魔力操作訓練2日目!
3日目
宿で出された朝食は硬いパンと豚っぽい肉の生姜焼きのようなものだった
豚肉の様なものは、豚にしては固く、イノシシにしては獣臭さがない、なんとも不思議な肉で、硬さに目をつぶれば不味いものではなかった
そんなこんなで、訓練2日目、冒険者ギルド前
相変わらずの人混みだ、しかも魔力視の影響でカラフルな靄が渦巻いている
注目して見れば、他人の体内にある魔力は、様々な色が混ざることなく渦巻いていて、それぞれの色の量にばらつきがあることがわかる
おそらく保有属性の違いとかそんな感じのものなのだろう
そんなことを考えながら、時間も迫っていたので、日本人の必殺技、前方連続チョップで人混みを通り抜けた
教室、昨日と同じ様に全員が揃っていた
「2分前ですね、まあいいでしょう」
そう言ってアルムさんが立ち上がる
「それでは、抜き打ちテストを始めます、合格条件は…そうですね、少しでも魔力を動かせること、としましょうか」
そう言って、キノアイトから順番にチェックしていく
キノアイト、目を閉じ、静かに、周りに溶け込む様に集中する、紫色の魔力が微妙に動いた
「闇魔法の一種、「隠形」を元にしていますね、合格です」
シルヴィ、余裕、みたいな顔で手を前に出すが魔力に変化なし
「魔力感知の時点でできていませんね、不合格」
グレン、うおおおおお、とか、何か新たな力に覚醒しそうな声を出していたが、魔力は微動だにせず
「こちらも魔力感知が全然できていません、不合格」
ステレラ、左手の甲に右手のひらをつけ、目を閉じる、魔力の内、ピンク色の魔力だけが左手の平に集中する
「回復魔法の基礎となる魔力集中ですね、これは厳密には回復魔法ではなく、魔力操作の一種なので、合格です」
タルク、魔力が右腕で循環する様に動く
「魔力循環ですか、瞬発的な力を増幅するのに使われる技術ですね、合格」
ジェム、根をはる様に重心を落とし、力を入れる、魔力が微妙に動いた
「これは…土属性魔法の「ウォール」を元にした身体強化ですか…?それでも魔力は動いているので、合格です」
俺、魔力が昨日の寝る前に比べスムーズに動き、右腕に集中する
「これは…ただ魔力だけが動いていますね…一応合格ですが、これだと何も発動しないはずですので、次は魔力を精製する訓練をしてみましょう」
ガーネット、右手のひらを前に向け、目を閉じる魔力の内赤色の魔力だけが右手のひらから放出される
「火属性魔法の準備段階ですね、これも魔力操作の技術なので合格です」
アルムさんが一人一人判定していく
その時に気付いたのだが、ここのメンバーには魔力に特徴があるみたいだ
アルムさんは、青色がメインで、他の色はそこまでの量はない
多分水属性を使うのだろう
キノアイトは紫が一番多く、その次に黒色、他はあまり感じられない
さっきは闇魔法を云々って言ってたし、闇属性がメインで空間魔法にも適正と
シルヴィは緑色が多く、その他はあまり無いが、赤色が若干多い気がする
緑は風属性か?ついでに多少の火属性と…
グレンは白い魔力が特に多く、後は紫を除く他の色の魔力が均等に存在していた
光メインで闇以外の全色…こいつマジで勇者なんじゃねーの?
ステレラはピンク色がメインで、次に青色が多くある、その他はほとんど無い
ピンク…昨日俺の部屋にはなかった色だが、おそらく回復属性か、後は水属性と
タルクは全色の魔力が均等に存在するが、他の人の色に比べてくすんでいる様に見える
くすんでいるというか…若干暗い感じか…強い適正では無いということだろうか?
