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58杯目 僕の役割

お待たせいたしました。

破壊の権化、か。



「・・・・」



「・・・ふふ、なに?心配してくれているの?」



うっすらと笑う彼女。



「大丈夫よ。私はこんな状況でも何年もやってきてるんだから。」



平気そうな顔。

自然な笑顔。

柔らかそうに光る髪。



うん。



「なに?どうかした?」



「・・・・」



「ん?」



そう、自然だ。

笑顔が自然だ。



自然、だが。




「どうかした?って聞いたんだけれど。」



「・・・」



「・・・」



「・・・わかった。なんともない(・・・・・・)んだね?」



「えぇ、なんでもない(・・・・・・)わ。」



「・・・・わかった。・・・・・・・・・・無理するなよ。」




どんなに自然な笑顔でも。

いかに察しが悪くて気配も読めなくてもさ。

・・・何度も見た好きな笑顔ぐらい見分けつくんだよ。



不自然に、自然な笑顔な彼女の顔を見ながら僕はそう、頭の中だけで彼女に言った。





「・・・さて、本題に入ろうか。」


「あぁ、大分初めからそれてしまったわね。」


「いや、あってると思うよ。僕が聞きたいのは僕たちに・・・いや、ヴォルフと矢撃と協力できるか?だから。」


「あら?シュンヤに、じゃなくていいの?」


「・・・まぁ、なんていうか。」



・・・いい辛いなぁ。



「・・・・あ。」

何か気が付いた顔する彼女。



「・・・」

黙る僕。



「・・・ねぇ、なんでかな?」


「・・・別にたまたまそういう言い方しただけですよ。」



にやにやとした顔でこちらを見る彼女。

目を合わせない僕。



「ねぇ?」


「あーーもう、なんでもいいだろ!」


「あれ?教えてくれないの?」


「拒否する!」


「えー?」

・・・にやにやとしている彼女を無視。


・・・僕は彼女の味方であることを決めている。

彼女がヴォルフや矢撃と協力するならば僕は矢撃たちの仲間に。

敵対するならば彼らの敵になることを決めている。

そう、初めて会った時から僕は彼女の味方だ。


そう、何があっても。



・・・そう、僕だって嘘つきだ。

矢撃たちにはエーデルガルドを説得してくる、と伝えたが。

本当は彼女の意思を確認しに来ただけなんだ。



「なんか理由があるんじゃないですか?聞きたいです。ええ、ぜひとも聞きたいわ。」



「いいから。協力できるのか、できないのか、だけ教えてくれ。」

君の味方だよ・・・そんなこと彼女に言えるか!!


「言ってくれなきゃいわな・・・悪ふざけが過ぎたわ。謝るからそんな目で見ないで。」



そんな目をしていたのかは自分では見えない。

自分の顔を見ることはできないが・・・。

彼女の反応からして必死な顔をしていたのは・・・間違いないだろう。



・・・後日言われた評価のかわいい、は聞かなかったことにした。





「さて、協力するかだったわね。当然協力するわ。」


「そう・・・・か。」


なんとなく拍子抜けする。

って、こう思うときは大抵・・・


「ただし。」


やっぱり。



「正直ルインの反応は読めないわ。基本的に直接私に害が加えられない限り問題はないはず。」


はず(・・)?」


「そう。体の割合の4割がルインだとは言っても私の意志のほうが圧倒的に強い。」


「それなら問題ないってことじゃ?」


「ただし、殺意、破壊だけは別。彼女の意思はほとんどが殺意。」


「殺意、ね。」



つまり殺意や破壊に関しての時だけは彼女のコントロールができないかもしれない、ということか。



「・・・念のため、最後まで話しておくわね。私は協力するわ。こちらからお願いしたいぐらい。ただし、攻撃的な衝動を私がもったとき。その時だけは協力できないかもしれない。・・・・ストレートに言えば攻撃するかもしれないわ。」


「・・・どうにかならないのか?」


「無理ね。いい?ルインは破壊の力を持っていて数万単位の意志の塊。殺意に偏らせて多く集めたその意志は希薄さゆえに意志の方向性にはほとんど影響は与えないわ。しかしその量ゆえに、一度|攻撃的意志《方向性を持ってしまえば》個人の意志力では舵取りはできません。」


「・・・と、いうことは。」


「基本遊撃とした方がいいでしょうね。ヴォルフとの関係性的にも混乱が生じやすいでしょうから。」


「・・・」

ヴォルフとの関係ねぇ。


考え込んでいる僕など知らんとばかりにエーデルガルドは話を進める。


「では、お願いしますね。」


「え?」


「ん?あぁ、仲介役お願いしますねって意味ですよ。」


「あ、僕の担当なんだね?」


「それはそうですよ。あなた以外の誰もできない仕事です。」


「・・・」

誰とも敵対してない・・・いや、敵対できる力ない僕だからこそ遭遇すれば攻撃しあう可能性のある場所の仲介に向いているってわけか。



「お願い、できるわね?」

そう聞いてくる彼女の菫色の瞳は相変わらず力強く。



「わかった。任せてくれ。」

僕に力を与えるとともに、そこはかとなくやる気をあふれさせる。




思っていた主人公像とはちょっとばかり違うけれど。

始めてやってきた重要な仕事。

実態がたとえ連絡係でも。



立派な後方支援、だね。



静かな高揚を胸に秘め僕はそう答えた。





長らく更新開けてしまい申し訳ありません。

再開いたします。

お読みいただきありがとうございました。

今後ともよろしくお願いいたします。

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