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57杯目 僕と彼女の半身

「封印、ね。」


「そう、封印。正直封印すること自体はなんの苦労もなかったそうよ。多少『悪』に寄ってはいても基本的に言うことは聞くわけだし。」


「正直まだその『悪』に寄っているとある程度操作できるようになった、の意味が分からないのだけど。」


「私もそこまで詳しいわけじゃないのだけれど、まず悪の中でもルインは死や破壊を好む人格が特に多く集められてる。そのせいかルインの趣向も死や破壊を好んでいたそうよ。」


「死や破壊・・・」

聞けば聞くほどろくでもないものを生み出したもんだな。


「だからいうこと聞けばたくさん殺せる(・・・・・・・)、いうこと聞けば破壊できる(・・・・・)そういう風に方向づけしていったそうよ。」


「・・・ん?そんな簡単にいくもんなのか?最初の頃みたいにほかの陣営とかに説得されてしまったりしないのか?」


「まぁそこはうまくいったというか。まず刷り込みでその結社に従わないと殺せなく、壊せなくなると一種の洗脳を施したのよ。あとそもそも知能としてはそんなに高くなかったみたいよ。敵対組織に脅しをかけて来い、と言われて向かったのはいいけど脅しの理由や、やめる条件を聞いていなかったから脅しに来た、と言い続けながら相手が反省しようが命乞いしようが何でも従うと言おうが一緒くたに脅しながら全滅させたって記録が残っているわ。つまり、うまく思い込ませればさながら狂信者のごとく扱えたみたい。」



「じゃあ、ここで封印された方がたくさん殺せる、そういって封印されたわけか。」


「そういうこと。そうして彼女は封印されたまま時代は流れ、彼女を作った魔術結社は滅んだ」


エーデルガルドは息継ぎし、屋上に吹く風に目を細める。

風がやむと彼女は再び話し始めた。


「しかしルインは封印されたままあまたの結社を渡り歩いた。化け物の強さがそこまで必要とされなくなっても力を持っておきたい人間、自慢したい人間、コレクション好きな人間。そういう人間の間で封印された棺ごと高額で売買譲渡、され続けていたそうよ。」


まあ、危ない趣味の輩も交じってそうだなぁ・・・。


「そしてその封印が解かれたのは10年前。」


「ん?え?封印解いたのか?必要ないんだろ!?」


「まぁそうなんだけれど。度し難いのは人間の欲望ってことね。昔ある男が行った強化人間を作る実験。その引継ぎを行った人間がいてね。」


強化人間・・・?それってもしかして


「ドクターってやつか?」


「ん?たぶんそうね。ヴォルフから聞いたのね?あえて英語読み、か。おじさんらしわ。」


「あ、やっぱり本名じゃないんだ。」

そう聞いてはいたけど再確認。



「知らない方がいいこともあるってことよ。そのドクターの実験を引き継いだ人間はドクターの作品を超えることを目標にした。」


・・・そういえばヴォルフもドクターの吸血鬼化の実験は続いているとか言っていたな・・・・


「ヴォルフの話は聞いた?」


「あぁ、神の血鬼(ワイン・オーガ)の話?」


「ワイン・オーガ?・・・・ああ、神の血、鬼、か。え?何?おじさんがそれいったの?あの人実年齢100越えてるのよ?」

やや引いた様子で話すエーデルガルド。


「いや、ドクターってやつがそう呼んでたって。」


「あぁ。言いそうね。・・・・よかった・・・・」

あからさまにほっとした様子を見せるエーデルガルド。

そうして顔をあげると気持ちを切り替えたのか再び話し始める。



「その実験の通りもはや私たちにはわからないけれど人間から不足すると強くなる(・・・・・・・・・)、らしいの。だから様々なものが不足した生き物を生み出した。」


「・・・まぁ、成功例が一つあればそりゃ作るか。」


「最も、ヴォルフを超えるのはずっとできなかったそうよ。それに転機が訪れたのは引き継いだ男が逆転の発想、コペルニクス的大回転をしたときね。」


「ずいぶん大げさだな。」


「発見とは時に逆転の発想が必要なのかもね。青色発光ダイオードとかと同じ。」


「え?青色・・・?」


「興味あるならあとで教えるわ。まぁ要は少し不足することで強くなる。じゃあ逆転の発想、たくさん減らしてみよう、と」


「・・・それ死ぬんじゃない?」


「そうね。死ぬわ。たくさん死んだ。そして気が付くのよ。減らした分足してみよう。他の物からもってこよう。どこかで聞いたわね?」



他のもの…?他の死体(モノ)!?


「・・・・ルイン・・・。」


「その通り。たまたまその男は呪術にも最低限の理解があったことが悲劇ね。実物を見るために封印を解いた。」


「いや、でも他の組織に説得とかできないってことは・・・大変なことに」


「いいえ。うまく説得し事実である『他の組織は滅んで黒に来た』、ではなく封印されている間に『組織は『黒』という名前に変わった』と思い込ませたみたい。」



「・・・なるほど。刷り込みとも矛盾しない・・・」


「資料があり、何百年もたっていたからこそできた手段だけどね。そうして後継者は実験した。」


「・・・実験。」


「意図的に体内で作れない栄養素があるようにして外から補給。そこに魔術的経路を入れる。それを繰り返して死体の山を築き、それを材料にルインを強化。そうして彼はルインの肉を利用しとうとう作ってしまった。」


「作ってしまった?」


「人間から約五割に値する酵素、骨、神経などを消失。四割を、他から・・・ルインから(・・・・・)補てん。その際に経験なども引き継ぎ、かつ不足による呪術的な強化を施された人間を。」


「・・・・」

彼女がこちらを見る。

例の菫色(すみれいろ)の瞳は依然として強い意志を持っている。

持っているが。


どこか脆そうにも見える。




「私はエーデルガルド。パルバム・フォン・エーデルガルド。半身を、おぞましき破壊の権化を埋め込まれし、化け物よ。」




読んでいただきありがとうございました。

昨日は結局続きが更新できず申し訳ありません。今週中は更新が途切れがちになるかもしれません。来週終わりごろからは元に戻ると思いますで見捨てないでいただけると幸いです。

詳細は活動報告あげておきます。


灯油大明神

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