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異世界読書ライフ  作者: 白野威 藍玉
初心者訓練編
13/28

蹂躙:戦士職編

武術訓練、3日目

今日も訓練所には回復魔法使いが待機している


「では、今日はあなた方がどのくらい戦えるのか、チェックしましょうか」

そう言って、アルムさんは訓練所の中央に移動し、鞭を構える


「一人ずつ順番に相手しましょう、キノアイトさん、きてください」

キノアイトを呼び出し、正面に立たせる

キノアイトが、両手に刃引きされた短剣を構えたのを見て、アルムさんは回復魔法使いに目配せをする

「用意、始め!」

回復魔法使いの合図で、最初にキノアイトが持ち前の素早さで距離を詰める

鞭が取り回しづらい接近戦に持ち込もうとしているようで、左右にステップ踏み、フェイントを織り交ぜながら突っ込む

しかし、それに対してアルムさんは、一歩も動かず鞭を振るう

振るわれた鞭は小さく畝り、キノアイトの足先の土を叩く

キノアイトはそれに対し、全く臆さず、鞭が地面を叩き、勢いが幾分劣っているタイミングを突いて、鞭の先端部分を掴む

鞭をがっしりと手に巻きつけることで、アルムさんの攻撃手段を制限することに成功する

攻撃手段を制限できれば、まだ勝機があるかもしれない、そう思ったのもつかの間

アルムさんが鞭をぐっと引っ張る

人間が、つまりキノアイトが冗談のように宙を舞った

スキルとレベル差にはどうやっても抗えないようだった

どしゃっ、とキノアイトが地面に叩きつけられる

慌てて回復魔法使いが応急処置をして、部屋の隅まで運んでいった


「次、シルヴィさん」

回復魔法使いにキノアイトが運ばれている間に、シルヴィが呼ばれ、構える

「始め!」

合図が響く、双方動かない

シルヴィも役割こそ違うが、戦闘スタイルはキノアイトと同じでスピードで敵を翻弄して、小さなダメージを重ねていくタイプのアタッカーだ

装備は一対の剣

刃渡りや厚みは片手剣には及ばないが、短剣と呼ばれるほど短くもない

そんなことを観察していると、焦れたのだろうか、シルヴィが動いた

単純なスピードではキノアイトに及ばないが、それでも地球では考えられないようなスピードで駆ける

しかも、ただ一直線にアルムさんの方へ向かうのではなく、軌道を細かく変え、ステップを踏むようにアルムさんの領域に踏み込む

キノアイトの時の焼き増しのように、足元に鞭が飛ぶが、それを横に小さくステップする事で躱す

一歩ごとに攻撃が苛烈になるが、時に避け、時に防ぎ、時に受けながら、それでもアルムさんに刃が届く距離まで近づこうとすると

あと一歩で刃が届く、そんな時アルムさんの何も持っていない手から拳が繰り出され、意表を突かれたシルヴィも、また意識を刈り取られた


「次、グレンさん」

疲れを感じさせない声でグレンを呼び、双方が構える

「始め!」

合図と共に今回はアルムさんが動く

グレンは右手に片手剣、左手に盾を持った剣士だ

ただ相手に切り込むだけでなく、盾で相手の攻撃も止めなければならない、そのことを考えて、アルムさんは攻撃する側に立ったのだろう


レベル差の影響か、グレンはアルムさんの鞭を受け止めることで手いっぱいのようで、攻撃に転じることができない

そのまま盾を取り落とすなどで何も出来ず終わるかのように思えた

「うおおおおおおおおお」

そんな時、グレンが雄叫びをあげた

同時にアルムさんの繰り出す鞭を受け流し、そのまま前に進み始めた

一歩近づくごとにアルムさんの振るう鞭は加速し、距離が70cmを切った時は、鞭を振るう手を目視する事が難しくなる程だった

残り30cm程度、アルムさんがひときわ大きく鞭を振るう

パァン!と空気を割く音とほぼ同時にグレンが吹き飛ばされる

そして、その数瞬後、ギャリン!と金属を抉る音が響く

グレンは難なく着地したが、先ほどの攻撃の影響で腕の骨に異常を感じるとのことで、降参する

アルムさんの鞭を受け止めた、と言うよりは、アルムさんの攻撃を受けた盾には、相手は革だと言うのに、大きく、獣の爪痕のような傷が残っていた


何事もなかったように、試験は続く

「次、ステレラさんは魔法使い枠ということで後回し、タルクさん」

双方武器を構える

「始め!」

タルクは細剣を使う剣士

魔力操作も使えるようで、暫くしたら魔法を覚えて、魔法と武器を両方使えるオールラウンダーを目指すらしい

細剣は突きに特化した武器と言える

もちろん斬る事も可能だがあまり向いておらず、下手な負荷をかけると折れたり曲がったりしてしまう

しかし、剣の材質によっては杖のように魔法の触媒にもできるらしく、魔法を使える剣士はよく使っているらしい


タルクは、迷うことなく一直線に突っ込む

フェイントも何も挟まない直進、その途中、アルムさんの鞭が届く範囲に入る直前、突然加速した

魔力視で見ると、魔力循環を足に施したらしい事がわかる

タルクが持つ総魔力の約半分が高速で流れる足は、魔力が筋肉の動きをサポートしより強く動かし、限界を超えた筋肉の使用によって起こる破壊を即時に回復させ、通常ではありえないパワーを吐き出す

そんな状態で残り1m、魔力が続くうちの最後の一手

それを見極めるためか、アルムさんは攻撃すらしない


タルクの身体に残った半分の魔力、その全てを右腕で循環させる

走る時より早く回転させられた魔力は、腕そのものを物理的に発光させ始める

溜めに溜められた全力の一撃、それはアルムさんを捉える、ことはなく一歩横に飛ぶ事で、容易に躱される

その後、すべての魔力を使い果たしたタルクは、魔力切れの作用で、気絶した


タルクが回復魔法使いの人たちに担がれて訓練所の端に寝かされている間に、次の試験が開始する

ここまでの連戦、アルムさんは疲れないのだろうか

「次、ジェムさん」

静かに、ジェムは大盾を構える

「始め!」

ジェムは純粋なタンク、盾職だ

身の丈ほどの大盾を構え、アタッカーよりも前で相手を抑え込む

そんな大盾だが、決して武器として使えないわけではない

大盾は、その大きさと分厚さの分重く、それ故に純粋な鈍器としても使用が可能だ


アルムさんは今までよりも強く、速く鞭を振るい、どれだけ耐えられるかを試しているようだ

ドガガガガガガガ

と、なんかもう、武器が革製だとは思えないないような重い音が断続的に鳴っている


そんな中で、ジェムが動き始める

ゆっくりとだが確実に、アルムさんの方へと近づいている

ゆっくりと、ゆっくりと、アルムさんに気付かれないくらいに近づいて行く

そしてある程度近づいた時、ジェムは勝負に出た

小さく息を吐き、盾を前に構えて突進する

鞭が振るえない距離まで近づかれたアルムさんは、シルヴィの時のように鞭を捨てて、体術に移行する

そのままジェムはアルムさんに対して、盾を使用した打撃、シールドバッシュを繰り出す

しかし、手ごたえが無い

その時アルムさんは、馬跳びの要領で盾を飛び越え、空中にいた

そのままジェムの頭に踵落としを叩き込む

ゆっくりとジェムが倒れ、俺と同期の戦士職が、全員叩きのめされた


「さて、次はステレラさんですね」

この強敵(化け物)を俺たちは倒せるのだろうか

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