35杯目 僕と亜矢の正体
18時。僕は自分の教室で彼女を待っていた。
しかし、予想外の問題が一つ。
「え!それでそれで!」
「うわ、まじかぁ・・・」
「いや、でもあれは田中が悪いべ?」
帰らないクラスメイト達がいた。
普段はそんなに残る生徒はいないのだが、今日に限って彼女たちは何が楽しいのかずっと話し込んでいてこちらに全く気が付かない。
いったん教室を出て、ノートをコピーしたり写せる量のものは写したり、とコンビニエンスストアや図書室で作業をして戻ってきたのが17時30分。
そのときからこの級友たちはずっと話していた。
普段ならそれなりに興味を持って聞いたかもしれないクラスメイトの田中の不思議話。
通称『田中奇跡』も今の僕にとってはいら立ちの原因にしかならない。
ドアノブもげたとか今はいいから帰ってよ!?
今度聞かせてもらうから!!
心のなかでは大声を出すが彼らには当然届かない。
それは当然、なんだけど。
30分経って、そこまで仲良くないにしても普通に話す程度のクラスメイトが教室にいて一言も話さない、なんてあるかな。
いや、話しかけないにしても一度もこちらを見ないのは不自然だ。
まるで僕が見えていないような
「あら。早いわね。」
そのとき時計がちょうど上下反対を指し、ガチリ、と音が鳴る。
同時に戸が開き現れる彼女。
普段あまり大きな声を出さないが話すときにはよく通る声。
しかしそれでもクラスメイト達は話に夢中で反応しない。
違う、そんなわけがない!気が付かないわけがない!
「何、したんだよ・・・・亜矢。」
「何もしていないわよ。ただ、私が私として存在しているという結果よ。」
クラスメイトなど視界に入らないかのように、まっすぐに眼鏡の向こうからこちらを見る亜矢。
「わけわからないね。で、亜矢。説明してくれるんだよね?」
いや、もう昨日からわかってることだからこう呼ぼうか。
「いや、こういった方がいい?祓さん!!」
「好きに呼ぶといいわ。」
かけらも動揺せず彼女はそういった。
数分すると見回りの教師が教室に来て級友たちに注意の呼びかけを行い帰宅を呼びかける。
そして僕にとっては非日常な、彼女にとっては日常といったように教師は僕らには気が付かなかった。
そうして二人っきりになって彼女は机に腰掛けると、緩やかに声を発する
。
「まず、俊也よく私の正体に気が付いたわね。」
「正直気が付いたのは昨日だよ。」
「どこで気が付いたの?自虐じゃないけれど外見からじゃわからないと思うのだけれど。」
それはまぁ。確かに。
亜矢も美人ではあるがまず身長は低い。
間違っても祓のような長身ではない。
体形も成熟した体形ではなく・・・その・・・えーっと。
そう、発展途上の美なのだ。
「その微妙な目線をやめなさい。で、なんで?」
彼女の言葉に慌てて話を始める。
「色々あるんだけど、例えば僕の名前を聞かなかったこと、ヴォルフの名前は確認したのにエーデルガルドの名前は確認しなかったこととかかな。」
「それだけで?」
まだまだある。
「いや、今日になってからは傷の詳細を聞かないだとか、若干疲れている様子があることとかも。」
「ほかにはもうない?」
「いや。最大の理由は、声だよ。いくら大人びたって言ってもその声に気が付けばあとは簡単だった。」
まぁ、口調が全然違ったから最初わからなかったけど。
さらに言えばそれでも自信なかったんだけど。
彼女の方が勝手にバレてると思ったのかあんなメッセージ書いてくれたからわかったんだけどさ。
「で、最初の質問に戻るけど。何者なのさ?祓さん?」
説明してもらおうか。
逢魔が討ち。
読んでいただきありがとうございます。
短く申し訳ありません。
昨日更新できなかった分明日複数話更新いたします。(10時開始予定)
追伸 10分ほど打っている途中のものを掲載してしまいました申し訳ありません。