ジェムは茶色がメインで、その他はあまり感じられない
土オンリーか、なんとも堅そうな…
ガーネットは、赤色メインで、その他はほぼ皆無だが、色は他の誰より鮮やかだった
鮮やかな赤色、それだけ強い適正ということだろうか
俺は黒色メインで、他の色はそれなりだ
空間魔法がメイン、その他も使えなくは無いって程度か…
「それでは、不合格の方には罰ゲーム、ということで」
アルムさんがそう言って、ニコニコ顔でシルヴィとグレンに歩み寄る、笑顔が怖い
シルヴィとグレンは何が起こるかわからず、首をかしげる
ガーネットは何かを察して、声を出そうとするが、アルムさんに笑顔で睨まれ、黙る
グレンたちまであと1m、アルムさんの両手に青色の靄が渦巻く
シルヴィとグレン、何かを感じ取ったのか一歩後ずさる
ガーネットが青ざめ、震え始める
アルムさんが二人の前に立ち、軽く心臓の下あたり、ちょうど魔力の塊がある辺りに軽く触れる
アルムさんの手に渦巻いていた魔力が収束し、圧縮され、爆発する様にグレンたちの背中まで貫通する
ガーネット、目を逸らす
そしてシルヴィとグレンは
「「グフゥッ!!」」
すごい声とともに崩れ落ちる
「これは、魔力操作を使用した体術の一種、魔力撃です
魔力を練り上げて、それを相手の魔力に叩きつけることで、防具やステータスを無視してダメージを与えることができます」
崩れ落ちた二人をスルーして、アルムさんが解説する
二人とも痙攣してるけど大丈夫なのかな…
「それでは、訓練を始めましょう」
やはり二人はスルーされて、訓練が開始する
そういえば、右腕に魔力を流すのには成功したのに、魔力痕が発動しなかった、アルムさんには精製を訓練する様に言われたが、そもそも精製が何か分からない
確か魔法使いの二人は特定の魔力だけを抽出して動かしていた…あれが精製か?
そう思い、単一の魔力、自分のメインと思われる黒色の魔力のみを意識して、それだけが右腕に流れるイメージをする、昨日の夜に魔力を動かそうとした時のように動かない
繰り返す、動かそうとするものの、乾いた砂が手のひらから零れ落ちるような感じで霧散していく
繰り返す、さっきよりも多く動かせたが、それでもすぐに霧散する
繰り返す、繰り返す、繰り返す…
体がだるくなってきた、一旦中断して、ステータスを確認してみる
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名前:ヨウレン・ミクリヤ
年齢:16
職業:読書士
ステータス
レベル:1
HP:40/40
MP:5/200
筋力:5
知力:20→21
防御:5
精神:9
俊敏:7
器用:8
スキル
一般
魔力操作lv.1
固有
魔道書庫lv.2
魔道書籍
蔵書
特殊
魔眼lv.2
魔力視の魔眼
鑑定の魔眼
魔力痕
右腕(時空属性)
読書魔法
再現
称号
読書家 誘われた者 魔力の深淵に触れし者
可視化□
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やけにスムーズに魔力を動かせると思ったら、魔力操作が取得できていた様だ
だが、今注目するべき場所はそこでは無い
MPがかなり減っている
多分、動かそうとした後の霧散した分が消費されたのだろう
そんな事を考えながらMPの回復を待っているうちに、午前の訓練が終わった
結局シルヴィとグレンは午前中に目覚めることはなかったので、昼飯を食べさせるために叩き起こす
「「はっ、あれが魔力だったのか(ね)!」」
二人ともあの魔力撃で何かに気づいたらしい
…魔力に直接攻撃食らったんだから当たり前か
ガーネット曰く、魔力が把握できない奴には、ああやって魔力に直接刺激を与える方法がとられることが多いらしい
その上、熟練の魔法使いレベルの魔力操作が出来ない限り完全には防御出来ないらしく、ガーネットも師からよく食らわされていたようだ
なんでも、魔力撃は魔力に直接攻撃する技なだけあって、HPも減らないし、傷が残ることも無いから、罰には丁度良いらしい
そんな感じで、講習2日目午前は無事終了して昼食の時間
その日のギルドの定食は、牛肉ステーキの様なものだった
「おお〜ミノタウロスステーキか!豪華だな!」
勇者っぽい奴がなんか言っている気がするが、きっと幻聴だろう
現実から目を逸らして食べたステーキは、勇者が豪華と言うだけあって、とても美味しかった
知らなければ、もっと美味しかったんだろうな…