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56杯目 彼女とルイン

「大体800年ぐらい前に化け物は生まれたらしいわ。まだまだ化け物が力を持っていた時代ね。」


「800年前っていうと・・・」


「ピンとこないわよね。第四次十字軍とか、モンゴルができたりとか、鎌倉の大仏だとか。そのあたりの時代らしいわ。」

もっとも私は何一つ見たことはないのだけれど、と付け加える。


「まぁ今と比べればまだまだ非現実が力を持っていたとはいえ、徐々に力を失いつつある時代でもあったわ。そんな時代に生まれた化け物・・・女性人格なので彼女と呼ぶけれど・・・彼女は生み出された。」


うん?なんだって?

顔に出たのだろう。エーデルガルドが僕の心の声に対して返答する。



「疑問に思うわよね。言い間違いじゃないわ。彼女は作り出された。」


「え?君たちが最初じゃ・・・」


「ちがうわ。そもそも私たちの方法だって元になった伝承があったのよ。その伝承のやり方に近いわね。」



・・・そういえばヴォルフの話でもそんな話だったな。



「その化け物は人間の畏怖と、魔術師の魔力。自然界の力と死者の怨念、血、肉を持ちいてとても口にできないおぞましい手段と思想をもって生まれた、とだけ伝わっていたわ。詳細は何一つわからないけれどろくでもないものだろうことは想像に難くないわ。」


「血、肉・・・」


「そう、死体ね。時代背景を考えても今より圧倒的に死が身近で、まだまだ衛生環境なども未発達な時代。今より死体などから疫病が回ることは人々のひょっとしたら、を生み出しそれを否定するだからこそ、が強い時代だったはず。ある意味私たちの最盛期ね。」


もっと昔は超常現象が当たり前に扱われすぎていて、科学の力の発展のほうが早いぐらいだったからね、というエーデルガルド。



「そうしてとにかく彼女は生まれた。しかしその精神は余りにも危険だった。」


「危険?」


「そう、危険。彼女はあまたの命をすすり、肉を束ねて生まれた。その結果死人の意識や感情、技術経験などを少しずつ引き継いでいった。その結果の人格がまともだと思う?」


「・・・思わない。」


「そう、無理ね。何も死んでいった怨念、とかそういう話じゃなくて百人いれば百人の主義主張があるわけで、全て混ぜ合わせたら偏りのない人間味を失った精神が出来上がるわ。作成した魔術結社・・・今となっては名前もわからないのだけれどそこの資料によると彼らも取り扱いには困ったそうよ。滅ぼせと言えば周囲を滅ぼし、守れと言えば守る。主義や主張や忠誠心もなく、誰にいつ何を言われてもそのまま従う。ただの破壊の権化と化した。」


「じゃあ失敗したってこと?」


「まぁ失敗したんだけれど、そのあとに解決したのよ。要は人格に偏りを持たせればいい。」


「偏らせる。」

でも人数増やしたところで偏りは変わらないはず。

偏らせるためには?

強いものを入れるか、多く入れるか・・・?



「彼らはそれを実行した。死者などの死んだ肉片を集めるときに特定の性質をもつものを集して集めた。」


「特定の性質?」


「きっと本当は何でも構わなかったはず。聖人君子を集めても悪人を集めても正確に偏りが生まれれば趣味主張が生まれて人格が生まれて、忠誠心を持たせたり、報酬を与えたり、とある程度操作したり、少なくとも行動が予想できるようになるのだから。」


「・・・どんな人間が集められたの?」


そこでエーデルガルドはややオーバーな動作で両手を広げ言う。


「死んでる悪人と善人どちらが集めやすいと思う?」


「・・・悪人?」


「その通り。方法は簡単。当時の魔術は今なんかとは比べ物にならないからね。巨大な魔方陣を構築。そこで戦争が起き人が死んだときに殺して快感を覚えたもの、三人以上殺したもの、他のものに恐怖を与えた者。そういう条件に当てはまる肉を用いて魔術を再構成。一度作った化け物に追加する形で化け物を再誕させたそうよ。」



「それにしてもなんでそんな危険な人格の物を使ったんだ?」


「おそらく単純に力が必要だったんだと思うわ。ただ作るなら強いものを。あの戦争ばっかりの時代だもの。力こそすべて、とは言わないけれど大切だったんでしょう。」



「・・・その結果生まれたのは?」


エーデルガルドの話を聞いていたつもりが彼女(・・)とやらの話になっているが、おそらくこれこそがエーデルガルドの話なんだろう。何の根拠もなくそのことが確信できた。




「それこそが彼ら、いや現代までの魔術師にとっての最高傑作。『ルイン』。破滅、廃墟を意味する名前。」



ルイン。

彼女は血肉を食らい、超常的な膂力を誇り、霧や狼になり敵を滅ぼす、今でいう吸血鬼(・・・)に近い存在。

化け物の中の化け物。


「まぁ、それでも必要最低限の自我がかろうじで目覚めただけだったからほとんど名前で呼ばれることなどはなかったんだけどね。そのままある程度操作ができるようになった彼女は各地の戦争や歴史に葬り去られた魔術結社の栄達と滅びにかかわり続けた。」



「そうして時は流れて500年後。どうやら術式で死んだ人間の分の寿命も集める、といった働きがある術式だったらしくルインの寿命がとんでもないことになっているのが分かったのがこの頃ね。」


なんと儀式に使われた人間は少なめに見積もって延べ10万を超える。一人当たり一年だったとして、一割の吸収だったとしても1万年は生きる計算になる。



「さらに、このころ等々ルインが邪魔になった。強すぎたのね。」


「強すぎた?」


「そう、このころにはもうだいぶ科学力が台頭し始めていてね。化け物が力を示しすぎてはかえってマイナスとなることが多かったのよ。だから封印された。」



中途半端ですいません。

また後でもう一杯更新いたします。

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