43杯目 僕と矢撃の技。
数日間執筆できずすいませんでした
まず矢撃が下がった。
拳銃が武器である以上狭い室内でなら離れた分だけ銃が有利だ。
もっと広ければ離れすぎると当てにくくもなるがこのぐらいならばまぁまず有利だろう。
次にヴォルフが近くにあった椅子を彼女に高速で投げ込む。
空中で粉々になる。
まさか結界、と思った一瞬後に吹き付ける風に目を細めて気が付く。
巨大すぎる斧が彼女の左下から右上に移動している。
つまり、彼女は今斧を振ったのだ。
僕には見ることもできない!!
さらに絶望的なのはヴォルフのつぶやくようなセリフだった。
「ちっ。スイングは流石に見えんか・・・」
・・・僕に見えないのは何人もいたけれどこいつの斧はヴォルフにも見えないのか!?
「避けろ!!」
叫ぶような矢撃の声にわけもわからないまま先ほどの恐怖を思い出し慌てて飛びのく。
ショニエッターから何が飛んでくるのかと飛び込みながら見ていると後ろから青い光。
気が付いたときには直径1メートルほどの青い砲弾がショニエッターを直撃。
斧を振り切ったせいで間に合わなかったのかガードもせずにぶつかった。
「・・・けむい、です。」
そう言って斧を手放した彼女は無傷。
厳密に言えば髪が少々乱れたようだ。
手櫛でどうにか直そうとしている。
逆に言えばその程度だった。
「・・・ヴォルフ。あの防御力のタネはなんだ?結界か?魔術か?」
「・・・物理、だな」
「・・・こちらとらコンクリぶち抜く威力なんだぞ?」
「知らんよ。奴の強度が上回る、それだけだ。いいか、勝つんじゃない、逃げ切るんだ。」
ただ一人動揺していないヴォルフがそう声をかける。
緊張はしているようで、掌を落ち着きなく動かしている。
「いいか少年たち。奴を倒すのはほぼほぼ不可能だ。だが、我々が明らかに勝っている点が一つある。
体重だ。」
「そ、そりゃ・・・とっ組合でもしろってか?」
そりゃ無理だろ、という感情をこめてヴォルフに問う僕。
「話せるようになっただけ上出来だぞ少年。当然つかみかかるのではなく、衝撃やウェイトが有利に働く方法で戦闘しようということだ。」
それってどういう・・・
「なるほど分かった。」
ガチリと銃口周辺を回した矢撃。
内容が分からず尋ねようとした僕はタイミングを逃した。
「吹き飛ばせばいい、そういうことだな?」
「その通りだ」
ガチリ、と銃口をショニエッターに構える矢撃。
彼女は髪を直すのに夢中で何の反応もしない。
先ほど銃口周辺を回したのが何か影響するのだろう。
直径1㎝なかった銃口が大きくなり、三センチ近い大きさになっている。
よく見ると矢撃の射撃体勢も変わっており映画などでもよくある腕で三角形を作る基本的な態勢から体重を前足に多くかけ、腰だめに近い形で銃を構える独特な体態勢へと変化していた。
しかしあんな態勢ではろくに照準はつけられないんじゃ・・・・
疑問はすぐに氷解した。
「我が血を捧げる!!」
いつもの呪文で引き金を引く矢撃。
結果はいつもとは異なった。
ヴゥオ!!という聞きなれない音。
それと同時に矢撃の銃口からはビーム状ではなく円錐状に大きく広がる青白い光が放出!!
ショニエッターの全身を覆うように、あるいはかき消すように矢撃の銃撃が彼女を直撃。
大したダメージはなく表情も変わらなかったが、結果的にその攻撃はショニエッターに対して非常に有効だった。
なぜならば彼女の体はまるで暴風に飛ばされるかのごとく足がふわりと浮き、飛び込んできた窓へと吹き飛ばす!!
彼女はそれに気が付き微かに表情を変化させるが一歩遅い!
角度を調整しながら放出し続ける青光により、ショニエッターの体は地上十三階からの空中に放り出された!
「・・・・!」
ほとんど声は出ないにしろ焦っているショニエッター。
しかし矢撃は油断なく再度叫ぶ。
「我が血を!捧げる!」
今度は短く、されど強く青光りが放出。
彼女の体が間違ってもマンションににあたることのない距離まで吹き飛ばす!!
そのまま彼女は落ちていく。
軽く息を乱す矢撃の隣に立っていると何やら声が聞こえる。
「・・・・拡散砲撃。ブラストカノン。」
ぽつりと呟く矢撃。
「いやぁ、必殺技名叫ぶタイミングはやっぱり難しいな?」
ショニエッターを撃退した英雄はやや面白そうな声色でそういった。
・・・うん。叫ぶのいいよね。
読んでいただきありがとうございました。
数日間更新できず申し訳ありませんでした。理由などは活動報告に上げましたのでここでは体調崩していたとだけお伝えします。
遅れを取り戻すべく、本日複数杯(つまり複数話)更新予定です!




