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49杯目 僕と初めに戻る。


さ、て。


僕は宣言通り登校した。


しかし授業が始まっていたので、一限目は休むことにした。

幸いなことに一時限目は選択授業のため、休んでいてもクラスではそこまで目立たないし。

そう考えて僕は登校したものの教室のある階を通過。

そのまま最上階まで上がり、屋上の入り口の扉の前に立つ。

そして一応手をかけ扉を引いてみる。


ガタ。と音を立てるだけで扉は開かない。


そりゃそうだ。今時高校で屋上に入れる学校なんてほとんどないといっていいだろう。



前からあいていないことは知っているのだが、非日常にあこがれる身としては必ず確かめたくなる。

まぁ、しかたない。座り込む。


昼休みだと人目を避けてか、僕のように非日常にあこがれてか。

偶に先客がいるこの場所も朝授業中なんてまず生徒は来ない。


僕は折角時間が余ったので状況を整理することにした。



「まず、僕の目標はエーデルガルドを守ること。」



わかりやすくするため小さな声を出しながら記憶を整理する。


何から守る?


「彼女の敵から。」


彼女の敵とは?


「ヴォルフ、(はらえ)矢撃(やげき)だったのが今はショニエッター。」


どうやって?


「ショニエッターを倒す。」


そのためには?


「戦力・・・いや力じゃ勝てない・・か?」


そのためには?


「罠。・・・ヴォルフ・・・矢撃・・・」

倒せる気がしない。


そのためには?


「・・・・・・祓とエーデルガルドにも協力してもらう。」


それで五人。僕を除いて四人。それで勝てる?




「むり・・・か?」



おそらく不可能。ならばどうする?



「前提が間違っている?彼女を倒すのではない?」



ならどうする?


「・・・逃げる、封印する?」


どうやって?



「祓の封印。矢撃たちのネットワーク。ヴォルフの伝手。」


・・・可能か?


「・・・比較的ありか?ショニエッターの追跡能力は高いとは思えない。」

始めにエーデルガルドでなく僕らを襲撃したこと、いまだに追跡がないこと、考える。

追跡能力は高くない。


「可能、か。」



では、そうするとして問題点は?



「・・・協力してもらえるか、か。」


ヴォルフは?


「うん。いいだろう。」

基本方針は同じだ。


祓は?


「・・・半々、か敵ではないが仲間でない。でも仲良くなった、らしいからな。ショニエッターは穢れ、だろう。」

穢れならば祓の目的にも合致する。


矢撃は?


「・・・間違いなく協力する、が怪しいかな。」


正直言って僕は彼女が信用できない。

明らかに矢撃の正体を泰樹は知らなかった。


「家族に隠している正体を僕に明かす?」


そこまで協力関係にはないはずだ。

そもそも僕は防衛士に協力を求め、何か協力できるかと思ったが結果からして僕は無力だった。

一般人すら扱って最大限の効率をたたき出しているの集団に何の力もない僕一人で提供できるものなんてほとんどない。

それでも協力するという。

不自然。不自然だ、が。


ま、それでも。


「信じるしかない、か」


残念ながら敵を増やすようなまねはできない。

ショニエッターはそれだけ強大だ。


信用はできない。油断はならない。

それでも


「信用して、矢撃は仲間だ。」



残るはエーデルガルド。



「・・・彼女は読めない。目的に関しては間違いない。彼女の命を助けるのが目的。助かる気はあるはずだ。僕とは協力できる。」



では、矢撃、ヴォルフ、祓とは?



「・・・・ダメだわからない。彼女の性格はどっちが本当なんだ?」


攻撃的な彼女。

僕の助けた、強い瞳の正義感のある女の子。

矢撃をいたぶる彼女。

僕を守る彼女。



「・・・下手に会わせるとまずいか・・・?」


彼の、エーデルガルドと話さなければならない。

彼女の考えを、行動を、知らなければならない。

できるか?


「・・・できない。」


そもそも僕は彼女が恐ろしくて、話ができなくて彼女から距離を置いたわけだ。

今なら話せる?そんなわけない。

今だって、思い出すだけで震えてる!



「何日も前から何にも進んでないな・・・」



結局いつも話は同じところに戻る。



「どうにかエーデルガルドと話さないと・・・」


どうやって・・・。


どうやって。


どうやって?


どうやったって、怖いもんは





「怖いんだよ・・・!」









「あら、何が怖いの?」



カツカツ、と音が聞こえる。

やっと見つけたわ、などとつぶやきながら階段を上がってくる。



「私は怖くはないわ。」



暗順応(あんじゅんのう)していた目に飛び込む純白。

俊也を見つけたわ。階段最上部。

そう携帯電話で誰かにつたえる。


バサッと手を振り、袖が風に揺れる音。



「話しなさい臆病者。」



続いて見える朱色の袴。

目の前に立って彼女は言う。



「怖がりのあなたが、ここまで努力した。その、臆病者の努力に免じて。」



力を貸してあげる。



そう言って彼女は。



(はらえ)は僕の前に現れた。



読んでいただきありがとうございました。

明日は更新できないかもしれません。

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