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異世界読書ライフ  作者: 白野威 藍玉
初心者訓練編
15/28

蹂躙:主人公(笑)編

「さて、最後になりましたが、ヨウレンさんですね」

 アルムさんに呼ばれる

 俺には死刑の宣告にも聞こえた

 震えを抑えながら所定の位置に立ち、武器を構える

「始めっ!」

 一拍か二拍の間の後、開始の掛け声がかけられる

 ついに始まった、最も実戦に近い模擬戦


 訓練開始から今までずっと敵わないと思っていた同期たち、その全員が呆気なくやられたのだ

 そんな相手に対して、俺は平和な世界の平和な国で、のうのうと生きてきたような人間で、それ故に相手に武器を向けられる事も、武器を向ける事もなかった

 これは模擬戦だ、だけど当たりどころによっては怪我は免れられない

 そんな事が頭を巡り、足が竦む


 しかし、ここで動かなくては、たぶんもう武器は持てない、そしてこの世界で生きていく事もじきに出来なくなるだろう

 それだけは何としてでも回避する!

 そう心に決め、歯をくいしばる

「うおおおおおおらぁぁぁぁ!」

 愚直に走る

 そして、アルムさんの射程に入った

 パァン!

「ヒッ!」

 鞭が空気を切り裂く音に恐怖し、とっさに飛び退く

 怖い、容易に人を傷つける武器を向けられる事が、怖い

 一度は堪えたはずの震えが戻ってくる

 頭の中を恐怖が埋め尽くす

 勝てるわけが無い、何も出来ない

 そんなネガティブな言葉が次々と浮かぶ


 怖い、無力、無理、無駄

 そんな暗い気分が限界を超え、体から体温が抜けるような感覚がある

 そんな時、ふと、冷静になる、ネガティブな面が全て覆い尽くした時、何もかもが白黒になるような感覚


 勝てるわけが無い?

 俺より強い奴らが負けてるんだから、当たり前だろう、そいつらが一時でも諦めたか?


 何も出来ない?

 そんな事あるわけが無い、あったはずだ、誰にも原理のわからない、そんな力が


『読書魔法:再現』

 書籍に記された意味を持つ文字列を読み上げることで、その事象を再現する


 そう書かれた、ギルドのデータベースにも存在しないスキルを


 刀を鞘に戻し、利き手に魔道書籍を出現させる

 俺は読み上げる、初心者用のテキストを、そこに書かれた一文を

「『東の国に伝わる(ツルギ)「刀」、その独特の反りを利用した最速の一撃

 必要なのは力では無い、純粋な技術によって生み出される、鞘に収められた状態から放たれる一撃、あまりの速さにその技はこう呼ばれる、一閃、と』」


 読み上げる、体から魔力が抜けていく感覚、不発かと思われた

 しかし、俺の意識の外で体は動き始める

 キノアイト超える速度で走る

 そして、アルムさんの領域、威嚇するように鞭が足元を叩く、しかし俺は動じない、俺の体は動じない

 一切の意思の介在を拒む体は、身体の限界に近い力を出し、そしてその動作の感覚をダイレクトに脳に刻み込む

 領域に入ってから数回攻撃があったが、タイミングを合わせて半歩ズレるなどの技術でことごとく躱した

 残り30cm、俺の左手は鞘、右手は柄を持つ

 そこから、一閃

 1つの剣線を宙に描く

 刃引きされた刀はアルムさんの脇腹に当たり、鈍い音を立て止まる

 人の骨が折れる感覚が刀を介して伝わり、読書魔法が終わる

 その直後俺が見たのは、ギルドの戦闘服に包まれた脚、つまり、アルムさんの脚だった

 衝撃、視界が昔のテレビを乱雑に切った時のような感じに、ブラックアウトした




 目がさめる、見覚えの無い天井だ、少なくとも、異世界に来る前も、来た後もこの天井は見たく無い


 体を起こし、辺りを見回す

 後方は何の変哲も無い壁、壁紙はなく、木目が映える

 左側と前方は白いカーテン、天井の感じから見てその向こうにも空間があるように思う

 そして右方は窓、外は若干明るくなって来ている、夜明け前と言ったところだろうか、とりあえず魔道書籍を確認

 時刻は5時過ぎあたり、もう一眠り出来るな

 部屋の印象は元の世界の保健室のような感じ

 何か、ずっとサボっていたくなる雰囲気がある

 そんな懐かしいような、そうでも無いような、不思議な感覚になりながら、寝起き直後に眠気に体を任せ、二度寝する


 何かすごい大事な事してた気がするけど、それを考えるのは、起きてからで良いか…

 異世界に来てからは出来なかった二度寝を存分に堪能しましたとさ

次からしばらくアルムさん目線での武術訓練をやるとおもいます

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