ギルド証と同期たち
さて、朝です、ギルドの一員となる、記念の朝です
そう思いながら、気分良くギルドへ出発します
宿から出る、ボソッとしたパンと、よくわからない豚に近い味の肉を食べ、ぬるい麦茶っぽい飲み物を飲んで出発します
朝も早いし、人も少ないだろう
と、思っていた時期が、僕にもありました
所変わってギルド内、俺は人並みに押し流されている
朝早く、依頼を受けるために多くの冒険者が依頼を取り合う時間、より良い依頼を探すためか、昨日の夕方よりも人が多いように思える
さすがは冒険者といったところか、自分より背も高く、筋骨隆々な大男たちが依頼を取ろうとひしめいている
非常に暑苦しい
そんなこんなで、満身創痍になりながらも、昨日と同じ左端の受付へと到着する
受付の人も、昨日と同じお姉さんだ
「ようこそ、ヨウレン様、お待ちしておりました」
「どうも、ギルド証をもらいに来たんですが、もう出来てますか?」
「ええ、出来ていますよ、こちらがギルド証です」
そう言って、黒い板を取り出す、なんか、スマホみたいだ
「有難うございます」
「それでは、ギルド証の簡単な説明をさせていただきます」
「このギルド証には、4つの機能が搭載されています」
「一つ目は、簡易的なステータスの表示です
名前、性別、年齢、職業とレベル、一部の称号が表示され、こちらの機能は、身分証明書として使用でき、ギルド証を起動するとすぐに表示されます」
「二つ目に、依頼内容の表示です
これは、簡易ステータス画面を左から右に擦ることで表示が可能です
また、この表示は、ギルドからの正式な依頼の証明書となりますので、依頼者に会う時は必ず見せるようにしてください」
「三つ目に、討伐した魔物の記録です
この機能は、簡易ステータスの画面を下から上に擦ることで表示可能です
これは、最新の100種の魔物が記録され、討伐した魔物とその数に応じて報酬を得ることができます
ただし、依頼外の討伐はトラブルの原因になりますので、なるべく控えた方がいいと思います」
「四つ目は、ギルドへの緊急救援依頼です
こちらは、ギルド証の周囲300m以内に強大な魔力が感知された時、自動的に送られるようになっています
また、ギルド証は所有者とギルド員以外に起動できず完全防水となっているので、盗難された場合はお申し付けください
以上が、ギルド証の機能です」
「ふむ、わかりました、有難うございます」
見た目だけでなく、操作方法もスマホっぽい
早速起動して見る
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名前 ヨウレン・ミクリヤ
性別 男
年齢 16歳
職業 読書士
称号 誘われた者
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うん、これだと転移者ってバレるね
「あと、昨日転職された職の「読書士」ですが、ギルドのデータベースにない新しい職でしたので、ステータスに書いている転職条件を教えていただければ、情報料として金貨二枚が送られます、拒否も可能ですが、どうなさいますか?」
「わかりました」
そう返事して、ステータスに記載されている内容を伝える
「有難うございます、こちらが金貨二枚です」
「ああ、金貨二枚のうち一枚は支度金の方に支払っておいてください、残りの一枚は、ギルドに預けることって可能ですか?」
「はい、可能です、金貨一枚はお支払いに、残りはギルドに預金ですね、かしこまりました」
そう言って、手元の書類に色々と書き込んでいく
異世界生活2日目、借金は完済、貯金もまあまあできた
「あ、あまり吹聴したくない称号があるのですが、隠蔽などできますか?」
書類に色々書き込んでいる受付嬢に聞いてみる
「ええ、長押しすれば隠蔽するかを選べますよ」
書類を書き終えたのか、受付嬢が顔を上げていう
「ありがとうございます」
言われた通り、「誘われた者」を長押しして出たポップアップメニューから、隠蔽を選ぶ
「それでは、間も無く基本教練が始まりますので、こちらへどうぞ」
そう言われて、先ほどとは別のギルド職員に奥の部屋に案内される
