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15杯目 僕と防衛士

結局家まで走って帰ってきた。


今更ながら後をつけられていないかと不安になるが、もう遅いと思い直しそのまま素直に家に入った。

見慣れた玄関が妙に愛おしく感じる。

あり得ない光景ばかり見ているので当たり前(日常)に癒される。


そこまで考えて苦笑する。


あこがれていたすごいこと(非日常)に囲まれると今度は日常が愛おしくなるとは。全く僕は意志の弱い奴だ、と。



でも、僕はもう戻らない。正直なところ僕はこれからどうしたい、とか考えがあるわけじゃない。ない、けれどこのまま頑張ればどうにかなる、気がするのだ。何かになれる気がするのだ。例えば僕のあこがれた英雄(ヒーロー)に。


そう、僕だって進歩している。例えば今日ほとんど全力に近いペースで走って帰ってきた。歩いて15分。一キロ以上。それでも僕は倒れこまずに玄関に入れた。これは少し前の僕にはできなかったことだ。

陸上の選手や、マラソンをやっている人間からすれば笑ってしまうような小さな進歩。


それでも一歩は一歩だ。停まっているわけでもましてや下がってるわけでもない。


僕は進む。そう、真実にだって突き進んでやろうじゃないか。



倒れこまないにしても乱れている呼吸を玄関で整える。ブレザーを脱ぎ、シャツの裾で顔を拭く。


疲れているし、正直熱い。だがだからこそ今なら聞ける気がするのだ。エーデルがルドの真実を。



彼女はこの時間リビングにいる。リビングで寝ていることも多いが。

大抵は何をするべくでもなくコーヒーを飲んでいる。


今日もソファーに腰掛け彼女はコーヒーを飲んでいた。


「エーデルガルド。聞きたいことがあるんだ。」



「・・・まずはお帰りなさい。それで、それは急ぎの話かしら」



「一つはわからないが急ぎ、もう一つは急ぎではないが重要な話。」



「私は居候の身。相談でも質問でも協力するわ。」


帰宅のあいさつをすますと彼女は持っていたあマグカップを置きこちらを見る



「ありがとう、では急ぎの話から。」


僕は青という組織の者に質問をされ危害を加えられそうになったことを話す。


「青・・・ね。ごめんなさい聞き覚えがないわ。何か他には特徴はなかったの?」


「特徴ね・・・全身黒ずくめ。武器が三段ロッド。飛び道具まで使ってたよ。ああ、退魔士だか防衛士だかって言ってたかな。」


「ボウエイシ・・・防衛・・・士、防衛士ね?」


茫洋と繰り返していた口調がしっかりとしたものに代わる。


「知ってるんだね?」


「ええ。おおむね退魔士と変わらない。三段ロッドや銃なんて言う現代武器を使うのは珍しいけどね。他の呼び方としてエクソシスト、とも言うわね。」


一瞬考える。なるほどね。


「あぁ、それなら知ってる。聖なる力やらなんやらで化け物を倒す奴。」


「そう。それであってるわ。つまり、私の敵。」


「・・・そう・・・だったね。」


彼女は静かに言い切る。

眼の色以外はただの外国人に見えるためついつい忘れがちになるが彼女は化け物。

世間一般でいう悪者、なのだ。


「って、そうじゃない。今ここは危険なんだろうか?」


「?ここに来たってことは倒して・・・来てるわけがないか。」


「あんな超人どもに勝てるわけないだろ!!」


勝てるわけない、といったからだろうか?彼女は一瞬ピクリ、と動いて手を止めた。

しかしそのまま腕を動かしマグカップを手に取り両手で包み込むように持つ。


「絶対ではない、けれどほぼ安全ね。」


「根拠は?」


「じゃあまずは防衛士について説明するわ。まず防衛士は守るものなの。何からかっていうと化け物、からね。守るであって攻めじゃない。彼らは決まった範囲から逸脱しない限り化け物も許容する。おそらくは日本という国のあり方ね。そこら中に化け物がいた時代があるというからね。すべてを倒す、は無理だったんでしょう。」


「つまり、悪いことをしていないから来ない、と?」


「いえ、それもなくはないのだけれど。昔の日本はよそ者に厳しいのよ。私も話でしか聞いたことないけど。だからたとえ無害なものでも怪しいのではないか、という基準で攻撃されることがある。そんな特徴もい現代に引き継いでいるそうよ。」


「じゃあ危ないじゃないか!」


「でも彼ら・・・ここでは『青』だっけ?は絶対に単独ではないはず。日本全土で協力し合ってこの魑魅魍魎の住む国を保っている。それなのに誰も来ない(・・・・・・・・・・)つまり見逃されているされている。よそ者に対して行う行動としては不自然な行動なのだけれど、そうとしか考えられない。」



「結果的に今無事だから無事、そういうことかい?」


「そういうことね。まぁ、くるとしたらすぐ来るはず。動き始めが遅いのに動き出すと早い。そういうものよ。」


納得はいかない。彼女の話はいつもそうだ。だが、この次の話はしっかり、と納得するまで聞かせてもらおう。

さて、覚悟は済んでる。


「わからないけどわかった。どうせできることもない。二つ目の話、質問をさせてもらう。」


彼女はは先ほど握りこんだマグカップを飲み干すと静かにテーブルに戻す。そして目線をあげ菫色(すみれいろ)の瞳でまっすぐに僕を見る。


「どうぞ。」



「君は、何をする気でなんと戦っているんだ?」



君は僕の助けるべき相手(ヒロイン)か?悪役(ヴィランズ)か?



「答えてくれ」



もう戻れない。

お読みいただきありがとうございます。明日もこのぐらいの時間帯になりそうです。

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