プロローグ
眼が覚めると、見慣れた天井は姿を消し、雲ひとつ無い青空が広がっていた
「…夢…だよな?」
最初にそんなことが浮かんで、頬を抓ってみる
痛い、明晰夢か?
とりあえず、あたりを見回してみる
草原、としか表現できない
地面には背の低い草が生え、遠くには森が見える
パッと見た限り、道のようなものは見当たらない
そして少なくとも、今まで自分の目では見たことの無い光景だった
そんな中、ぽつんと一人、俺だけがいた
下手に動いて迷子になったら元も子もない
おとなしく、最後の記憶を思い出してみようと試みる
ゆっくり、青空を見上げ、硬直する
さて、とりあえず、記憶の中の最後の朝から…は遡りすぎだな
最後に夕方学校から帰ったあたりから思い出そうか
自室で制服を脱ぎ、ハンガーにかける
そのあと、こたつで寝転がりながら買いだめてあった小説を読んで夕食までの時間を潰して
で、夕食を食べてから、入浴を済ませ、ベッドでネット小説の最新話を漁ったんだったか
それで、何か新しい小説を探していて…そこからは思い出せないな…
ということは、その小説を読んでいるうちに寝落ちか?
なんか他にもいろいろしたはずなのだが、思い出せない、とにかく、最後の行動は読書らしい
と、ここまで冷静を装って考えていたが
どう頑張っても、今、目の前に広がる光景はごまかしようが無い
太陽が、二つあった
「ああ、ここ異世界か」
俺、御厨 黝簾は、確信した