Second Life 23
ブクマ評価感謝です。
遅くなってしまって申し訳ございません。
書く時間が全く無くて二週間ぶり位の更新になっていまいました。
「はぁ……はぁ……しぶといわね」
ミカンは額の汗を拭いながらこちらに怒りを見せているが、どこか余裕そうに見えるトリスティグロウ見て笑っている。
ミカンの武器はミカン自身。
イルミちゃんと同じ格闘スキルで戦うタイプだ。
スキル補助によるフットワークの軽さで攻撃を受ける回数を俺達の中では最も少なく済ませている。
それに、トリスティグロウは近距離戦闘は苦手らしくピッタリと張り付きながら攻撃をすれば何度かクリーンヒットを当てることが出来る。
けど、俺とマロンではやっぱり火力が足りないらしく、ミカンの攻撃に比べると微々たるものと言えるかも知れない。
ミカンが助けに来てくれてからもう15分は経っただろうか。
トリスティグロウのHPにはまだまだ残っている。
それに比べて、俺達は攻撃をいなしてはいるものの、削られては回復を繰り返し、持ってきているポーションももうすぐで無くなってしまう所まで追い込まれていた。
「よし、ユホやっぱ逃げよう!」
「そんなキメ顔しながらこっちを見るな。マロンが戦おうって言い出してこうなったんだからな」
「だって、もうポーションも殆ど残ってないんだよ?絶望的だよ」
「諦めるの早過ぎないか?」
「いや、ユホ。マロンの言うとおりここは一旦逃げましょう」
「ミカンまで何を言い出すんだよ!?」
ミカンの突然の発言に驚きを隠せなかった。
さっきまであんなに闘志剥き出しでトリスティグロウと対峙していたのに、いきなり逃げようなんて言われる流石に驚いてしまう。
「トリスティグロウは広範囲で戦える敵なのよ。戦闘範囲から出なければ逃げても戦闘は続いているのよ。だから、一旦距離を取って体勢を立て直すのよ」
「でも、逃げてるだけじゃ結局今と変わらないぞ」
「それでも体勢を立て直さないとこの状況は絶対に覆らないわ」
「で、で「ユホ!今はミカンの言うとおりに逃げよう」」
「………わかった」
「今は我慢しなさい。さっさと逃げるわよ」
「でも、どうやって逃げるの?」
「次あいつが突進してくる時に二人は後ろに走り出して」
「……わかった」「了解だよ」
俺は圧倒的な強さの差に、戦闘中だと言うのに込み上げてくる悔しさに戦闘に集中できないでいる。
ただ、一方的に負けるのを認めたくないだけなのかもしれない。
ただの個人的我が儘だ。けど、SLOという大切な生き甲斐で負けるのは嫌だ。
人生に負けることはある。
けど、何も出来ずに負けることだけはしたくない。
戦うと決めたなら逃げずにやれる所までやりたい。
好奇心で戦いたいと思っている。
だから、この場からただ逃げるのが嫌なんだ。
悔しさを滲ませながら、俺はミカンの言うタイミングを待つ。
「バックソエット!」
ミカンは格闘スキルの数少ない遠距離アーツをトリスティグロウの足元を目掛けて放つ。
拳から作り出された衝撃波は前足の間の地面に当たり、砂煙が舞い上がる。
「グガガァァー!」
砂煙の中から翼を大きく広げたトリスティグロウが俺たちに突進してくる。
「今よ!」
ミカンの声とほぼ同時に俺とマロンは走り始める。
「喰らいなさい!!」
ミカンは野球ボール程の大きさの黄色い球体をトリスティグロウに向かって投げた。
黄色い球体はトリスティグロウの目の前で光を放ちながら爆発する。
すると、トリスティグロウは顔を地面に叩きつけながら崩れ落ちる。
「今のうちに麓の方に走るわよ」
「「了解」」
トリスティグロウが倒れている間に、全速力で下へと走る。
走っているとモンスターに遭遇するが全部無視して、とにかく下へと降りる。
「グガガガガッッッーー!!」
走り始めて一分経った頃、トリスティグロウの物であろう雄叫びが聞こえてきた。
「流石に回復が早いわね」
「うわっ!飛んできたよ!」
マロンの言うとおりトリスティグロウは黒い翼を大きく広げ、空に浮いているのが見える。
恐らく、逃げた俺たちを探しているんだと思う。
「そこの岩裏に隠れるわよ」
他よりも大きい岩の裏に見つかる前に姿を隠し、溜息を吐いた。
「これからどうするつもりだよ」
「まずは回復しなきゃ意味無いわね」
「でもさっきと同じ結果になると思うな」
「そこが問題なのよ。今の私達じゃサポート役の魔法使いがいないから無理が出来ないの」
ここでやり過ごすか、それとも戦うか、または完全にこの山から降りるか。
逃げるのは俺がしたくないし、まず降りる前に見つかるからこの選択肢は無しだ。
ここでやり過ごすってのもいずれ見つかるし、選択肢として無いようなものだ。
結局戦う以外の選択肢は無い。
戦うとしても、ミカンの言うとおり魔法職がいないから俺達の戦闘は無理をする事が出来ない。
魔法職がいれば援護を受けながらトリスティグロウの懐に入れる。
そうすれば今までよりもダメージ効率がよくなる。
マロンが使える魔法はヘイト魔法と自身の身体強化魔法が少し使えるくらいだ。
ミカンは恐らく自分への身体強化魔法だけしか使えないと思う。
俺は使えることには使える。
最近取得した風魔法が使える。
けど、全くレベルが上がってないから援護が出来るほどの魔法を撃つことは出来ない。
風魔法が使えないとなると、俺が戦力として使える魔法はただ一つ。
星魔法。
恐らく、SLO内でこの魔法を使えるのは俺ともう一人いるかいないかくらいだろう。
でも星魔法を使えるのを俺は俺以外知らない。
このスペシャルスキルを使えばレベル差があってもどうにか出来る可能性はある。
俺は今まで目立たないようにプレイをしてきた。
けど、ここでこのスキルを使ってしまえばこのステージにいる他のプレイヤーに見られて話が広まるかもしれない。
でも、勝つにはスキルを使うしかない。
………どうすればいいんだ。
俺はどうしたいんだ?
この状況を打破したい。トリスティグロウに勝ちたい。倒して悔しさを晴らしたい。
でも使えば皆にバレるかもしれない。
迷ってる時間はもう無い。
昔の俺ならどうしてた?
昔の俺なら迷うことなく目の前の敵を倒しに行っていたはずだ。
なら今迷う必要があるのか?
………迷う必要なんてない!
今を楽しむって決めただろ!なら勝たなきゃ楽しめない。
やる事は一つだ。
決めた!!
「俺が魔法なら使える。……けど今から使う魔法は皆には秘密にして欲しい。いいか?」
「この状況をどうにか出来るならなんでもいいわよ」
「分かったよ。でもこの状況をどうにか出来る魔法なの?」
「それは……分からない。でも、可能性はある」
「ならその魔法に私は掛けるわよ」
「なら僕がひきつけるから準備宜しくね」
「あぁ」
「行くぞ!!」
「「おお!!」」
戦闘シーンは次で終わりの予定です。




