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36杯目 僕と曰く穢れとは。

本日複数話予定です。

亜矢は少しあきれた目で僕の方を見てきた。



「結局、あなたは勘で私の正体を見破ったってこと?」


・・・隠せたと思ったのだがばれていたようだ。


「一応言っておくけれどノートに残したメモは普通に見えるものじゃないからね?」


「そうなの?」


「それもわからない、か。才能ないわね。」


「!?」



どことなく面倒くさそうに、かつ言葉少なに亜矢の話すことを補いつつまとめるとこうなる。

あの文字は逢魔が討ちに伝わる特殊な減らず書けない墨で書いたらしい。


勿論いつも絶対に見えないわけではなく特殊な力を込めてその墨を使うことで、ある一定の条件を超えたものだけが読める字が書けるらしい。

そりゃそうだ。本当に誰にも見えないならそれはないも一緒だからな。


一定の条件とは例えば年齢が14以上。例えば逢魔が討ちだけに。例えば祓の正体を知る者だけ(・・・・・・・・・・)に。



「最も意志力なんてあやふやなもの使うからそんなに厳密じゃない。なので長時間残らない。」


「・・・」 



あやふや、ね。だから(はらえ)なんじゃないかな、というレベルでも見えてしまったわけだ。

薄かったけど。これは言わないでおこう。



「あれ?」


「何?」


「それってカンニングし放題じゃない?」


条件付けさえすれば自分以外に見えない、書き放題のインク。手足に書いておけばいくらでも・・・そういや亜矢は暗記科目がやけに・・・



「それで私の正体だったわね?」


「え?いやカンニ・・・」


「正体の話ね?」


「いやカ・・・」


「話さないわよ。」

「正体の話です!!」



亜矢の怒ったふりをしたのでこれ以上ふざけあうのはやめておく。

実際には亜矢は弩が付く真面目だからまずそういった不正はすることがないだろう。



「さて、一応名乗ろうかしら。逢魔が討ち、(はらえ)。魔術系統は『融和』『拒絶』の二系統。信仰対象は私たちの土地神。名前は自分で調べなさい。本来土地神様は住民は敬ってしかるべきなのだから。」



「自己紹介に説教が付いてくるとは思わなかったよ。」



ついでにこんなに話してくれるとも思ってなかった。

まぁ、信仰心が消えていっていることは祓としては残念なのかもな。



「続けるわ。私は物心ついたときには逢魔が討ちとしての訓練をしてたわ。なのでキャリアでいえば15年はやっているのかな。ちなみに強さでいえば上位よ?」



にやりと自慢げな顔。

珍しい表情におそらく今まで自慢したくてもできる相手がいなかったのを予感させる。

だからこんなに饒舌なのかもしれない。



「だから私は中学であなたと会った時から昨日見たいに穢れと戦っているってわけ。」


「あ、そこが分からない。穢れって何?」


「あの時言った気がするけれど。化け物よ。」



そうなんだけどそうなんじゃなくてさ・・・



「んーわかったわよ。話すわ。」


心底面倒だ、という顔。

しかし律義に話してくれる。


「穢れとは歪みを生むもの全般を言うわ。人は生きて死ぬ。その流れを歪めるものを穢れと呼ぶの。」


本来の宗教用語の穢れとはまた意味が違うから混同しないように、と付け加える亜矢。


「まだわからないな。」


「わからないなら遮らずに話聞きなさい。その穢れって呼ばれる化け物は人を食べることで力を保つものなどを言うのよ。つまり人を食べてエネルギーを取り込んでしまうの。」


「・・・」


まだわからないので黙って聞く。

亜矢に目で(さげす)まれた気がする。

できるだけ簡単に言おうと考えているのだろう。


「生きて死ぬ人の流れ、変えるのが穢れ。OK?」


「それはわかったけど、エデ・・・エーデルガルドやヴォルフを見逃した理由は?」


一瞬ピクリと眉が上がった気がするが、気のせいだろうか。亜矢が普通に話を続ける。



「あの二人は間違いなく化け物で気配は完璧に穢れだったわ」



「そうなんだ」

また気配、かヴォルフと言いエーデルガルドと言い、矢撃と言い亜矢と言い。

気配感じ取るのってそんなに一般的だっけ?

僕は全く分からないぞ。


「しかしエネルギーの補給している様子を見て、人間などの命の流れに影響を与えていないことの確認をとれたの。さらに言えば生まれつきの化け物ではないようだしね。」


「ええと、彼女らは人殺したりしないからセーフってこと?」


「はぁー・・・ま、それでいいわ。」

察し悪いあなたじゃそんなものよね、と言われる。


おおむねあってるならいいだろう?


折角の機会だからいろいろ質問してよいかと尋ねる。


「まあ貴方はなんだかんだ言ってバカではないからね。確かにあなたの周りで質問とか受け付けてくれそうなのはエディか私だものね。いいわよ。今はもう誰の敵でもないし答えてあげる。」


「助かる。」


「ノートと質問でカシ二つだからね。」


「貸しか。何させられるか不安。でもありがたく借りておく。」


貸しに関しては後で考えるとして、とりあえず質問しよう。



「あだ名で呼ぶぐらいだからエーデルガルドと仲良くなったんだよな?」


「よく気が付いたわね?仲良しよ」


言っていないが括弧つきで察しの悪いあなたにしては、と馬鹿にされている気がする。

まぁ、いい。



「エーデルガルドに関してできるだけ教えてくれ。」



「本人に・・・・聞けないの?仕方ない。私は話すの好きじゃないんだけど。あまり多くは知らないからね?」


そう前置きして亜矢はエーデルガルドの話を始めた。




結局結果が分かっていなかったけれど。ようやくわかりそうだ。


彼女はお姫様(ヒロイン)か?悪役(ヴィランズ)か?


読んでいただきありがとうございました。

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