27杯目 僕と奴らと
若干のグロ描写が入ります。苦手な方はご注意ください
「はぁ…はぁ…」
パラパラと破片の落ちる音。土の舞う独特の匂い。
すべての風呂敷を投げ込み終わった僕は、息も絶え絶え、吐き気と戦っていた。
全力の運動、転げ回った平衡感覚の乱れ。
そして何よりも、緊張。
僕は今まで戦うまでの恐怖や、追われることが怖いことは知っていた。いやというほど知っていた。だから逃げて逃げて逃げて逃げてきた。
いつもそうしてきて、今回僕はようやく諦めなかった。逃げなかった。
ようやく絞り出した勇気でどうにか逃げるのを止めて、その結果。
はじめて知ったけど…攻撃した後って怖いんだな…
相手を倒しきれなかったら、攻撃される…!もう、戻れない。
ガタガタと震えと緊張による吐き気。
地面が平らかわからない様な感覚。
ふらりとしてしゃがみこみ、手をつく。
「う…。」
急激な上下に吐き気が込み上げる。
どうにか吐きはしないが気持ち悪い。
苦手な自己紹介をみんなの前でやらされている時のような、緊張による吐き気。
早く土煙よはれろ。いや、はれるな!あぁなんでもいいから早くしろよ!!
僕が吐き気と緊張でだんだんと思考がまとまらなくなる。
早くしろ!!
「俊也!下がれえええええ!!」
矢撃の叫び。
土煙が揺れる。
「え?・・・・がひゅっ!!」
首をぬるぬるとして、土まみれの腕で捕まれる。
息ができなくなる。
この異常な握力!!これはつい最近味わった!!
ネックハングツリー!ヴォルフ!?まだ生きてるのか!?
「…~~~!!--------!!!!がッ・・・・----!」
何を言っているか聞き取れない音。
腕が挙げられより苦しくなる。
ガウン!!!と銃声。腕の向かう先の土煙が吹き飛ぶ。そこにあったヴォルフの顔は少し角度を変えただけで今の銃撃によるダメージはなさそうである。
しかし、しかし顔は凄惨なものだった。
顔面の半分は焼けただれ黒い表面の皮膚の下からピンク色の肉がのぞく。
右目は熱にやられたのか白く濁り、血を吐いたのだろう口の周りは真っ赤だ。
口の中の歯も数本折れたらしく血がみるみる口の中にたまり、赤く粘度のある橋を唇の間に作っている。
紙も燃え落ちたのか灰色と黒の肌が見えるだけで顔の半分には何もなかった。
相当なダメージなのだろう筋肉がひくひくと痙攣を起こしている。
だが、それでもなおヴォルフは化け物だ!!
腕の力は強く離れない!!
「くッ!俊也を離せ!!」
ダダン!と二連撃。ヴォルフは残った左目でちらりと見ると僕の首をつかむのとは反対の手で矢撃の攻撃を弾く。
「~~~~!!うがぁ・・・・・うヴぉっ~~・・・。ーーーーーーー!!」
何か繰り返し言うヴォルフ。
聞き取ることはできない。しかし首がしまって・・・・意識が・・・・・・
澄んだ声が聞こえる。
「--------!!!!その戒めを今放たん!!」
逢魔が討ちの祓の声が聞こえると同時にパキィン!!という薄いガラスが割れるような音。
白光がヴォルフの懐から生じる、と同時に細腕がヴォルフの首をつかむ。
「シュンヤから手を放しなさい。」
一瞬遅れて全身が現れる。
細い体。ヴォルフと比べ圧倒的に小さい身体。
しかしその圧力は本物。
「~~~~!!----ごっぉ・・・わる!!」
判別しずらいヴォルフの声。
「そう。ならばいいわ。手が、離れなさい!!」
瞬撃一閃!高速で振り切った腕が僕を捕まえていた腕を切り落とす!!
「がはっ!!!ぜひゅっ!!!・・・は、ぁあ・・・」
どうにか息をしている僕の真横で彼女は、エーデルガルドは言う。
「全員集合か。今夜はパーティーね。決着をつけましょうか!!」
右腕を横に広げほんの少し上目使いに睨むように。僕をかばうように立った彼女は三人に正対した。
僕が思ったことはただ一つである。
「また、助けられる側かよ・・・・・」
覚悟を決めたのになぁ・・・・
昨日は更新できず申し訳ありません。お読みいただきありがとうございました。




