Second Life 22
更新遅れてしまって申し訳ございません。
ドドドドッッ!
砂煙を巻き上げながら、全力で山を下る二つの影がある。
「なんであんなのがいんだよ!」
「僕に聞かないで!」
俺とマロンが素材の採集を始めて一時間程経った頃、一つの大きな岩石を見つけた。
その岩石を見つけてすぐに採掘を始めた。
岩を削っていくと、中からは、赤、オレンジ、黄緑と、三色の色が綺麗に混ざった不思議な鉱石が出てきた。
掘り出そうにもその鉱石は硬すぎて、俺達が持ってきたピッケルじゃ折れてしまい掘り出す事が出来なかった。
そんな時、マロンが唐突にこう言い始めた。
「アーツ使えばこの岩割れるんじゃないかな?」
結果的には鉱石を守っていた岩を砕く事は成功した。
中からは、三十センチ程の鉱石が姿を見せた。
「これなんて鉱石だ?」
「調べてみるね」
数秒後、鉱石の鑑定が終わったマロンがこちらをガタガタと震えながら見詰めてきた。
俺はその顔にとても嫌な予感を感じながらも、一応尋ねてみた。
「これ、鉱石じゃないよ……」
「……え?」
「これ、大型モンスターの卵だよ!」
これまでは別に問題自体はない。
問題があるのはマロンが言い放った言葉だった。
「これ、大型モンスターとのフィールド制限無しの強制バトルみたい……」
俺とマロンは互いに冷や汗を掻きながらガタガタと震え合いながら、体を山の麓へ向け、全力で走り出した。
走り始めてすぐに、俺達がいた場所に弾丸のように一つの大きな影が着弾し、大きな揺れを起こした。
大きな漆黒の二つの翼。銀色に輝く鋭そうな口ばしに、ギラリと光る鋭そうな爪。毛に覆われた顔の目は左目を傷で塞いでいる。そのせいか、とてつもないくらいの威圧感を醸し出している。
尻尾は長く伸び、赤、オレンジ、黄緑色と三色の尻尾を生やしている。
四本の足は太く、見ただけで凄い脚力を思わせる程だ。
落下してきたのは、グリフォンによく似たモンスターだった。
グリフォンとキマイラを合わせたような感じだ。
グリフォンは俺達に照準を合わせ、こちらへと駆け出してきた。
「なぁ、なんでマロンはその卵持ってきてるんだよ!?」
「だって、これは卵ってなってるけど一応鉱石ってなってるから必要でしょ?」
「絶対あいつが追ってきてるのってそれのせいだろうが!」
マロンはちゃっかり卵を両手で抱え持ってきていた。
「あいつは、トリスティグロウって大型モンスターだね」
「この追いかけっこはいつまで続くんだ?」
「この山下りるまで永遠と続くよと思う」
「なら、全力で逃げるぞ!」
俺達は全速力で走るが徐々にトリスティグロウとの距離は縮まってきていた。
チラッと一瞬だけトリスティグロウを見てみると、「卵を返せ!」と怒りを示しているのが一目で分かった。
あんなのに追いつかれたら最後……HPなんて即効で無くなってしまう。
ここまでで、色々な鉱石を採掘してきたのに、ここでやられたら半分以上が手に入らなくなる。
それだけは避けたい。
頑張ったのにその殆どが無駄になるのだけは絶対に嫌だ!
こんな事を思っていても、体格差もあり、少しでもスピードを緩めたら追いつかれるだろう。
「このままじゃ追いつかれる。その卵は諦めろマロン!レベルを上げてから再挑戦すればいいだろ!」
「このタイプの素材はレアなんだよ?折角見つけたのに捨てていくなんて生産者としては出来ないよ!」
「でもこのままじゃ……」
「もう戦う以外の選択肢は無さそうだね」
「あれ生産職プレイヤー二人で倒せるのか?」
「まぁ、ダメだったら頑張って逃げよう!」
戦う気満々のマロンに対して苦笑しながらも、怒りを見せているトリスティグロウから逃げるのを止めて、向き合うように武器を構える。
改めて向かい合ってみると、体格差があって、圧力がハンパじゃない。
グググゥゥゥッッッ、と唸るトリスティグロウの口からは白い冷気のようなものが漏れている。
「これ、普通にやばくないか?」
「ちょっとやばそうだね……」
マロンも流石にやばいと思ってるのか、顔が引き攣っている。
「でも、もう戦うしかないだろ」
「僕が引きつけるから攻撃を受けないようにダメージを入れてユホ」
「了解だ!」
トリスティグロウが突進すると同時にマロンはヘイトスキルを使い、マロン自身に攻撃対象を移した。
俺は後ろに回り、攻撃を入れていく。
「ヘルエスト!」
ヘイトスキルの時間が切れそうになる度に、マロンはヘイトスキルを発動していく。
「マロンしゃがめ!」
マロンの後ろから覚えたての風属性魔法を放つ。
