただの右ストレート、これだけ教えよう。」


「右ストレート・・・」


「恐らく、君が攻撃が必要となる場面は危機的状況で、大技を使うことはできないだろう。なので君のような素人からしてもなじみ深い右ストレート、を教えよう。」


私にとっても最も得意な技であるしな。



「なるほど。わかった。」



「よろしい、ではまずは拳の握り方からだ!」

バサッとコートをははためかせ声高に。

話し始めたヴォルフを見て何かを思い出す。




「まずは指のたたむ順番と強さだ!!小指から巻くようにたたんでいき、親指でロックをかけるイメージだ!!」



「あ、これコーヒーの時のヴォルフだ。」


「どうした!!早くせんか!」


「お、おう・・・」



そこから三時間。

僕は拳の握り方、足の開き方、構えだけを教わった。


殴り方にもたどり着けなかった・・・・。



途中、あまりにも終わりそうにないことに気が付き、自宅のカギをヴォルフに渡して自宅の庭において来てもらい、エーデルガルドに連絡。

僕が自分で置きに行こうとしたがヴォルフからそんなことより少しでも練習するように、と言われた。

鍵を勝手に開けて入ってよいと連絡しておいた。


家に着くと二階の部屋の電気がついているのが見える。位置からして母さんの部屋。

つまりエーデルガルドは家に帰ってきているようだ。


あんな立ち去り方をしたので若干気まずく感じながらも扉を開ける。


「・・・ただいまー・・・」


小さな声で扉を開け、静かにリビングへ。


リビングの照明をつけるとテーブルの上に置手紙。



内容をまとめると


「おかえりなさい・・・どんな顔して合えばいいかわからない、ごめんなさい、か」


手紙を丁寧にたたみなおしてポケットへ。あとで部屋に置いておこう。



コンビニで買ってきた弁当を食べて、シャワーを浴びる。


自室に戻り、布団へとダイブ。



心地良い疲労によってすぐに睡眠へと引き込まれながら僕は思う。



「謝ることなんてないよエディ・・・僕が無力だった、ってだけ・・・・いまは、ね。」




そう、僕は諦めない。

ヴォルフ曰く希望は上にしかないらしい。



いいよ。やってやろうじゃんか。

僕は何度も何度も自分に言い聞かせている、諦めないという気持ちを再度胸に焼き付けながら眠りについた。




読んでいただきありがとうございました。

短い話が続き、申し訳ありません。

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