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19杯目 僕と缶コーヒーの行方。

塀の向こうはある意味望んでいた光景だった。

非日常と言えばやはりこれだろう。

住宅街(日常)の中での超人同士の戦闘。



普段なら決してみることができない、腕の一振りで電柱が折れ壁が砕ける光景。

そんな攻撃を声一つで生じる白光ではじく巫女。



彼女たちは爆音と轟音を立てながら戦闘をしていたがふいに動きを止めたエーデルガルドが声をかける。




「あなた!!なんか結界張ってるわね!!」


「ええ!当然でしょう!穢れは存在してはなりません。人の目に触れることも許しません!!!」



大声で叫びあう二人。おそらく戦闘時の音のせいで耳がよく聞こえないのだろう。そのおかげで僕にもはっきりと声が聞こえる。



「あなたは結界を張っていないようですね!!はったりでしたか!」


「ええ、そうよ!!あなたを誘い出すために言っただけ!」



おそらく先ほどの(はらえ)が出てくる前の話だろう。

しかし今話す必要があるとは思えないが。


不自然に思い二人をよく見ると微妙にお互いの視線が合っていないように見える。




「・・・なるほど。目が眩んでるわけか。」




小声で独りごちる。そろそろ二人とも視界が治ってきたようだが今度は探り合いが始まっている。




「あなた神道系でも結界、神域系みたいね。」


「私が手のうちを明かしているとお思いですか?奥の手とはつかわないから奥の手なのです。」


「隠してるまま負ける、という可能性を考えられないのかしら?」


「その心配はございません。現にあなたはどんどん衰弱し始めているではありませんか。」


「それはどうかし・・・」


エーデルガルトの姿が掻き消え地面を削りながら祓の後ろに回り込む。


「ら!!!」


声と同時に回転するようなコンパクトなフック。


「--------!!!!」


祓の鋭い叫び。何を言っているか聞き取れない不思議な響きの言葉。


ガィン!と何か固いものと固いものがぶつかったような音が響く。

一瞬固まってからエーデルガルドが飛びず去る。



「ふっ。証明されましたね。最初は二枚の結界を破り私の体に当て身代わりの札を破壊せしめた剛腕も今では一枚も破れないではないですか。」



「くぅ・・・」


ぺキ、ぺキ、と指から音がする様子を見るにどうやら怪我をして、治癒が始まっているようだ。


「では、次はこちらからまいります。・・・すぅ・・・ふっ!!」


ふわりと手を肩の高さまで上げると息を吐きながら鋭く手を下す。と同時に彼女の手元から白光がはじける。


「はぁ!!」


エーデルガルドは右蹴りで迎撃。


「はっ!!」

そのまま祓が三度手を振ると曲線を描きながら三匹の蛇のようにエーデルガルドがに白光が襲い掛かる。


崩れた姿勢からも両拳のコンビネーションで破砕。治りかけの手から鮮血が飛び散る。


それに構わずエーデルガルドが突貫。


手足の射程距離に入る一瞬前に軽く、強く二度祓が手を打ち付ける。

二度目と同時に暴風と衝撃波が走り瓦礫と埃を吹き飛ばし、エーデルガルドも地面で一回転させられる。しかし体をひねって足裏から着地しすぐさま立て直すところは流石だ。


しかさし、今の動きを見て理解してしまった。エーデルガルドは確かに弱っている。

そう、そもそも見えなかったはずの彼女の動きをこんなにもはっきり見ることができた。

その時点で(・・・・・)彼女は弱っている。


さらに言えば余裕もなさそうだ。なぜならば先ほどの手を打ち合わせる動作、柏手(かしわで)の後ちらりと祓は僕を見た。気が付いているのだ僕がいることを。

それに対して息を切らしながら祓を睨みつけているエーデルガルド。どちらが優勢なのか。僕でもわかる。




再び殴りかかるエーデルガルド。当然のように張られる結界に三度連撃。叩き割って追撃。

対応して左手を突き出す祓。その腕をダッキング!そこには隙だらけの脇腹、ではなく


「残念ですね。」


クロスするように左わきに出していた右手。白光。

今までにないほどの強烈な発光。吹き飛ばされるエーデルガルド。

それを見る僕。


さっきから僕が何をしてるか。

塀から降りたところでへたり込んでるだけさ。


覚悟は決めた。生き残るためにも遠くから攻撃できるものを用意した。

でも、早すぎる。

遅くなったといっても彼らレベルでの話だ。まだまだ人間には不可能な速度で動いている。

下手に投げるエーデルガルドの邪魔になりかねない。と、いうかそもそも当たるのか?あのスピードで戦える奴ら相手に。



凡人は見ているだけで心をへし折られる戦いだった。

わらにもすがる思いで矢撃から渡されたものに祓を倒せと祈ってみるが何の効果も示さない。

この中の液体が少し揺れるばかりで何の効果もない。

ああもう!役に立たない!!せめて祓の態勢を崩すぐらいできないものか!


こうなればやけだ!あたれぇぇぇぇ!!


心の中で叫びスチール缶のコーヒーを全力で投げる。

驚くことにほとんど思い描いた通りの軌道を描いて飛んでいく缶。


頭部に直撃コース、といったところで祓がうっすらと笑い、後ろから前に手を払う。

カクン、と角度を変え加速しながらエーデルガルドの頭部に缶は向かう!


危ない!そう言おうとしたまさにそのとき

缶はまさかの四散。


どうやら高速のジャブが缶を直撃。中身を撒き散らしたらしい。その被害を受けたのはアスファルトと。


「あら、茶色い斑点のついた巫女装束なんて初めて見たわ。」


祓。手を宙に挙げたままぼたぼたとコーヒーを垂らしている。


そしてそこでエーデルガルドは追撃を仕掛けることなく、距離を置くと僕の真横にやってくる。


「なんで逃げなかったの。」


「・・・・逃げたくなかったんだ。男の意地だ。」



「・・・はぁ、男の子ってやつは面倒なのね。」

淡々とそういうとうっすらと笑みを浮かべる。




「でも助かったわ。おかげでどうにかなりそう。見つけたわよ結界の弱点。」



どうやら彼女の反撃が始まるようだ。

お読みいただきありがとうございます。

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