42杯目 僕と刈り取るもの
日にちが開いてしまい申し訳ありません。
まず僕は窓をたたき割りやってきた彼女・・・『処刑人・ショニッター』だったか?その姿を見る。
まず彼女はドレスだった。
その時点で、だいぶ異常で異様な光景だった。
まぁアニメや漫画、ドラマの世界。その他強いていうなら芸能界。
そのような非日常には確かに日常的にドレスで過ごす人間だっているだろう。
ただ、普段から、さらに言えば上層階、最低でも14階から飛び降りてくるときにドレス姿で動く人間はまずいないと思う。
だが、まぁいい。
コスプレ好きの超人ならばやるかもしれない。
ふつうやらないだけで、できないことではないから、異様で異常だが恐怖ではない。
だからまぁ彼女の最も得特異な点はやはりあれだろう。
小柄な体。
白い髪。
感情の薄いアイスブルーの瞳。
フリルのついたドレス。
いつの間にかその腕に握られた。
彼女の優に二倍はあろうかという巨大な斧!!
側面には精緻な文様が刻まれ、半円状からクレーターのようにボコボコと抉り取ったあとどうにか体裁だけは整えてみた、そんな歪な印象を受ける斧。
取っ手も太すぎて少女の手のひらでは一周できていない、が手の形にぴったりとフィットしたくぼみがあり、そこで掴んでいるようだ。
いや、ぴったりとしている、し過ぎている。
まるで彼女が握りつぶして合わせたかのような。
「・・・・ん。」
彼女は気合の声などださず、わずかに力を籠める、そんな動作で斧を持ち上げる。床にめり込んでいる、と思っていたのだが、どうやら異なるようで床面を水面のように波立たせながらショニッターは斧を床から引き出した。
「ショニッター、か・・・最悪ではない、最悪ではないが、限りなく最悪に近いな・・・」
ヴォルフが余裕を失った声色と表情でいう。
それでも意地なのか口の端をわずかに持ち上げ形ばかりの笑顔は保っているのは流石、か。
「ヴォルフさん、説明または弱点などの解説はもらえるのかな・・・?」
ヴォルフの様子から敵が尋常でないことを悟ったのかじりじりと交代しながら矢撃が問う。
「・・・そうだな、わかりやすいところから行こうか。」
そういうとヴォルフは背筋を伸ばし、張りのあるしっかりとした声で名乗りを上げる。
「私は裁定者第8席ヴォルフ!称号名は叩き潰すもの!我が武具は鍛え抜かれし拳也!汝名をばなんという!」
「・・・ん?」
その声に対して緊張感のない声。
「ふむ・・・汝の名を問う!」
再度ヴォルフが尋ねる。
「あ、・・・それ。しってる。ちょっと待つ。」
そういうと彼女は斧を落とす。
振動と音に警戒し防御態勢をとるが、音も衝撃もない。
不思議に思い目を開けるとショニエッターの背後で巨大な斧が刃の半分と少しほど床面に沈めた状態で浮いていた。
ちょうど水に浮かぶ氷のように。
あまりの光景に思考が停止しているとショニエッターは黒い手帳を取り出しそのページを繰り始める。
辞書並みに分厚い手帳から探すのは時間がかかるかとも思ったが存外早かった。
それだけよく開くのだろう。
「・・・あった。言う。」
開いてからこちらを見ると堂々とカンペを見ながら彼女は自己紹介を行う。
「私は、処刑人・ショニエッター。・・・えっと、たたえ号?、名は刈り取る者、と死神。あとは・・・武器。武器は・・・」
そういうと少しの間ページを繰る。
「あった。武器名『グランギニョル』形状は分類上斧。由来は・・・劇に使うみたいな・・・のと、恐怖の象徴、だからだって。」
これでいい?、と言わんばかりに首をかしげながらこちらを見るショニエッターにヴォルフは頷き持っている本をしまうように促すと、正面を向いたまま小声で話しかけてくる。
「見ての通り彼女はまだ幼い。外見年齢より精神年齢が低いぐらいだ。しかし戦闘能力は圧倒的だ。」