そこは、元の世界の教室のような部屋で3×3列椅子と机が並んでいる、そこには、自分と同じくらいの年齢の男女七人が先に座っていた
入り口で突っ立っているわけににもいかず、俺はそそくさと空いている席に座る
そしてそれを待っていたかのように、教壇と思われる場所に立ったギルド職員の女性が話し始める、どうやら俺が最後の一人だったようだ
「それでは、全員集まりましたので、基本的な訓練を始めさせていただきます、今日から一週間の間訓練を担当する、アルムと申します」
そう言って礼をするギルド職員
「今回は、午前に魔法使用の基本となる魔力操作、午後に各自武器を使用する訓練を行います」
そう言って、薄い冊子を配る
「こちらが、魔力操作の訓練方法をまとめた、ギルド特製のテキストです、再発行は行われないので、大事に使ってください」
回ってきた冊子は、かなり上質な素材で、それなりの分厚さがあった
「魔力操作は、あらゆる魔法の行使にひつようで、魔法使いになるためには必須のスキルとなっています」
「現在魔法使いのジョブを取っている方は、知っているかもしれませんが、このスキルのレベルを上げれば上げるほど、魔力の消費が抑えられ、魔法の威力も上がります」
ほぉ、確かに魔法使いには必須か
「それでは実践、の前に、軽く自己紹介をしましょうか
ここにいるメンバーは、数少ない冒険者の同期です
今のうちに縁を繋いでおくことで、のちにパーティを組んだり、物資を融通し合ったり、情報を交換しあったりできます
冒険者としては大きな強みとなります」
そう言って、最前列の右側の席に座っている、陰気そうな男子を指す
「そこから順番に行きましょう」
と、その男子を立たせる
「キノアイト、斥候希望の戦士、15歳、成人してすぐに放り出されたので、レベルは1だ」
と、早口で簡潔に言い、座ってしまう、とっつきにくそうだな
次に、その隣にいた快活そうな女子が立つ
「私はシルヴィ、双剣士希望の戦士で同じく15歳、レベルは3よ!」
この段階でレベル3というのは珍しいらしく、おお〜という声が上がる、キノアイトとは別の方向で面倒くさそうな気配がする
次は、その隣、なんか勇者っぽい感じの金髪イケメンくんだ
「俺はグレン!片手剣使いの戦士、15歳!レベルは2だ!」
金髪なのに紅蓮とはこれいかに…なんかよくいる主人公って感じだな、最近の作品だと噛ませになるのが多いが…
次はキノアイトの後ろにいる奴だな、なんかふわっとした印象がある女子だ
「私は〜、ステレラっていうの、回復系の魔法使いで〜皆さんと同じ15歳、レベルも1よ?」
なんか色々と調子が狂うテンポで話すな…
四人目にして初の魔法職、回復魔法か
次は、その隣、なんか無駄に豪華な服を着た男だ
「僕はタルク・スティルバイト、主要武器は細剣、職は戦士、同じく15歳で、レベルは1だ」
家名持ちということは貴族?
しかし冒険者になるということは継承権が無いのだろうか?
次はなんかゴツい男
「ジェム、盾職希望、14歳、レベル1」
まさかの最年少!?そして寡黙というよりかは、どう話せばいいのかわかっていないというか、言葉が出ないというかそんな印象だ、タンク希望か
そして俺の番、
「俺はヨウレン、読書士で16歳、レベルは1だ」
みんな読書士というところで首をかしげ、16歳と聞いた時にすごく驚いた顔をしていた、まあ、ゴツい14歳の後だからだと思っておこう
決して背が低いとかそういうわけでは無い…と…思いたい…
次、席を一つ開けて窓側最後列、テンプレ魔法使いな感じのローブ女子
「我はガーネット、煉獄を司る魔法を使う魔導師、生を受け16の歳を重ね、レベルは1だ!」
なんか凄そうなのがきた、と思い基礎知識で煉獄を司る魔法を探してみたが、煉獄魔法は存在しないらしい
実際は、過去の文献で火属性の魔法を総称して煉獄を司る魔法と呼んでいたようだ
また、魔導師とは、まだ魔法使いが少ない時期に、魔法使いが名乗っていた称号で、魔法使いを表す言葉らしい
つまりただの厨二なる病だ
これで俺を含めた八人の自己紹介が終わった、なんかすごくキャラが濃い奴ばかりだが、こんなメンバーで授業というか訓練が成り立つのだろうか…
そんな不安の中、授業は始まる