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天職が魔王で生きるのが辛い

側近「それでは魔王様、本日もよろしくお願いしますね」


魔王(その後、なんやかんやで卒業までに就職が決まらなかった私は魔王として働くことになった。

   職場は魔王城……なんて大層なものではなく、いくつかの廃城を転々としている)


魔王「今日はいくつやればいいんですか?」


側近「そうですね、本日のノルマは500体といったところでしょうか」


魔王(魔王の仕事が人間を滅ぼすこと……なんてことだったらさすがに就職しなかったけど、幸いにも私が仕事として行っていることはそんな物騒なことではなく、皮肉にも私が望んでいた仕事だったりする)


『あれ? ここは……?』


魔王「目を覚ました? ここは廃墟なんだけど、あなた自分のことはわかる?」


『うん。私は村人娘A。この近く……かはわからないけど、A村に住んでいるのだけど。あなたは?』


魔王「私は……」


側近「この方は魔王様。あなたをよみがえらせたお方です。

   あなた、自分の最期は覚えていますか?」


『私の最期? ……! あっ、そうか、私崖から足を滑らせて死んだんだ……』


側近「思い出したようですね。あなたの魂がこの世にさまよっていたので、一時的によみがえらせていただきました。ちゃんと冥界まではいけますか?」


『……はい。ありがとうございます』


側近「お礼なら魔王様に言ってください」


『そうですね。魔王様、ありがとうございます』


魔王「いえ……その、向こうでも元気でいてくださいね……って、冥界で元気でっておかしいですか?」


魔王(何度経験しても亡くなった魂を冥界に送るさいになんの言葉を言ってあげるべきなのかいつも悩むけれどうまく言えない)


『ふふっ、最近の魔王様ってとてもお茶目なんですね。なんか普通の魔物より人にそっくり』


魔王「えっ、そうですか!?」


『あっ、もしかして人に似ているって失言でした? そうでしたらごめんなさい』


魔王「そ、そんなことないですよ い、いやーよく言われるんですよね。はははは」


魔王(私には変装のための魔法がかけられており、普段周りから見ると普通の魔物のように見えるらしい。

   これは、側近さんが私が人間であることを隠すためにやってくれたことであり、まわりにばれないように注意も受けている。

   私も命知らずではないため、自分が魔王であることを言いふらすことはしないが、まわりに人間みたいと疑われることが多々あるので気を付けなければならない)


『あなたみたいな魔王様の下だったら私も今度は魔物に生まれてもいいかも。本当にありがとう。さようなら……』


魔王「さ、さようなら……」


魔王(煙のように天に昇っていく魂をその場で見送る。魂が抜けた人形は再びぐったりとしていた)


魔王「……冥界ってどんなところなんでしょうね?」


側近「さあ? 私は生きているので興味がありませんね」


魔王(この仕事の取りまとめ役をやっているのに、側近さんの考え方は非常にドライだ。これが社会人ということなんだろうか?)


側近「それより魔王様、また蘇生した魂に話しかけましたね。復活直後の魂は定着が不安定だから危険だって言ったじゃないですか」


魔王「す、すみません」


竜姫「まあまあ。魔王がそないなことやるのは最初からなんやから、しゃあないんちゃう?」


側近「竜姫! あなたは自分の仕事は終わったんですか?」


竜姫「ぼちぼちや。それより側近そんなん怒ってばかりだと顔のしわが増えるで?」


側近「な、なんですってー!!」


竜姫「やばっ、ほんまに怒らせてもうた。魔王逃げるで」


魔王「わ、私もですか!?」


魔王(側近さんが依代をつくって、竜姫さんが魂を集め、私が蘇生する。

   三人しかいなくて、とても慌ただしい毎日だけど、そんな日が私は嫌いではなかった)

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