46杯目 僕と泰樹の無罪証明
あーー、その、なんだろうね。
これはそう、あれに似てる。
自信満々に教室で手をあげて、回答して。
その結果誤答だった時の気分。
それでわからないなら先生に全力でお母さん!と呼びかけてしまった時でもいい。
とにかく・・・居た堪れない!!!
「あーーーーーー!!潜りたい!穴があったら潜りたいってこんな感じか!ぎゃああーーー!!もう!!」
もう何が何だか。
自分でもわかるほどに頬が熱い。きっと真っ赤なことだろう。
自信満々に、追い詰めたつもりになって。
探偵役のように、指さして。
結果間違いとか・・・。
「また、勘違いか・・・・?主人公だと思い込んだか・・・・?」
そこはかとなく落ち込む。
いや、諦めるのはまだはやい!!
「いや、泰樹。確認させてくれ。」
「え、うん。いいけど後ろの方は?」
後ろ?矢撃か。
「無視していい。泰樹の身内が病気っていうのは?もう大丈夫なのか?」
「え?あぁ、大丈夫だよ。けがで入院はまだしてるけど、どうにか退院はできそう。」
「そうか」
・・・仲間を疑うのは嫌だが仕方がない。
しかしこれ以上は確かめようもないか。
「じゃぁなんで連絡しなかったんだ?」
「あぁ、今は峠は越えたけどやはり危篤だったからね。事務連絡以外するような雰囲気じゃなかったんだよ。」
考えてみればそりゃぁそうか。
部屋の外に出て、とかやれなくはないけど。
泰樹の木を使う性格ならまずやらないよなぁ。
「えっと、じゃぁ今日はもうランニングに出てていいのか?」
「ここ数日休んでいたし、峠を越えて皆もいったん帰宅したからね。」
正直、確信は持てないけれど、俺も五年間こいつを見てきた。
その勘が嘘を言っていない、と感じるんだよな。
「じゃぁこれで最後の質問。矢撃。あれかしてくれ」
「ん?あれって?」
「いつもまっさきに出すポケットに入れてるあれだよ。」
「・・・・うん。あぁ、これか?」
そう言ってコートの背中側からちょうど握りやすい、バッドのグリップ部分の様なものを取り出す。
そう、三段ロッド。
「いつもポケットなわけじゃねぇんだ。はいよ。これでいいのか」
「ありがとう。」
ずっしりとしたそいつを受け取る。
そのまま泰樹へ手渡す。
「え、と。俊也?」
「振るんだ。」
「え?」
「ふ、る、ん、だ!!」
「!?」
完全に訳が分からない、といったような顔をする泰樹。
しかし勢いのに飲まれたのか横に軽く振る。
何も起きない。
「・・・俊也?」
「もっと強くだ!!」
と、自信満々に答えてみるものの、内心自信がない。
そのとき矢撃からの助け舟。
「もっと勢いよく全力で振ってみな」
「・・・はい・・・。」
もはや理解不能を超えてやや恐怖のような表情を浮かべる俊也。
それでも根がいい奴だからバッドのスイングのような構えをとる。
いつか騙されそうだなこいつ。
「・・・ふっ!!!っつおわぁ!!!」
ブンッガタタタ!!と音を立てロッドが伸びる。
それに驚きバランスを崩したたらを踏む泰樹。
「おお・・・え?これ警備員とかが持ってる警棒じゃないの?」
「そうだよ。ありがとう、確認は取れた。」
そう言って声をかけるが泰樹は少しばかり少年のような顔をしてブンブンと数度ロッドを振った。
何度か振り、満足したのか先に手を当て中に戻そうとするも戻らないことに気が付いたのか、諦めてこちらに渡してきた。
「ごめん戻んないんだけど。壊したかな?」
「泰樹の力が足りないんじゃないか?僕がやろう。・・・・ふんっ・・ぐ・・・ぐぅおおおおおおおお!」
「いや、それじゃ無理だから。」
びくともしない!
鼻の奥がつんとするほど力を入れてみたが全くロッドは動かなかった。
かしてみ、とロッドを僕の手から抜いた矢撃はロッドの先端を地面に向けて、一気にたたきつける!!
ガヅン!と音を立てて収納されるロッド。
地面にはかなりはっきりとした跡ができた。
「ッとまぁこうやるんだよ。土の上だと石狙ってやってもうまくいかん時あるからコンクリとかのほうがいいかもだけど。」
・・・ふ、ふーん。まぁ?持ち主だしね?わかって当然だよね?
「だから力ずくじゃ無理だぞ俊也。」
声しかわからないが、はっきりとわかる。矢撃め馬鹿にしてるな!?
「えっと・・・二人とも?僕はもういっていいのかな?姉が家で待ってるんだけど。」
泰樹が困ったように言う。
長い時間引き留めてしまったので予想以上に時間がかかってしまったのだろう。
「今日学校は?」
「行くよ。」
ならば細かいことは学校で聞けばいい。
「わかった!遅刻するかもしれないけど行くからまた学校で!」
走り出す泰樹が遠ざかりながらわかった、と返す。
そのまま泰樹は曲がり角を曲がっていった。
そして僕は。
「いやぁ、俊也?昨日なんか話した気がするんですけど?」
「いや、あのほんと・・・」
「なんて言いましたっけぇ?」
矢撃に追い詰められていた。
後ずさりつつ僕は膝をついた。
「我々三人の情報は三人及び支部までの情報とし、外部ましてや一般人に漏らすことのないようにすると決めました。」
手をつく。
「言い出したのはぁ?だれだっけ?」
「僕ですごめんなさい!正直まちがいなく中身泰樹だと思ってました!!」
土下座!!
間髪おかず後頭部から衝撃!!
「あやってすむなら!!契約魔術は!!いらねぇんだよ!!!」
最近土下座はよくしているが。
流石に後頭部から足蹴にされたのははじめてだなぁ、と思いながら僕は顔面を押させ豚のように助けを求めるのだった。
「ちょっ!まって!ごめ、ごめんなさい!!歯が!!歯が折れる!!」
「折れろ!!」
「待って!勘弁して下さ・・・!!」
「鼻も曲がれ。豚だ。豚になれ!!」
「待て!目て・・ぐっ!目的がちがく!!ぶひぇ・・・」
「うはは!本当にぶたみてぇ!!」
「あんた碌な死にかたしないぞ!!!?」
いや、ほんと。
矢撃は容赦ってもんを学んだ方がいいと思う。
結局本当に僕は鼻の軟骨が曲がり治療札のお世話になったのだった。
今日のわかったことは、魔術師にとっての契約ってのは案外本気で大切ってことと、泰樹は矢撃じゃないってこと。
あと、矢撃はいつか絶対に、ぎゃふんといわせなければならないってことだ。
「おい、もう一回ぶひぃって言ってくれないか?」
絶対に・・・絶対にだ!!!
読んでいただきありがとうございました。




