就職難で生きるのがつらい
魔王(とりあえず就活を始めたけど、魔法使いとしては最低限のことしかしてこなかった私が卒業間近になって動いたところで、雇ってくれるところはなかなか見つからなかった)
魔王『……就職決まらずに卒業したら、実家を継ぐなんて、言わなければよかった……』
魔王(大手ギルドや国仕えのエリート魔法使いになりたかったわけではなかったけど、一般職などの魔法とは完全に離れた職種にも就くつもりはなかった。私はまだ、死霊使いの道を完全に諦めきれていなかった)
魔王『普通の死霊使いの人たちは自分でつくった死霊体とちゃんと話はできているようだし、やっぱり私の方で何か間違いを……って、いけないいけない。とりあえずは就職先を決めないと……』
魔王(魔法学校には求人の掲示板があったが、卒業一ヶ月前で未だにそこを見ているのは私ぐらいであり、他の生徒はすでに就職先が決まった、もしくはもう諦めたかのどちらかだった)
魔王『……ん?』
魔王(それらの中から、魔法に関わりがあり、かつ比較的自由な時間がとれる職業を探していくうちに、ある求人が目についた)
魔王『『死霊使い募集中』……? ……いやいや、ないない。そ、そんな都合のいいものがあるわけないじゃない』
魔王(たしかにそう書かれていた求人を常識が否定する。変な団体などからの求人だったら学校が弾いているからありえないけど、誰かがいたずらしたというのならまあ、ありえなくはないと思う)
魔王『だ、第一、求人場所も連絡先なんてないし、面接も毎週土曜の日の入りに迷いの森入口って、明らかにふざけているじゃない。全く、いたずらでももう少しましにできないのかしら?』
魔王(後から考えると、恥ずかしくてたまらないこの時の私の様子を、誰にも見られることがなかったのは本当に幸運だったと思う)
魔王『ま、まあ、でも、土曜ならどこも面接やってないし、ちょうど迷いの森の薬草を補充する時期だったし、たまには散歩もしなければ体に悪いし……』
魔王(いろいろ見苦しい言い訳をしながら自分の部屋に戻り、とりあえず今週のカレンダーの土曜日に花丸をつけた私であった)