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Second Life 30

大変遅くなりました。


ブクマ評価感謝です。

 唯姉を待つこと10分、唯姉は珍しく車に乗ってやってきた。

 唯姉は、車の運転はあまり好きじゃないらしく、実家帰ってくる時以外は基本的には乗らないらしい。



「ごめん、待った?」

 


 唯姉は申し訳無さそうに、顔を出してきた。

 


「全然待ってないから大丈夫」


「そう?待たせたんじゃないかと思って急いできたんだけど」


「安全運転で頼むよ」


「分かってるわよ。さぁ、乗ってゆきちゃん」



 車に乗ると、心地良い風が流れており、気持ちがいい。



「で、なんで今日呼ばれたのか聞いてもいい?」


「う~ん、ここで言ってもいいんだけど、話今日のメンバーは私とゆきちゃんだけじゃなくてもう一人いるから着いてからでもいい?」


「わかったよ」



 この後、目的地まで普段の事や、唯姉の仕事の愚痴などを話しながら40分走り、ようやく目的地に着いた。

 着いた場所は、いかにも高級なホテルだった。



「なにここ」



 俺は場違いな空気に圧倒されてしまい、呆然とホテルを見上げた。

 唯姉はここには何度も来た事があるようで、「どうしたの?」とこちらをクスクスと笑いながらホテルへと入っていく。

 先に行ってしまう唯姉を慌てて追う。



 ホテルの中に入ると、やはり豪華だった。

 ラウンジの天井は高く、天井の中心には煌びやかに光り輝くシャンデリアがある。

 壁にも豪華さを醸し出す装飾がしており、ラウンジにいる人もいかにもどこかのお偉いさんのような人ばかりだ。そんな中に俺みたいな子供がいると場違い過ぎて、逃げたくなってくる。



 俺は、おどおどしながら受付へと辿り着いた。



「あの~、織咲ですけど」


 

 唯姉はいつもと変わらずに受け付けの人に声を掛けた。



「はい、お話は伺っております。右手のエレベーターから上へ向かってください」


「分かりました。ありがとうございます」


「さ、ゆきちゃん行くよ」


「う、うん」



 今唯姉がとてつもなく大人に見える。

 指定されたエレベーターまで行くと、エレベーターガール?みたいな人がエレベーターを開けてくれており、唯姉は会釈をして乗り込んだ。

 俺も唯姉を真似して会釈をして乗り込んだ。



「なんで唯姉はこんなに慣れてるの?」


「まぁ、時々ここには足を運ぶからね」


「へぇ……」



 本当に今日の唯姉は大人に見えるよ。


 エレベーターはどんどん上へと昇っていき、8階で止まった。

 エレベーターから廊下へと出ると、しっとりとした雰囲気の空間が広がっており、等間隔で壁についているライトが落ち着いた雰囲気を出している。


 エレベータからおり、唯姉は奥へとどんどん進んでいき、一番奥の部屋で止まった。


 コンコンとドアをノックすると、「どうぞ」と透き通るような綺麗な声が返ってきた。

 返事が返ってきてから唯姉は扉の開けた。



扉を開けると、部屋の中央に豪華な装飾がなされたテーブルが長方形のテーブルが一つに、向かい合うように白いソファが置かれており、右側のソファにすらっと伸びた黒髪が綺麗な女性がティーカップを片手に座っていた。



 女性はこちらに顔を向けて、微笑と俺達をソファに座るように促した。

 ソファはふんわりとしていて、包まれるような感覚がある。



 この世にこんなに素晴らしいソファがあるんだな……

 


 ソファの素晴らしさに浸っていると、女性の方から口を開いた。




「久しぶりね唯。3ヵ月ぶりかしら?」


「えぇ、丁度3ヵ月くらいかしらね。元気にやってた美香?」


「この通りよ」



 二人はニコニコとお互いの近況を確認している。



「まぁ、近況報告はここらへんで終わりにして、美香そろそろ本題に入りましょう」


「そうね。今回は唯本人と唯の弟君二人に頼みたいことがあるのよ」


「あ、あの~、まずあなたはどちら様か聞いていいですか?」


「あっ、ごめんなさいね」



 美香さん?と呼ばれていた人は絵に描いたように、忘れていた事を思い出したかのように口に手を当ててみせた。



 第一印象は可憐で優雅な人だった。でも、今のしぐさ一つで小悪魔っぽさを感じた。普通、こんなあざといことをしたら引くのが普通だが、この人がやると全くあざとさがなかった。



