Second Life 17
遅くなってしまって申し訳ございません。
ブクマ評価感謝です。
俺たちはゴブリン討伐を終え、NPCが開いている食事処に来ていた。
夕食はリアルでもう食べているが、ゆっくりと話すならと、ファミレス感覚で来ていた。
VR世界にも味覚はあるため、飲み物とデザートだけ頼んで席に座っている。
「じゃあまず経験値とかの前に、ゴブリン討伐を祝して乾杯!」
『かんぱーい!!!』
リュークの乾杯で祝勝会が始まる。
「まず経験値の話からするか。俺は大体1レベが上がる程度貰った。途中参加でもこれだけ貰えたなら他の皆はもっと貰えたんじゃないか?」
「いや、私はリュークさんと同じです」
「私も一緒だよ」
「私も」
「私も一緒だわ」
参加するタイミングは関係無しに殆ど同じ経験値がもらえるみたいだ。
因みに、俺はゴブリンと戦う前よりレベルが2上がっている。
「俺は皆よりレベルが低いからレベルが2上がってるぞ」
「やっぱ経験値の配分は均等みたいだな。次はドロップアイテムだな」
「《水鬼の笛》以外に皆アイテム貰ってるのか?」
「俺は素材だな。後はユホと同じ《水鬼の笛》だ」
「私もリュークさんと同じです」
「私もユカちゃんとリュークさんと同じです」
「私も一緒ですね」
「私もよ」
「ユホも少なからず素材がドロップしてるだろ?」
そっか。普通だったら素材がドロップしてるのか。
「俺は素材なんて何一つドロップしてない」
『え……?』
「その反応は俺がしたいよ」
「普通モンスター倒したら素材はドロップするぞ。稀に素材が超レアで落とさない奴もいるけど、皆落としてるから違うはずだ」
「素材がドロップしない代わりが、さっきの契約書なのかもしれないわね」
「その契約書って何なんだ?」
「契約書ってのはね、簡単に説明しちゃうとそのまんまなのよ」
「そのまんまって事は、何か契約するの?」
「そうよ。契約する対象は、おそらくあの小さな子ね」
「あの子と何を契約するんだ?」
「雇用の契約よ。SLOにはNPCを雇ったりする事が出来るの。だから、大き目の店を持つ生産職プレイヤーはNPCを雇うわよ。雇ったNPCはログインしてない間の店の接客や、生産の手伝いをさせるのよ」
「へぇ。そんな事があのチケットで出来るのか。でも、生産を手伝わせるって、ポーションとかを作らせたりとか出来たりするのか?」
「NPCにもレア度があってね、生産が出来るNPCは普通の雇用所にはいないの。ユホちゃんが貰った契約書はどれだけレアかは契約してみないと分からないわ」
「レア度が高ければ生産をさせる事も出来るのか」
「まぁ、生産NPCかはまだ分からないんだけどね」
「生産NPC?」
「雇えるNPCの殆どは接客をするタイプだけど、ユホちゃんみたいな感じで契約書で契約するNPCの中には生産NPCと戦闘NPC、それと両方をする事が出来るNPCがいるの。両方出来るNPCなんて情報だけで見たことなんてないんだけどね」
SLOのNPCの殆どは接客専門のNPCが多いみたいだ。
生産、戦闘NPCはSレア武器に相当するレア度みたいだ。両方をこなすNPCはレジェンドウェポンよりもレアらしい。
でも、NPCには戦闘をさせるプレイヤーはいないらしい。
理由としては、パーティーとして冒険した方がNPCを連れて行くよりも効率もよく楽だからみたいだ。それに、NPCは成長までに時間を相当使うらしく、武器なども契約者プレイヤーが提供しなければいけないらしい。
武器提供だけでなく、NPCには感情が存在し、NPCにもあった武器があるため、自分の欲している武器を使うNPCと契約が出来ない可能性が多いみたいだ。
