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異世界読書ライフ  作者: 白野威 藍玉
初心者訓練編
23/28

訓練5日目:試練の時

 異世界に来て6日目、今の所1/3で気絶している

 まあ、全部自業自得だけど


 今日の朝飯は、謎ベーコンに謎卵、謎野菜と固いパンだった

 やっぱり食べたことの無い味だが、妙に美味しかった



 ところ変わって冒険者ギルド、相変わらず人が多い

 中には妙に動きが早い人とか、魔法使いの格好なのに体内魔力がほとんど無い人とか、個性的な人もたくさんいるようだ


 ここまで来て気づいたのだが、マーキングの効果が切れていた、多分MPの供給が途絶えたからだろう


 人の波を越えて、いつもの教室にたどり着いた時

「30秒オーバー、遅刻です」

 アルムさんの冷たい声が聞こえた



「それでは、訓練5日目を開始します」

 アルムさんの涼しい声が、訓練の開始を告げる

どうやら軽く気を失っていたようだ、何故かいつもより視点が高く、みんなの声が遠い気がするが、問題無いだろう


眼下には倒れ伏した俺が見えるが、何も問題は無い


「残りの訓練期間は3日、それを使って、あなた方には簡単なクエストを受けていただき、そのクリアを訓練完了の証とさせていただきます」

 そう言って、一枚の紙を取り出す

「依頼人は冒険者ギルド、依頼内容は、薬草60本の採取となっています」


 薬草採取、小説では主人公の最初のクエストとなることの多いクエスト、難易度もそれなりに低いはずだ


「なお、期限は3日後の夕方、ギルドが閉まるまでとさせていただきます、そして、北の平原以外の場所へ行くことも禁じます」

 そこまで聞いて、部屋の中が安堵に包まれる

 魔物の出ない場所での薬草の採取、かなり簡単な依頼なのだろう

 そんな中、余り依頼を理解できていない者が一人


 何を隠そう、俺だ

「すいません、薬草のサンプルってもらえますか?」

 そもそも薬草を知らない俺は、意識を取り戻してすぐに、アルムさんに聞いた


 アルムさんは、受付スマイルで返答する

「いえ、サンプルはありません、が、薬草が載った植物図鑑ならあります、ご覧になりますか?」

「ああ、それでお願いします」

 そう言って、かなり分厚い図鑑を受け取る


 題名には「ギルド特製:世界の薬草名鑑」と、書かれていた

 そして、1ページ目を開いたとき、俺は呆然とした


 ーーーーーーーーーーーーーー


 目録


 第1章 薬 草:816種

 第2章 毒 草:357種

 第3章 触 媒:492種


 ーーーーーーーーーーーーーー


 …薬草多!!?

 てか分類雑過ぎない!?


 薬草の種類がこれだけあっては、どの薬草なのか判断できない、多分、一般的に薬草といえば〜だ、というものがあるのだろうけど、この世界の基礎的な知識しか持たない俺は、薬草という言葉だけでは何も察せなかった


「…すいません、今回依頼されている薬草はなんという薬草ですか?」

 わからないものは仕方が無い、アルムさんに質問を続ける


 アルムさんは、若干驚いたような顔をして

「毒消し草ですね、普通の冒険者なら、この辺りで薬草と呼ばれている草を持ってきて、1日を無駄にするのですが…」

 そうアルムさんが言ったとき、教室の空気が凍った


 なるほど、このクエスト、かなり性格の悪いものだったようだ

 おそらく、1日目は間違えた薬草の採取をさせ、2日目にこの薬草図鑑を総ざらいさせる、そして、3日目、時間に追われながら採取する

 クエスト内容の確認という重要な事を教えるための訓練、それがこれなんだと思う


 なんとか俺の無知のおかげで罠を抜けたわけだが

 普通これだけの図鑑を読み切るのは、薬草欄だけでも1日かかるだろう

 普通なら、だが


「アルムさん、この図鑑って購入できますか?」

「ああ、はい、一応可能ですが、基本どのギルドにも備えられているので、わざわざ買う人は居ないのですが…

 えっと、銀貨10枚です、一応冒険者の基本道具としてほぼ原価で売られているのですが、ギルドで無料で読める上に分厚くて重いですし、買ったって人はほとんど聞きませんね」


 ふむ、分厚さの割に安いね、これは買うしか無いでしょ!

「わかりました、他にこう言う図鑑ってありますか?」

「えっと、他にはモンスター図鑑があります、同じく銀貨10枚になりますが…」

「わかりました、両方買います」

「買うんですね…ああ、あなたは確か読書士という謎の特殊職でしたね、それを考えると…」

 最初の呆れたような声以外は声が小さくて聞こえなかったが、直ぐに元の声音に戻り、新品の図鑑を二冊持ってきてくれる

 銀貨20枚を払い、二冊とも受け取った

 残金銀貨15枚、かなりピンチだ


「で?その本で調べないといけないのはわかったけど、その本買ったのってどんな意味があるの?」

 シルヴィから質問される


「もちろん、ただの趣味だ!」

 堂々と本心を言い切る

 周りの同期からは、変人を見るような冷たい目で見られた…


「冗談だ…単純に自分の本所有する書籍なら、どこになんの項目があるか調べられるから、そのために買っただけだよ」

 心の折れかけた俺は、建前で誤魔化すことにする


 とりあえず、今は検索だ

 魔導書籍を取り出し、2冊の本を収納する

 その後、薬草図鑑を開いて、毒消し草を検索、毒消し草の項目はすぐに見つかった


「よし、今回はこの薬草を探せばいいらしい」

 みんなに毒消し草の絵の部分を見せながら言う


「ふむ、謎ことヨウレンでも役に立つことはあるのだな」

「何それ酷い!」

 そんな軽口を叩き合いながら、毒消し草の詳しい説明で午前を終えた


 なお、今日の定食は、オーク肉の生姜焼きと、トレントの葉の千切りに固いパンだった

 意外に美味しかったが、よく食べていた豚肉のような謎肉の正体がオーク肉だという事を知り、軽く絶望しかけた

 トレントの葉は、なんというか、見た目硬そうな葉っぱなのに、味は完璧にキャベツだった、結局硬かったけど


 午後からは街から出て薬草採取、俺たちの戦いは、まだ始まってすらいない!

この世界では、魔物の肉は大抵食べられます、アンデット系や毒を持ったものは例外ですが

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