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50杯目 僕と祓の申し出

数日開けてしまい申し訳ありません。

本日複数話更新予定です。

(はらえ)・・・ということは。



「亜矢…?」


(はらえ)、と呼びなさい。」


きっぱりとそういう彼女。

別に僕としてはどちらでもよいので従うことにする。



「んじゃぁ、祓。力を貸すって?」


「怖いものと話すため力を貸す、と言っているの。そう具体的には、腕力、暴力から守ってあげましょう。」


「暴・・・力から・・・?」



そこで授業が終了したのだろうチャイムが鳴り響く。

が、その瞬間祓が手を払う。


バサリ、と袖が舞う音。


その音がやむとまだ途中のチャイムの音や授業終了による生徒のざわめきなど一切消える。



「察しが悪いわ。私が結界を張るわ。そこで話しなさい、と言っているのよ。」


「結界・・・?」


「そう。結界。今使っているのと同様。世界を切り取る、神の御業。」


周囲の風景などに変化はない。

・・・いや、よく見ると若干周囲が明るい?


「結界・・・」


「結界の中には音声、光などは通すけれど害意、攻撃などは通さないというものがある。」



つまり…



「結界を挟んで話せ、ということ?」


「その通り。」



それはいいかもしれない。

(結界)がないと女の子一人と話すのも困る自分が情けないことこの上ないが。

しかしそれでも・・・



「・・・・」


「怪しんでいるわね?いいことだわ。」


貴方は警戒心が不足しているようだから。

と呟く祓。

大きなお世話だ、とは思うものの聞こえないふりをする。


「貴方をなぜ助けるのか、なぜあなたの怖がることが分かるか、という話をしましょうか?」


「・・・・」


「沈黙は肯定ととるわ。なぜわかるかはあなたの声が聞こえていたし、土地神様からすればここの音を聞く程度造作もないこと。お教えいただいた、というのが理由よ。」



「・・・土地神さまってのは何でもありなのか?」

全く姿や音もたてずに音を聞けるなんて。



「ええ、そうね何でもありといってもいいと思うわ。神なのだから。」


どことなく自慢気な表情の祓。

いや、普通に見たら無表情のままなわけだが、微かな表情の差からそう感じる。

亜矢にしては表情がよく出ている方だろう。

まず、こんなに続けて話すタイプではないのだが・・・・昨日に引き続きよく話す。

やはり亜矢、つまりは(はらえ)でも自分の好きなものに関しては、口が軽くなる物なのだろうか?




「と、まぁと地神様のお陰で分かったの。そして助ける理由だけれど。」

「そうだ。僕は何すればいい?」




立ったままこちらをまっすぐ見下ろしていた祓。

僕の言葉を聞くと腰を折り、ふいに僕の耳元に唇を寄せる。



「友人の仲直り。手伝うのがそんなに不思議?」



ドキリ、と一度強い動機を感じながら僕は勢いに飲まれるように答える。


「ふ、不思議じゃない。」

「でしょう?」



そう言って体を回し、背を向けながら離れていく(はらえ)




同じ耳元で話されるにしても、ヴォルフとじゃ大違いだな・・・・



夕日の中、始めてヴォルフと会った時を思いだしながら、少し赤くなった自覚のある熱い耳を触りながら僕はゆっくりと立ち上がる。


そしてカツ、カツ、と階段を下っていく祓を追うように僕も階段を下りる。



休み時間でにぎわっているはずの高校内で一人の生徒を見かけることもなく不自然に静かなまま校門を出る。


祓が自然な動作で僕の前で右手を上にあげる。

背を向けて歩きながら彼女が右手を真横に払うと、ウワン、とまるで防音の扉を開けた時のように急に背後の喧騒が聞こえ始める。


僕は驚き振り返るが、祓が止まる気配無くそのまま進むのに気が付き慌てて後を追いかける。



「え、今のは?結界を解いたの?」


「大体そんな感じね。便利でしょ。」



・・・・便利という言葉で済ませていいものか。

明らかな僕の憧れ(超常現象)を起こしながらも平常運転の祓。


やはり、祓は非日常(あっち側)の人間で、このぐらいのことは彼女にとっては便利、ぐらいの話なんだと悟る。

自分は今非日常()の世界にいることを改めて感じてわずかに興奮を覚える。


だが、表面上はあくまで冷静に。




今は喜んでいる場合ではなく、恐怖のエーデルガルドと話し合いに行かなければならないのだから…!








「・・・さっきからにやにや、どうしたの?」


「何でもないですごめんなさいゆるしてください」




やはり、僕は隠し事は苦手らしい。


短く、すいません。

読んでいただきありがとうございます。

数日更新できなかった分、本日複数杯更新予定です。

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