契約してみたは良いけど、自分の求めていたNPCと違う場合には契約書を転売屋に売るそうだ。契約する人は少なくてもコレクターなどからは高く買い取って貰えるみたいだ。
俺は今は店を出す気も無いし、NPCを雇って冒険をしようとも思ってないからこの契約書は腐ってしまうな。
でも、売る気はない。折角あの子がくれた物だからな。売るなんて事はしない。
「この後皆はどうするんだ?」
デザートも食べて終わり、今日の話も一通り終えた。
「私達はこのまま3人でフィールドに出ようと思ってるよ」
「私は今日はもう落ちるわね。明日朝から地方に行かなきゃだから」
「俺は元々ユホとやろうと思ってたけど、丁度βテストの頃からの奴らに誘われてるからそっちにいこうと思ってる」
「分かった。じゃあ俺は1人で色々と冒険やら生産をするよ」
「じゃあ今日は解散って事で、皆お休みなさい」
「今日は助かったユリア姉ぇ」
「また困った事があったら呼んでね。出来るだけ駆けつけるわ」
ユリア姉ぇがログアウトをするのを確認してから、それぞれ店を出る。ユカ達は北の門のほうに向かい、リュークは待ち合わせ場所へと向かった。
俺は店の前で立ち止まり、何をしようか考える。
「何をしようかな」
1人でやることなんて限られてくる。
昼間ならまだ森とかに入って狩は出来るけど、今は夜だから森とかにソロで入るのは自殺行為だ。
光属性魔法とかを取得してるか、ライトを持ってないと夜の暗い場所へは行けない。
生産がしたくても、もう素材があんまり無いからろくに生産をする事も出来ない。
本当にやる事が何もないじゃないか。
「徘徊するか」
とくにやる事も無いので街の中を徘徊して回る。
昼間とはまた違う雰囲気だ。昼間にあった武器や防具の路上販売が無く、代わりにご飯の屋台が並んでいる。食事の出来る店では賑やかな声が聞こえてくる。
たまあに中年男性同士の口喧嘩からPvPへの発展があったりするが周りの人達は気にせず、逆に2人を煽っている。
一定以上の迷惑を掛けなければ、このような喧嘩はウェルカムみたいだ。
喧嘩を横目で見ながら素通りする。
喧嘩をしている場所からすぐの所の路地裏に入る。
路地裏にも人は少なからずいる。
路地裏を抜け、反対の路地に出る。
こちらも変わらず、賑わっている。
「やぁユホちゃん!!」
「ん?」
突然の呼び止めに一瞬だけビクッと肩を震わせ、声のする方を向く。
「あっ、エレナさん」
振り向くとエレナさんが、女の人1人と、男の人1人と一緒に立っていた。
「こんばんわユホちゃん。今1人?」
「そうです。エレナさんはどうかしたんですか?」
「私達は素材回収もそこそこにして、食事をしようと思ってね。ユホちゃんも来るかい?この2人も生産者だから話を聞くのも良いと思うよ。2人は大丈夫?」
「僕はいいよ。同じ仲間だからね」
「アタシもいいわょ」
「ほら、2人もこう言ってることだしどうかな?」
「なら、暇でしたし同席させてもらいます。僕の名前はユホって言います」
「ボクっ娘かぁ~。かわいぃはねぇ。アタシの名前はハルアって言うの。よろしくぅ」
「よろしくお願いしますハルアさん」
ハルアさんは、髪を腰くらいまでのウェーブの掛かった桃色の髪をしており、胸をさらけ出すように着崩している。
………めちゃめちゃエロい。
ヨコシマな気持ちを、頭を振って吹き飛ばす。
「ボクはマロン。よろしくねユホ」
「よろしくマロン」
マロンは俺と同じくらいの年齢に見えたからつい呼び捨てで呼んでしまった。
マロンの髪は名前と同じ栗色をしていて、無邪気な笑顔をしそうな顔立ちだ。
なんか、俺と同じ人種な気がするな。
「よし、自己紹介も終わったし、食べに行こうか!」
エレナさんに連れられ、俺は食事のはしごをする事になった。