「私の名前は、朝向(あさむき)美香。唯のお友達よ。よろしくね」


「朝向美香さんですね。織咲雪穂です。こちらこそよろしくお願いします」


「自己紹介も済んだし、今日呼ばれた用件を聞いていい?」


「そうね。あまり時間も無いし、用件を済ませましょうか」




 美香さんは少しの間を置いてから、口を開いた。




「二人とも、私とギルドを組まない?」



 ギルド?何の話だ?

 美香さんは俺の思っている事を察したのか、理由を話してくれた。



「唯は分かってると思ってるけど、私の言うギルドと言う話はSLOでの事よ」


「SLOでギルドですか?」


「そうよ。運営からは、サービス開始後、初のイベントをやるともう発表されたわ。恐らく、イベント終了後には第二陣プレイヤー達もSLOの世界に来るわ。その時にギルドを設立しといた方が今後効率の良いレベリングに、素材の収集、情報の共有が出来るわ。だから、二人には私とギルドを作って一緒にイベントを迎えて欲しいのよ」



 美香さんの言う第二陣プレイヤーと言うのは、初回生産発売でSLOを手に入られずに、再販の人たちの事だ。俺らは第一陣プレイヤーは第二陣プレイヤーよりも良い狩場を見つけ、効率良いレベリングが出来る。そのため、第二陣のプレイヤーを先導する事ができ、下につけることも簡単と言うわけだ。


 このような感じはIGOでもあった。

 FPSはソロでもある程度までは強くなれるが、SLOのようにRPGはソロでの攻略は、低レベルでは不可能に近い。そのため、パーティーを組むか、ギルドに入り効率の良いレベリングに入れてもらえるのが普通だ。



 普通(・・)ならだ。この選択は今後のプレイに関わってくる。RPGなら尚更だ。

 ある程度のレベルでギルドに入り、性に合わなかったら抜ける事は簡単だが、最初に入るギルドは友好関係を築き、友好関係を広げなければならない。そのため、簡単に抜けるとぼっち生活が近付く。




「………う~ん」


「その話は悪いけど受けれないわ。少し前にβテストでの友人に誘われちゃったのよ」


「……そう。それならしょうがないわね」



 美香さんは残念そうにしてるけれど、この人なら分かっていたのではないだろうか。

 そんな気がする。


 唯姉の方から次は俺へと尋ねてきた。



「雪穂君はどうかな?」



 正直、このことに関してはしっかり考えないと美香さんには失礼になる。

 安易に返事をする事ができない。



「まだ、決まらないみたいね」


「一つ質問してもいいですか?」


「えぇ、何でも聞いて」


「ギルドの方針を聞かせてください」




 この質問の返事で入るかは決めよう。



「SLOの完全攻略よ。最初の第一目標はイベント上位入賞。次に、エリアの攻略を進めていって、上位攻略ギルドにすることよ」


「そうですか」




 決まりだな。



「俺も、この話は悪いですけどお断りさせてもらいます」


「理由を聞いてもいい?」


「俺のSLOでのプレイスタイルはゆっくりとした攻略です。美香さんのギルドの方針とは合わなさそうです」


「……そう、分かったわ。雪穂君にも振られちゃったか~」



 美香さんは落胆した様子でソファに埋もれた。



「…すいません」


「謝らないで。一応ギルドの設立最低人数は確保してあるわ」



 抜かりの無い人だな。

 今後、イベントで手強い相手になりそうだ。



「これで私の用件は終わりよ。まだ少し時間はあるしティータイムとしましょうか」


「そうね。SLO(あっち)の話も少し聞かせて」


「いいわよ。唯の話も聞かせてね」



 美香さんの話も終わり、俺達は30分程ティータイムを満喫したのであった。





最後までお読みいただきありがとうございます。

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