俺が放った風の弾はトリスティグロウの傷で塞がっている目に直撃する。
「グガガガァァッッ!!」
トリスティグロウは顔を振りながら、何度も地面を叩くように腕を振っている。
「ユホ今のうちに!」
「分かってる!!」
トリスティグロウが見せた隙に、俺とマロンは近付きアーツを打ち込んでいく。
「ストリクススラッシュ!!」
「エイスクロウ!!」
俺とマロンの攻撃が当たると、トリスティグロウはズドンッと大きな音を立てながらその場に倒れこんだ。
「ハァ……ハァ……なんと」
「グガガァ」
「まだ倒れてないよ!」
「今HP無くなんなかったか!?」
「HPの減りが早いと思ったら連続バトル式みたいだね」
「こいつ倒せるのか?」
「攻撃を喰らわなきゃいいんだよ」
「無理言うなよな」
「来るよユホ」
「うわっ!?」
ヨロヨロと起き上がったトリスティグロウの毛は真っ黒に染まっており、三本の綺麗な尾は赤黒く染まっていた。
トリスティグロウの突進はさっきまでとは比較にならないくらいのスピードだった。
俺とマロンはその速度に対応しきれずに、突進に巻き込まれて吹き飛ばされた。
ゴロゴロと転び、岩に衝突してようやく止まる事が出来た。
HPを確認してみると、安全圏にあったHPは黄色まで減っており、後少し回避するのが遅れていたらHPゲージは赤になっていたと思う。
マロンのHPを確認してみると、俺よりも防御力の低いマロンは既に赤いゲージになっていた。
「だ、大丈夫か?」
「なんとかね。でも回復する時間が欲しいかも……」
「時間を稼ぎたいのは山々だけど、今のあいつを相手に時間稼ぎを出来る気がしないな」
「……だよね」
「はぁ……」と自然に溜息が零れる。
俺とマロンが思ったことは、「もう無理」だった。
トリスティグロウのHPバーはさっきとは違い一本しかないが、今の突進で、ステータスに+補正が相当掛かっていることは分かった。
おそらく、防御だけが-補正が掛かっている。
よくある、攻撃力だけめちゃめちゃ上がって、代わりに防御力が下がるタイプの敵だ。
「悪足掻きだけでもして負けようか」
「賛成だ」
「「行くか!!」」
覚悟を決め、同時にトリスティグロウへと突っ込む。
トリスティグロウは俺とマロンを威嚇するように咆哮を上げる。
「ヘルエスト!」
ヘイトスキルにより俺から視線が外れ、マロンへと視線が移った瞬間、マロンに攻撃が行く前に攻撃を加え、俺へとヘイトを移し変える。
「グガガガガ!!」
「こっちだよ!ヘルエスト!」
「ナイスだマロン!」
攻撃を受けずつ、トリスティグロウに攻撃を加えていくが、アーツを発動するタイミングが無く、大きなダメージを与える事が出来ていない。
それと、こいつは防御力が思っていたよりも下がっていない。
「そろそろマズイな。避けるのも限度がある」
「ユホ……聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「こんな時になんだ?」
「逃げたいんだけどいい?」
「ダメだ」
「……だよね」
マロンはこんな時に何を言ってるんだか……
冗談で言ってるのか、それとも本気で言ってるのかは分からないけど、こんな事を言えるならまだなんとかなる。
……なるかもしれない。
なるかもしれないと言う、可能性があるだけで、勝てる確率なんて絶望的な確率だ。
「はぁ……なんで俺達はこんな奴と戦ってるんだか……」
今日何回目の溜息だろうか……数えるのも馬鹿らしいな。
「ユホ来るよ!」
マロンの声とほぼ同時にトリスティグロウは先程と同じように俺とマロンの間に突進してくる。
「目瞑りなさい!」
「「え?」」
どこか聞いたことのある強気な声に戸惑いながらも、反射的に声の言うとおりに目を瞑った。
外では青白い閃光が走り、目を開けるとトリスティグロウがぐったりしながら倒れていた。
「大丈夫?」
「なんでここに?」
声のする方に意識を向けた先にいたのはミカンが呆れた表情をして立っていた。
「説明は後よ!今のうちにポーション使って回復しなさい」
「やぁ、ミカン。助かったよ」
「マロンはミカンの事知ってるのか?」
「うん。僕のお得意様だよ」
「いいから早く回復しなさい。時間ないわよ!」
「助かるよ」
トリスティグロウが顔を振りながら立ち上がる時にはHPも安全圏までは回復する事が出来た。
「ここは協力してあげるわ」
「絶対勝つぞ!」
「ここまで来たら勝たなきゃね!」
ミカンも加わり、第二ラウンドが始まった。
キリが悪いですが、どうしても分けて更新したかったので分けました。




