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54杯目 僕と話し合い開始。

ブワと風が吹きつける。

たった四階建てでも学校は比較的天井を高く作るから思ったより高さがある。

そのせいか周囲の民家では風は遮られず、強く吹き抜けていく。



そんな中、エーデルガルドは立っていた。



まっすぐに僕を見つめていた。



西高校(ウチ)の制服で。






「えーっと。エーデルガルド?」


「待っていたわ、俊也。・・・覚悟を決めたのね・・・!」


「まって、シリアスに入らないで。」


「・・・?」


「そこでなんで疑問顔なんだ!?」



予想外の服装に動揺し覚悟なんて吹き飛んで行ってしまった。

こんな強い風じゃ吹き飛んでいった覚悟はもう遠くに行ってしまっただろう。

風邪はゴウ、と哭いては収まる、といった周期で僕らの服もはためかす・・・って!



「エーデルガルド!スカート!押さえて!?」


「あぁ、でもまぁいまさらでしょう。」

履き慣れていないから対処に困るわ、などと慌てずに呟くエーデルガルド。



「いや!まだ見えてない・・・というかそっち見れないから押さえて!?または階段の踊り場まで行こう!?」


「どうせ、あなたの家で数日倒れていた時に何度も見たでしょう?」


「見てないよ!!?お風呂入った後だったし、数日はいいかと!」


「・・・女性は常に清潔でいたいものなのに・・・とんだ恥ずかしめだわ。」

よよよ、としか言いようのないわざとらしい動作で下手な泣きまねをする


「・・・・ちなみに体拭いたりしていた場合は?」


「普通に変態呼ばわりね。」


「逃げ場ないじゃねぇか!」


「ちなみに中にショートパンツ履いているから安心しなさい。祓に言われて対策済みよ。」


「心配して損した!!」

大声出しながらエーデルガルドの方を向く。


整った顔立ち、きめ細やかな肌。そして何より菫色(すみれいろ)の瞳。

その目に宿る意志の力はやはり変わりなくそこにあった。

僕の、吹けば飛ぶような覚悟とは違った強い意志。



あぁ、だからこそ憧れる。

だからこそ、守りたい。




「さて、緊張はほぐれたかしら、臆病者さん」


「・・・んーともしかして聞こえてた?」


「ふふふ。基本的に能力高いのよ。この体。」



・・・いろいろ調子に乗った語りしてしまったから、恥ずかしいなぁ。



「ま、いいでしょう。その覚悟に免じて、デートに保護者同伴できたことは許すことにしましょう。」



デートって・・・


「学校の屋上だよ?周りはフェンスに囲まれてるし。」


「あら、あなたの夢でしょう?学校の屋上に入るなんて。集合場所をここに指定して祓たちにあけてもらったのよ。」



まぁ、確かに気分は高揚している。

美しい彼女と、普段は入れない屋上(わかりやすい非日常)という状況に自分が何かの主人公になったかのような感覚すら覚える。

まぁ、ここ最近は主人公になったような気分を何度も味わっては、打ちのめされてるんだけどさ。



「最初の話題、場所にも気を使って。ありがたいね。そこまでされて震えてるってのはあまりにも情けないか。」


「?」


精一杯の虚勢で、似合いもしないさわやかさを意識して。

できる限りサラリという。



「似合ってるよエーデルガルド。」


「・・・ふふ、ちょっとはデートらしくなったじゃない。」



彼女は少し照れたように笑った。












「私は今のあなたたちを見ていると、結界なんていらないと思いますが。」


そういう祓に対してエーデルガルドは即座に否定。


「ダメ。これは私なりのけじめなの。手間かけて悪いけど二人の間に結界を張って。」


強い意志の瞳は祓をまっすぐ見ているのだろう。やや困ったように視線を外し僕の方を見る。



「エディはこういってるけど?俊也?」


僕とエーデルガルトに対するもので祓の口調が切り替わるのが面白い。

っと、エーデルガルドは譲らなそうだな。

でも僕も覚悟を決めたのに気を使われちゃったからな。



僕の覚悟ってのも見せなきゃいけないだろう。



「祓・・・お願いなんだけど。」

と言って手で祓を呼ぶ。

そうして張ってほしい結界の形、機能が可能か尋ねる。



「可能、と言えば可能ね。」


「じゃぁそれでお願い。」


「・・・私絶対不機嫌になられると思うけど?」


「僕なりの覚悟ってやつさ。」


「あっそう。」

呆れたようにそういうと祓は僕たちから少し距離とる。



「・・・仲間外れはよくないと思うわ。」

なんだか随分とかわいらしい言動の多いエーデルガルドに少しだけなごみつつ、彼女の近くに立つ。



「ごめんよ。もう結界張るから。」



「それでは結界を行使いたします。くれぐれも動かずお待ちください。・・・--------!!!ッ――!!」



何度も聞いた呪文。祓曰く祈言(いのりごと)というらしい神への言葉。

それを聞いてエーデルガルドが不審げな表情をする。



「おかしいわ。祓は結界は詠唱せず使っていたはずよ?」


僕はその声を聴きながらまさか詠唱、という言葉を創作物の話以外で聞くとは思わなかったなぁ、などと考える。



「範囲が・・・広い?まさか!!攻撃!?」


「いや違うよ?僕は気配は読めないけど、きっとお願いした通りなはずさ。」



やや焦るエーデルガルドと落ちを知っているから落ち着いている僕。

なかなかない状況に少し楽しくなる。



「まぁ見てなって。」


「貴方一体何を・・・」


「---!!いきます。」




パキイイィンと硬質な音を立てて結界が張られる。



僕とエーデルガルドを囲むように(・・・・・)



驚いたエーデルガルドの顔にやや爽快感を感じながら僕は大きく言う。



「さぁ話し合おう!!」


「でもあなたこの状況じゃ余計・・・」



「恐怖にはなれてる!逃げ場がないのにも・・・・」


ここで意識してあいつ、ヴォルフのように笑う。





「慣れてるんだ。」



さて僕の覚悟は伝わったかい?


遅くなりました。00時またいでしまいました。


読んでいただきありがとうございました。

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