44杯目 僕と会議の始まり
本日二杯目です。
矢撃が放射型の弾丸を打つことにより、彼女を窓の外に吹き飛ばした。
そのあとに技名を呟いていた彼を見ていた僕。
そんな中、ヴォルフだけは僕らとは異なりショニエッターの斧を見ていた。
そして何かに気が付く。
「ちっ!!鈍くはないなあの少女!!」
先ほどからまた水に浮かぶ氷ように地面に半分沈んでいる斧にヴォルフが駆け寄るとその柄から細い鎖がジャラジャラと音を立てて伸びており、ガキィ!という音とともに停まる。
よく見ると細い鎖とはいうものの、斧との対比によって十分な太さがあることに気が付く。
そう、人一人が十分ぶら下がれる太さがあることが!
ヴォルフが斧を持ち上げる。流石のヴォルフも重いのか苦しげな顔をしながら両手でどうにか保持。
そのときに鎖の端が向かう先、ベランダの柵の向こう側から白い手が出てくる。
手首の金属製の腕輪から鎖が伸びている。
そのままひょいと体を持ち上げる。
鎖一本だけで戻ってくるには早すぎるだろ!!
心の中の悪態が通じるわけもなく彼女は淡々とした口調で話す。
「人を落とすの・・・危ない。」
身体をを横に倒し足をそろえるようにして柵を超え、ベランダの縁に腰掛ける。
彼女がそんな風にゆっくりと行動している中、ヴォルフは可能な限り早く、一歩一歩床板を軋ませながら彼女へと向かう。
「それ・・・私の。」
彼女もそれに気が付き、声をかける。
「安心したまえ。なにも、取ろうってわけじゃぁない」
底かばかにしたようなヴォルフの声。
ゆっくりと体をひねって近づくヴォルフ。
・・・体をひねって・・・?
「返してやろう。受け取るがいい。ほら!な!!!」
身体のよじれを開放。
ため込まれていたエネルギーが発現。
野球選手のバットスイングより少し遅い、といった程度で巨大な斧が少女へと襲いかかる。
少女のスイングと比べればそれはそれは遅いものだったが、それでも膨大な威力であることは疑いの余地がない。
それでも彼女のパワーからすれば軽く抑えられるはずだ。
彼女は片手でヴォルフよりも早く武器を振るうのだから。
ただし、足元が安定していればの話だ!
ガヅッと音を立て受け止めるショニエッター
停まらないからだ
「武器を抱えて、落ちるがいい!」
ダメ押しと言わんばかりの蹴り!
「うぐっ・・・!」
そのままの勢いで宙に舞う!!
数瞬の間の後轟音。
ズドォオオンと響く重低音は彼女が地面の海に飛び込んだ音だろう。
「油断大敵だぞ少年たちよ。」
そう言ってこちらを見るヴォルフに残念ながら僕らは返す言葉もなかった。
その後すぐにヴォルフの逃げるぞ、の言葉で部屋を出る。
しばらく動けないのではないかと僕は思ったのがが、13階からの墜落程度ではせいぜい打撲だろう、とのことだった。
矢撃の一発目の砲撃も相当な威力があるそうであの威力で煙い、という感想なんじゃ大したダメージは見込めないとのことだった。
そうして矢撃たちと黙々と歩きたどり着いたのは駅の反対側のビジネスホテルだった。
それなりの大きさを誇るが駅から少し離れたチェーン展開しているホテル。
グレードもビジネスマンが出張でよく使う程度のそんなに高いものではない。
さっとチェックインをすまし、年齢もバラバラで不審な恰好の男もいるので微かに見られている気もするが、さっさとエレベーターに乗り込み上の階を目指す。
部屋に四人部屋のベッドにどかりとヴォルフが腰掛ける。
「黒の拠点は追っ手を考えるともう使えん。仕方ないのでホテル住まいだな。」
「まぁ、僕と矢撃は家にかえればいいと思うけど」
「まぁそうだな。話が終わったら考えればいい。」
そう言ってヴォルフは席を立つ
「コーヒーはない、紅茶もティーパックのみか・・・。まぁあるだけ他の国よりいいが。」
ぶつぶつとつぶやきながらも紅茶を入れていく彼。
こちらをちらと見るが僕は目線で、矢撃は手でそれぞれ断る。
「さて、仕方がない。二回目となるが、腹を割って話そうか。」
紅茶を手に戻ってきたヴォルフは話し始める。
話すのも何回目になるのか。
結論の出ないやり取りも何回目になるのか。
まだ出会ってからひと月ほどしか経っていないが、ずいぶん印象的な男。
何しても空回りが続いている僕だけれど。
一つ気合い入れてこのすっきりとしない現況をどうにかしようか!!
読んでいただきありがとうございます。
今晩中にもう一杯は頑張ります。




