始まりの街
あれから何の問題も起こらず、クローラの街に着いた
街は頑丈そうな石の壁で囲われていたが、パッと見だと継ぎ目が見当たらない、おそらく魔法の類が使われているのだろう
門には数人の兵士と思われる鎧を着た人が立っている
「おい、そこで一体何をしている?」
兵士に声をかけられる、どういう原理か、同時通訳のように聞き取れない言語と日本語が同時に聞こえ、そのはずなのにすっと理解できる
なんとも不思議な感覚に混乱していると、再度声がする
「おい?大丈夫か?」
少し心配するような声音だった、ように聞こえた
「いえ、少し混乱してしまって…」
正直に答える、自分の声は、意思に反して異世界の言語を紡ぐ
やはり奇妙な感覚だが、今は通じれば問題ない
「そうか、初めて見る顔だが、身分証明書なんかは持っているか?」
何に混乱しているのかわからない様子だったが、とりあえず仕事を続行するようだ
「ああ、いえ、少し事情がありまして、身分証明書などを無くしてしまって」
嘘は言っていない、元の世界では身分証も持っていたし、転移をした時に無くなっていたのは確かだ
何か転移者だと認めるのは悪手のような気がして、とっさに隠してしまった
「なるほど、身分証明書は無し、と」
何やら納得したような様子で呟き、手元の紙に何やら書き込む、製紙技術が発展しているのか、紙の質はコピー紙には及ばないものの、かなり良いようだ
「よし、それじゃ、確認のためステータスを見せてくれ、方法はわかるよな?」
何か、確信したような表情で言う
「すいません、わかりません」
下手なことをして怪しまれるのは下策と思い、返答する
「そうか、なら、『ステータス・オープン』と唱えてみてくれ」
…惜しかったんだな…
「ステータス・オープン」
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名前:ヨウレン・ミクリヤ
年齢:16
性別:男
職業:なし
ステータス
レベル:1
HP:40
MP:200
筋力:4
知力:20
防御:5
精神:9
俊敏:7
器用:8
スキル
魔道書庫
称号
読書家 誘われた者
可視化□
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…あれ、これ転移者ってばれね?
とりあえず、見せないわけには街に入れないので、可視化のチェックボックスにチェックを入れ、兵士に見せる
「…よし、やっぱり転移者だったんだな、特例として金貨1枚分の銀貨、つまり銀貨100枚を貸与する、形式上返さなくていいことになっているが、返さない限りこの国に縛られる事になるので、早めに返すことをお勧めする
返却は各地冒険者ギルドから受け付けているようなので覚えておくように」
やっぱばれてら
とにかく、当面のお金は手に入った
そのまま、兵士さんに宿とギルドの場所を聞き、街の中に入った
兵士さん曰く、先にギルドに加入した方がいいらしい
それに従って、俺は街に繰り出した