薬草採取(ならず)
クローラ北の平原、俺が召喚された場所
世界でも数少ない「魔物が湧かない領域」のようで、たまに周りの森から魔物が数匹紛れ込む程度で、それもすぐに駆除されるため、かなり安全な場所と言える
その平原には、様々な草花が自生していて、初心者冒険者御用達の採取スポット、なのだが…
「広すぎる上に草多くねぇか!?」
俺は叫ぶ、叫ばずにはいられない
クローラ北の平原には、一本大きな街道が通っていて、平原を東西で分断している
先には森が広がり、更にその先にクロシドという町がある
クローラからクロシドまで約100km、途中森があるものの、平原の縦幅は70kmは軽く超えている
そこに横幅が加わるのだから、その広さは伝わるだろう
そして、その平原の大半が草花に覆われている
一面緑の絨毯だ、といえば聞こえはいいが、この中から1種類の草を見つけると考えると眩暈がしてくる
魔物が湧かない領域なだけあって、何か特別な力が働いているのだろうか、普通なら希少な薬草や触媒がわんさかある
そのせいで魔力視を使用しても様々な色が混じってしまい、回復魔力を持つ毒消し草を判別することはできない
「よ…よし!じゃあ、毒消し草を探そうぜ!」
俺の叫びで、難易度を察したであろうグレンが、詰まりながらもみんなに声をかける
「手分けしたほうがいいみたいね…」
「そうだな、パッと見る限り、一定の草が群生している感じもしない、コツコツやっていくしかなさそうだ…」
シルヴィ、タルクがため息をつきながら提案する
「フッ…ただ毒消し草を見つけるだけだろう?その程度のこと、我が邪眼をもってすれば、造作もないわ!」
そう言ったガーネットが、迷いなく一本の草を抜き取る
が、それは確かに回復魔力を持っていたものの、全く別の薬草だった
邪眼とか言っていたが、魔力を判別できたあたり、ガーネットも魔力視を持っているのかもしれない
そんなことを考えながら、俺もしゃがみ込んで魔力視を使用する
回復魔力を持つ草はかなり生えているが、毒消し草の特徴を持つ草は見当たらなかった
「おっ!?これじゃねぇか!?」
グレンが毒消し草のような草を掲げている
「葉の裏をよく見ろ」
静かにキノアイトがグレンに言い、葉の裏を確認したグレンは、一瞬驚いたような顔をして、すぐに崩れ落ちた
ああ、ニセドクケシソウを引いたんだな…
その後しばらく探したが、ステレラやジェムが数本見つけた程度で、他は俺含め未だ一本も採取できていない
どうにか楽な方法は無いだろうか…
そう考えた時、俺はあるスキルを思い出した
「鑑定の魔眼」
すぐさま発動し、辺りを見回す
一面に広がるウインドウ、そこには
「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」「草」
視界が、「草」と書かれたウインドウで埋め尽くされた
どのウインドウも「草」だ
そんなことはわかっている!
そう思った瞬間、草と書かれたウインドウはすべて消えた、1つ残らず
全部消えるのかよ…ほんと草としか鑑定されないのな…
「お?これ毒消し草か?」
そう思って、近くにあった草を注視する
一応回復魔力を持ってるように見えるが…
「毒消し草のように見える草、一応回復魔力をまとっているようにも見えなくない」
パッ、と草からウインドウが現れた
いや、それさっき俺が考えたことそのままじゃないか
もしかして、と思い、少し目の前の草について考え直す
でもな…なんか葉の形が違う気がするぞ?と
すると、一旦ウインドウが消え、再度現れた
「毒消し草のように見える草、回復魔力をまとっているように見えなくもない、若干葉の形が違う気がする」
「…」
このスキル、つかえねぇぇぇ!!




