Second Life 36
お待たせしました。
短めです。
エレナさんに連絡を入れると一時間後になると言われ、俺達はその間最近あった事について花を咲かせた。
そして、一時間ほど経った頃俺達のいる個室にエレナさんがハルアさんと一緒に入ってきた。
「おまたせー」
「こんばんわエレナさん」
「やっほーエレナ」
いつものように挨拶をし、エレナさんの視線は俺達からアリアへと向いた。
「その子がユホちゃんの言っていた子?」
「はい」
「アリアと言います。よろしくお願いします!」
「よろしくねアリアちゃん。まぁ、まずはお話しよっか?」
エレナさんはアリアの前に座った。
感じとしては面接官と受験者みたいな構図だ。
アリアは面接だと思ったのか緊張しているのが分かる。
「まず、聞きたいのは生産をする上で効率を重視するか品質を重視するかなんだけど、どっちかな?」
「品質です」
迷うことなくアリアは即答をした。
エレナさんはアリアの答えを聞くと一瞬だけ口元を綻ばせるとすぐにもとの様子に戻り質問を続ける。
「それはなんでかな?」
「効率を重視するプレイヤーも多くいますが、βテストからやっている私としては新入プレイヤーが多くなる今後、能力の高い物を提供したいですし、何よりも私は上を目指したいので効率は悪くとも品質を重視してます」
エレナさんは少し考え込み、出された紅茶を一口口に含み「はぁ」と息を吐いた。
この行動にアリアには不安があるだろう。少し暗い雰囲気が出ている。
だけど心配する必要はない。
俺だけではなく、マロンもハルアさんもアリアの言葉には納得している。
理由は違えど俺達は品質を重視している生産プレイヤーだ。
当然アリアさんも。
「うんうん、合格合格」
笑顔を見せるエレナさんを見てアリアの表情は晴れていく。
「いやー、私は生産効率だけを追い求めています!みたいな子だったらどうしようかと思ってたけどよかったよ」
いやいや、絶対アリアと会った時点でそんな事を言うタイプじゃないと分かっていただろうこの人。
「あ、ありがとうございます!」
アリアは立ち上がり深々と礼をする。
これを見てマロンは、
「礼なんてしなくて大丈夫だよ。エレナは最初からアリアをギルドに誘う気でいたから」
「え?そうなんですか?」
マロンの言葉を聞き、驚いた様子を見せる。
マロンの言った事はアリア以外の全員が分かっていた事だ。
エレナさんは何かと第一印象を優先するタイプの人だ。
見た目大人しそうで、言葉遣いも良いアリアはエレナさん的には好きな人のタイプだろう。
「まぁね~。ちょっと厳格な人をやってみたかったんだよね~」
あはは、とエレナさんは笑う。
「と、まぁメンバーも揃った事だしギルドについて決めていこうか」
「まずはギルドの拠点となる場所だけど、どうしようか?」
「わたしたちだとぉ、人数も少ないし広い場所じゃなくてもいいわよねぇ~」
「まずは予算が全員でどれくらいあるか確認した方がいいんじゃないか?」
ギルドの拠点となる場所を作るには、土地を買う必要がありこの土地が狭くとも高いらしい。
それにギルドの建物も高く、ギルドを作るといっても大変なのだとか。
「うん、これだけあれば十分だよ」
「これだと厳しくないですか?」
俺達五人が出せるお金を合わせても多いとは言えない。
俺の場合はつい最近生産キットなどを新調したし材料も買い込んだためあまりなく、ハルアさんは店は賑わっているが店を出したばかりで持ち金が少ない、マロンも出せる金額一杯まで出してくれている。エレナさんは「鉱石買い込んじゃった。てっ」などと言い始めた。アリアも中々の金額を出してはくれたがそれでも土地は買えても拠点となる建物があまりにも貧相になる。
「いや、土地さえ買えれば大丈夫」
「何でですか?」
「建物は僕がやるから大丈夫!」
なぜかと悩む俺の横でマロンが立ち上がった。
「ああ、そういう事か!」
マロンの生産スキルは【木工】。
【木工】は弓や家具を作るだけではなく、家も作れる。
「流石に僕一人じゃ無理だから皆にも素材集めとか色々手伝ってもらうけど建物費としては相当削減出来るよ」
「わたしはぁ、装飾品とか作るわねぇ~」
「ハルアさん、俺にもそれ手伝わせてください」
「えぇ、一緒に頑張りましょう」
ハルアさんの作業を手伝えば俺のスキルのレベルも上げる事も出来るし、ハルアさんの技術を少なからず見ることが出来る。
色々な生産スキルに手を伸ばしている俺としては取っているスキルの専門の人との作業は知識を蓄える事のできる貴重なチャンスだ。
それに、【木工】スキルも取る良い機会かもしれないな。
マロンの仕事を少しでも手伝えばレベルは結構上がりそうだ。
「まぁ、詳しいイベントの情報はまだ分かっていないから詳細がある程度分かってから細かい方針は決めましょうか」
「そうだね。それよりもクエストをやる時の役割を決めないといけないといけないよね」
「そうだな。アリアを入れた連携とかもしなきゃいけないしな」
「じゃあ、ちょっと大き目のモンスターでも狩りに行ってみましょうか。アリアちゃんもそれで大丈夫?」
「はい」
「ハルアお店は空けても大丈夫そう?」
「えぇ、問題ないわよぉ」
「なら各自準備をして向かいましょ」




