9杯目 僕と力
「え?強くなりたい?どうしたらいいか?」
「辛くてもいい。僕を鍛えてくれ。」
あれから三日。考えつくした結果守る力を求めて守りたい子に鍛えてもらうことにした。
いや、うん。エディの顔もよくわかるよ?
たぶんなかなかいないし情けないよね?
でも君以外に心当たりなんかないんだよ・・・。現代日本でそこらへんに強い人なんていないんだよ!道場とかじゃに合わないだろうし。
「頼む!!なんでもする!!きつくてもいい!!お願いします!!」
ひたすらに頭を下げる。さぁ、彼女の返答は・・・
「え?無理。」
即答だった。
「ごめんなさい。でもこれは無理なの。」
「なんで!!」
「いくらでも理由はあるけどわかりやすいところだけ一番わかりやすいのはスペックが足りない。」
「鍛える!!」
「そういう問題じゃなくて。いい?人間は鍛えても車は投げられないの。塀を爆散できないの。」
子供にに言い聞かせるような口調。
「えっと・・・」
「先に言っておくと日本人が大好きなジュージュツとかアイキだっけ?完璧なのは知らないけど、一般的に達人と呼ばれる人でも勝てない。体格で負けていても人間相手なら勝てるのかもね。でもねトラックは投げられないでしょう?」
「そういうことじゃないだろ?腕とかをとるんだから・・・」
「いいえ。同じよ。仮に私の全力の拳をあなたが真横から叩けたとして。どうなると思う?」
「そういう言い方ってことは捌けないってこと?」
「いえ。爆散する。」
・・・それは、穏やかじゃないなぁ
「昔訓練で肉の塊を殴ろうとしたことがあってね。小さいころだから外したのよ。」
外した時の話をなぜ今。
「肉は爆散したわ。」
「え?外したんだろ?」
「コートの袖があたったみたいね。」
えっとつまり
「服に触れた時点で大ダメージってこと?」
「爆散、よ。豚の骨付きもも肉より強度がないならば。」
「ど、どうすればいいのさそんなの?」
「だからどうしようもないわよ。」
僕の冒険は終わってしまった!!
「いやいや!!じゃあ何か!その不思議な力をどうにか使って戦えないかな?世界の法則の!」
「それが使えるならば今までも使えたはずです。」
二時間近く粘った結果僕でもできるヴォルフとの勝率をあげること。
「・・・・はい、コーヒー。」
「ありがとう。」
居候の食事を作って体力を回復させること、だった。
非日常ってやつも、なかなかままならない・・・・。
それでも翌朝僕はとりあえずランニングをすることにした。
何もないよりはましだろう。
最悪でも走って逃げられるように。
とりあえず初日は1時間目安で、公園まで行ってこよう。小さな公園でブランコと鉄棒しかないのだが距離がちょうどいいので鉄棒にタッチしてくるのを目標にして走ろう。
ちなみにエーデルガルドはまだ寝ている。と、いうか毎日ほとんど寝ている。まだまだ全快には程遠いらしく三週間、つまり残り二週間以上は回復にかかるそうだ。
僕のヒロイン力が留まるところを知らない。
夢の意現実から逃げるように僕は駆け出した。
たどり着いた公園。
冷たい空気。
手をつく鉄棒。
流れる汗。
泰樹。
泰樹!?
「やあ俊也。俊也もランニングかい?」
自分なんかよりだいぶ本格的なトレーニングウェアに身をつつみ片手をあげて挨拶してくる。
俊樹の家の位置は大体しか知らないけれど数キロは軽くある。
速度はわからないがまだ早朝。そんなに前に出たとは考えられない。
息すら切れていないだって・・・
「?どうしたの?」
「・・・なんでもない。」
非日常に飛び込んでみても超人になれるわけじゃない、実感したはずだったんだけどなぁ。
「今日から走り込みでもするのかい?僕も姉が起きる前に起きれた時だけ走っているんだ。朝いいよね。」
「実はちょっとだけ・・・・・じゃダメか。ちょっと死ぬ気で走りこみ、やってみるよ」
腐っていてもしょうがない。
僕は凡人。
才能なんてないし。
非日常に入っても何にも見つからなかった。
でも諦めない。そう決めた。
手始めにそうだな・・・
「じゃあ泰樹。僕は戻るね。・・・・・・全速力で。」
「え?」
「っふ!!」
地面を蹴る。風が顔を打つ。
けれどきっと自分が思うほど早くはないだろう
フォームだってきれいじゃないだろう。
体力も絶対に持たない。
もしかしたら吐くかも。
それでもいいや。諦めない、諦めない!!!
うおおおお、と心で叫び声をあげながら。僕はよたよたと家まで走り切った。
戻しはしなかった。
ぎりぎりで。
お読みいただきありがとうございました。
本日二杯目ですが短かったので本日中にもう一杯更新します。