夢破れて生きるのがつらい
魔王『ねえ、お母さん。どうして、私にはお父さんがいないの?』
母『……っ、ごめんね、ごめんねっ!』
魔王(私が死霊使いになろうとしたきっかけは、物心つく前に亡くなった父と、話がしたかったから……だったような気がする)
『……死霊使いの一団が捕まったってよ』
『またなの? いいかげんにしてほしいわね、あのインチキ集団』
魔王(ただ、世間では死霊使いは表立って目指せるような職業ではなく、私は魔法使いになるための学校に通った)
先生『君たちがここで学ぶからには、将来魔法使いとして王国のために……』
魔王(死霊使いでも、魂を操るために魔力は必要であり、汎用的な知識を得るためにも魔法使いの学校はちょうどよかった。そして、私は死霊使いの勉強を独学で始めた)
死霊使い『は、はいこれ……』
魔王『ありがとう! 読み終わったら本を返すから』
魔王(もちろん、独学にも限界があるため、数少ない死霊使いの人とコンタクトをとり、知識と腕を磨いていった。そして……)
魔王『や、やった……』
人形『う、う……』
魔王(学校を卒業する年の始めに、私の研究は実を結んだ)
魔王『私……やったんだ……! これで……』
魔王(私のやったことは誰に誇れるわけでもなかったが、このときばかりは達成感に酔っていた)
人形『あお……』
魔王『あ、ごめんごめん。初めまして、あなたのお名前を教えてもらってもいいかしら?』
魔王(人形に入れたのは、学校にいた女の子の魂。本来なら人形だから動けないし、しゃべれないけど、死霊使いの私には彼女の言葉を聞くことができる。魂がただよっているのは、何か未練があるからのはずであり、それを聞こうとしたのだけど……)
人形『ああえ……?』
魔王『……ん?』
魔王(聞こえたのは、明らかに名前ではないだろう何かの発音)
魔王『……どうしよう、何か間違ったのかも』
人形『…………あいあおう……』
魔王『え? あっ、ちょっと……』
魔王(訳も分からないまま、人形から魂が抜けていくのを感じた。抜けた魂はそのまま消えたため、未練が消えたのかもしれない。だけど、当然、納得行かなかった私はその後も何度か実験を重ねた。そして……)
魔王『…………何よ、これ』
魔王(実験を得て私がわかったことは、
・呼び出した死霊はア行しか言えない(少なくとも死霊使いにはア行しか聞こえない)こと
・死霊の声が聞けたとしても、意思の疎通はできていなさそうなこと
・魂は体にあまり長い期間はいられない(最長でも10日)ことだった)
魔王『……これじゃあ、本当にインチキじゃない』
魔王(目指していたものが大したことではないとわかり、失望感でやけ食いでもしたい気分だった。けれど、)
魔王『……就職どうしよう』
魔王(卒業まであと半年、私の就職先はまだ決まっていなかった)