「強さってどのぐらいだ?ヴォルフよりも強いのか?」
正直ヴォルフは僕の中の強さのランキングでいえば格闘家とかプロレスラーを入れてもダントツの一位だ。
だから正直ヴォルフに並ぶような強さを彼女が持っているとはおもえない。
それでもそう尋ねたのはまるでヴォルフが彼女の方が上手だと認めるような発言をしたからだ。
「強い。私よりも間違いなく強い。」
しかし、だからこそ続く言葉は恐ろしかった。
「具体的に言えば私たち三人が百セットあってもけ勝てるかどうか。」
「・・・おいおいおいおい。合わせて300人いても怪しいってのか・・?」
真っ先に反応したのは矢撃だった。
しかしそれでもプレッシャーは確実に感じているようだ。
しかし彼女からはそこまでやばい感じを僕は受けなかった。
・・・確かめてみるか。
半歩踏み出し彼女に尋ねる。
「ショニエッタ、だったよね?」
「・・・・はい。そうです?」
「君のエネルギー源は何?」
「エネルギーは命。正確に言えば死。生き物の命を食べて私は生きている。」
「じゃあなんで君は僕らを倒そうとするの?」
「お仕事。しまい終わったし、そろそろやる」
そんな言葉と同時に後ろ手に斧を握る。
ひょい、とそんな動きで斧を持ち上げる。
あ、ひょっとして見た目ほど重くないんじゃ・・・
次に瞬間持ち上げた斧が彼女の肩に担がれる。
ズシン!!と音がして彼女の足元が砕けて沈み込む。
「あーー。ええっと。」
彼女がたっていても床はへこまなかった。彼女はそんなに重くない。
武器を持った。床が沈んだ。
床はそうそう足首まで沈まない。
結論。武器は超重い。
ブンブォン!と風切り音。
武器を素振りするだけで周りの物が吹き飛んでいく。
あんな重量物が風切り音がする速度でぶつかったら?
そのときちょうどてテーブルの端に『グランギニョル』がひっかっかった。
「っぅいよぉけろぉおおおおおおおお!!!」
「ぐふぁ!」
叫びながら横っ飛びに僕を押し倒す矢撃。
冗談みたいな話だがスローモーションに見える世界の中で僕は矢撃の足をかすめて飛んでいくテーブルを見た。
8人は飯が食べられるしっかりとした木製のテーブル。かなりの重さがある。一人じゃ動かせないほどの。
それが飛んでいくさまを僕は見た。見たのだが、わずか2コマだけだ。
当たる、足をかすめる、後ろで破砕音、だ。
速度?まだスローモーション中で空中にいる僕にわかるわけないだろ!!!
一瞬遅れて世界が通常速度へ。
倒れこむ僕。
「・・・失敗。ぶつけると怒られる。うちじゃなくてよかった。」
ほっとしている彼女へ感じるこの気持ち。
「こいつは・・・やばいね・・・」
矢撃の声。
やばい。とか、そういうレベルじゃないよ!と内心叫ぶ。
お互いによく動けるように痛む体は一時棚に上げ、中腰の態勢を作る。
背後に気配、と同時に声。
「・・・いいか、逃げるぞ。今この場で戦う利点がない。」
「・・・・仕方ない。賛成する。」
背後からのヴォルフの声、同意する矢撃。
僕?僕は・・・
「・・・・・シュンヤ?おまえはど・・・・・わかった。」
「え?俊也がどうし・・・・よし、逃げよう」
二人の反応を見て恥ずかしいと思ったか?
いいや全く思わないね。
誰だってこんな状況そうもなるさ。
恥ずかしくも何ともないね。
そう。
怖くないなんて勘違いだった。
彼女には殺意はない。
殺意はない、が恐ろしい!!
こえぇぇぇ!!!!!
僕は鼻水と涙と汗をだらだらとたれ流しながらともすれば吐きそうな呼吸とともにヴォルフたちになんども頷いたのだった。
お読みいただきありがとうございました。
なるべく連日更新いたしますが、今回のように空いてしまうこともあります。
申し訳ありません。
p.s
作者39度の発熱により執筆できませんでした。更新遅れており、申し訳ありません。




