Intent 9
遅くなってしまって申し訳ございません。
ブクマ評価感謝です。
次回の投稿も二日後を予定しています。
ミカンからの報告を受けたリュークと俺は地下道を走っていた。
【IGO】のフィールドには幾つか地下道が存在するフィールドがある。俺達が勝負しているフィールドも地下道が存在する少ないフィールドだ。地下道の入り口を知っている人は少なく、情報公開はしないのがルールとなっている。誰もが知っていると地下道の意味が無くなるためだ。焦っていたリュークもすぐに落ち着き地下道を使ったと言う結論に辿り着き、俺達も地下道を利用してミカン達の場所に向かっている。
「あのおっさん達も地下道知ってるとはな…」
「バカだと油断してたわ…でも地下道の入り口モニターに映されるのに使うとか結局はバカだな」
「でも、そのお陰で俺らも地下道使えるんだから別にいいだろ」
雑談をしながら地下道を走り始めて五分程で分かれ道が見えた。
どっちかは全然違う場所に出て、もう片方はミカン達のすぐ近くに出ることが出来る。
二手に分かれるのも一つの手だが、リュークがミカン達の方に続く道を進んだ場合確実に四人ともやられるだろう。俺一人でも勝てないわけではないが、隠れられたら探すのが面倒になる。それに不意の攻撃で対応出来なかったらそこでゲームオーバーだ。確率的には半分半分だが違った時の事を考えると二手に分かれるのは得策ではない。二手に分かれるのが無理だとするとやはりどっちかに賭けて二人で行くしかない。
「ユキ……左で行くか」
「いや、俺は右だと思うぞ」
綺麗に意見が分かれた。昔もそうだった。こんな分かれ道があった時綺麗に意見が分かれたことがあった。昔からこう言う時は意見が合わない。一度もあったことがない。
俺とリュークは睨み合い、そっと腰に手を沿える。そして少しの沈黙が流れる。
「覚悟はいいか?負けても泣くなよユキ」
「それはこっちの台詞だ」
「「……せーの!じゃんけんポン!!」」
俺はグーを、リュークはパーを作る。
悔しさに肩を震わせながらリュークの顔を見てみると、「ふっ」と鼻で笑う。
毎回俺はリュークにじゃんけんで負ける。別に毎回同じのを出してるわけでもないのにこう言う大一番で勝てたことがない。
「よし!左だな!行くぞユキ」
「分かってるよ」
リュークは満面の笑みで暗い道へ走り出す。俺は悔しさを滲ませながらリュークのすぐ後ろをついていく。
ピンチだと言うのにリュークの足取りは軽いように見える。
「なんで俺はお前に勝てないと思う?」
「それは俺が強運の持ち主だからだな」
リュークは走りながら胸を張っている。
正直言ってそれはないと思う。今まで何回じゃんけんを何回したか知らないが、どの勝負も一発で負けている。運でもさすがにありえないと思う。
じゃんけんについて考えながらひたすら走ること七分程で地上への階段に辿り着いた。
「さぁ、お前の選択は間違っていたって事が証明されるな」
「そんなの上がってみるまで分からないだろ?」
緊張感が無いまま階段を登る。階段を登りきり今まで映っていなかった地図が映し出される。地下道にいる時は地図が表示されない。だからじゃんけんなんかで分かれ道を決めた。
地図を確認するとミカン達は反対方向にいる。俺はミカン達のいる場所の確認を終えると、次はリュークを見る。目を細くして、睨むようにリュークを見る。リュークは俺と目が合わないようにそっぽを向いている。
「俺の意見を聞いてたらもっと近くに出れたのにな」
「うっせ。俺が勝ったんだから文句は言われたくないぞ」
「たまあには俺に合わせてくれよ」
「それはこっちの台詞だ」
俺とリュークは急いでミカン達の所へ向かわなきゃいけないのだがお互いに目を見詰め合う。
他から見たら少女と少年が戦場で愛を育んでいるように見えるのだろうか。当事者の俺からしたら、お互いの目の間には雷がバチバチと走っている。
「これが終わったらもう一度勝負だ」
「いいぜ。どーせ俺が勝つけどな」
『何語ってんのよ!早く助けに来てよ!』
地下道から出たことにより今まで切れていた通信が繋がっていたようで、くだらない俺らの話を聞いていて我慢が出来なかったらしい。俺とリュークは軽く返事をして、今居る場所を後にする。
「ミカン後何分くらい持ちそうだ?」
『ルルの射線から外れながらの射撃でルルも手が出せないでいるの。それに少しずつ距離を詰められているわ。もう十分も持たないと思うわ』
通信で聞こえてくる戦況は大分ピンチらしい。俺らにしても今いる場所からミカン達の場所までは最低でも十五分は掛かる。このままだとミカン、ユーリンがやられてから駆けつける事になる。正直言って島原以外は出来るだけやられないで終わりたいと俺は思っている。
《移動速度上昇》はリミッターを一定のLvを超えると一時的に外すことが出来る。そうすれば十分以内に間に合うことは出来るが、リミッター解除時間を過ぎると急激に移動速度が遅くなり、ミニガンのいい的となってしまう。リミッターを解除をするならリミッターの限界がくる約十分以内に決めなければ俺らの負けとなる。
「はぁ……」
今日何度目の溜息だろうか。自分の溜息の数に呆れながら覚悟を決める。
腰にぶら下がっているフォトンソードを二本手に取る。【IGO】の通常売られているフォトンソードは斬るよりも打撃に近い。斬ろうとしても切断は滅多に出来ず、HPも全損するまで至らない。しかし、《近接武器作成》スキルを使えば切断をすることが出来、HPを全損することができるフォトンソードを作ることが出来る。
二本のうち、一本は通常のショップで買うことの出来るフォトンソード。もう一つは《近接武器作成》スキルで改良をした、紙を何枚か重ねた程度の薄い白い光の刃のフォトンソード。
「じゃあ行ってくるわ」
「まぁ無理だったら潔く諦める……」
さっきまで明るい顔をしていたとは思えない程暗い顔をしてしまっているリューク。俺は何も声を掛けずリュークに背を向けて《移動速度上昇》スキルのリミッターを解除する。
リミッターを解除すると、一瞬だけ足元から風が上空へと吹きぬける。これがリミッターを解除した合図だ。
フォトンソードを手に持ち、光の刃をだす。
そしてレーダーに映るミカン達の方角へ駆け出した。