41杯目 僕と新たな敵
ヴォルフがそう言った直後。
ガチャリ、と玄関が開く音がする。
ト、ト、ト、と歩く音に続けてリビングの扉があけられる。
そこにいたのはいつかのフードにバイザーをつけたいわば戦闘服の矢撃。
戦闘服を着ると威圧感のせいかやや大きくすら見える。
「それはダメだなヴォルフさん。」
「青が何の用かね。不法侵入だぞ?」
「ここの契約はうちが引き継いだからあんたに貸してるだけでうちのもんだよ。まぁそんなことはいい。」
そのままズカズカと歩き、僕に少し動くように手で伝えて来たのでどいてやると、ヴォルフの正面のソファーにどかりと腰掛ける。
「あんた、なんで今俊也を仲間に仕様とする?」
「おっとヤゲキ。それよりも先にシュンヤが不思議に思っているから聞いておこう。服装変えて来たんだな?」
急にヴォルフが僕の名前を出し矢撃位問いかける。確かに疑問に思ってたけど。
「・・・。そうだ。着替えてきた。任務に向かおうとしていたからな。そこで聞こえてきた声に慌てて戻ったってわけだ。」
「任務よりも大事かね?」
「話を逸らすな。あんたがなぜ今、仲間を増やしたがったか、だ」
コン、と軽く拳でテーブルを打つ矢撃。
「ふむ。それはな・・・」
「正直に言えよ?ある程度は俺たちもつかんでいる。いや、こういうべきだな。裁定者第八席ヴォルフ!青との同盟において意図的な虚偽を言わないことをここに誓ってもらおう!」
「名を用いた制約儀式か・・・。」
「昨日結んだ同盟、いや不可侵条約である程度契約のラインができているからできる方法だけどな。契約罰則は特になし。ただし契約魔法が切れるから虚偽の発言していたことだけはバレる。」
「致し方ない。誓おう。」
キィン・・・と少し離れたところから澄んだ音がする。
「う、ん?これは契約術具か?しかも遠隔で発動か。念入りなことだな。」
「それだけあんたは信用ならないってことだよヴォルフ。」
「私はほとんど嘘なんてつかないんだがな。まぁいい。正直にいうとしよう。」
少年、と再び声をかけられる。
手で近くに呼ばれたため近くによる。
そうしてベッドサイドからこの町の地図を出し話を始める。
青い円が書いてあり、ちょうどこの町の主要な建物が入る程度の大きさになっている。
半径五キロってとこか?
「この青い円、直径4キロほどが防衛士の結界だな。」
いや、うん。1キロぐらい誤差だよね。
「俺たちの情報勝手に言われるとここまるんだけど。」
「少し調べればわかることだ。そもそも円形に張るから縁まで行って接線を描き、垂線を引くだけで大体どのあたりにいるかバレるんだ。少しは形を変えるなどできんのか。」
「効率的だろ。それに向かってくるのを待ってんだからいいんだよ。」
「それで破れていては元も子もないがな。」
「何が言いたい?」
「二人とも話進めてくれないか?」
白熱してきた話をさせぎって先を促す。
実はもう時計は20時を過ぎて間もなく21時になるところだ。悠長にしている暇はない。
二人は顔を見合わせるとややニヤリとする気配。
「仕方がない。臆病者の優位に免じて。」
「わかった。休戦だな。臆病者の勇気に免じて」
こいつらいまだに俺がビビりながら話してるのわかってやがった!!
「この結界の範囲外に異常な力を感じたのが昨日だ。本来なら我々が隠す、というかわざわざ振り撒かない超常の力をこれでもか、とまき散らしていた。」
「それは報告が来ていないな。」
「当然だな。これは結界の外だ。防衛士は結界強度を高めるために内側にしか力を発揮していないのだろう?」
「ぐ・・・。」
痛いところを突かれた、という矢撃
「そして詳細はわからないがこれはおそらく黒の、私たちの機関の者だ。」
「そんなところまでわかるもんなの?正直僕は気配、とかいうものからしてわからないわけだけど。」
「シュンヤにはわかりにくい感覚かもしれんが私たちにとっては身近なものだからな。案外わかるようになるものだよ。感覚も君たち人間よりは鋭いことであるし。さらに言えば今回は自分の機関の術式であるのも大きい。」
続けるぞ、というヴォルフに頷く僕と矢撃。
「ここからは推測しかないが。おそらく・・・・・執行者が来ている。」
えーっと・・・かっこつけていったところ申し訳ないけれど。
「執行者って?」
「む?少年はいったいなんなら知っているんだ?彼女となにを話してきたんだ。執行者は書いて字のごとくだ。執り行う者だよ。」
「執り行う・・・」
「そう、機関の決定を元に刑を執行する。今回でいえば・・・」
「なんだと!?」
突然立ち上がる矢撃。
瞬間的に懐から取り出される銃。
「緊急事態だ!襲撃を受けている!!場所は上の階!」
ガシャン!!と何かが割れる音。
そこでヴォルフも何かに気が付く。
「・・・、しまった。抑えることもできたのか。」
「え?」
ヒュドッと何かがベランダに降り立った音。
「あのバカでかい気配がないから油断していた。来たな悪魔め・・・」
ガシャァァァア!!とガラスが破砕され、小柄な影が部屋にと入ってくる。
起きた現象と不釣り合いなほど小さな影。
「悪魔じゃない。・・・処刑人のショニッター・・・です。」
ビキバキと足元のガラスを砕きながらやってくる。
小柄な彼女。
「・・・順序が逆になってしまったな。少年。」
くい、と親指で処刑人を指さすヴォルフ。
「あれからエーデルガルドを逃がす、が目的だ。どうだ?協力するか?」
・・・どうするもこうするも。
思いっきり巻き込まれてるじゃんか・・・。
こうなりゃ自棄だ。
良いぜやってやる。
望んでいた女の子を助ける話だしな!!
でもまぁ、できれば逃げたい。
読んで頂きありがとうございました。
明日は投稿できないかもしれませんが、明後日には投稿する予定です。




