Second Life 6
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焦った顔をしながらユカ、ミーサ、イルミが駆け寄ってくる。
「大丈夫お兄ちゃん!?」
「大丈夫ですかお兄さん?」
「お兄さん大丈夫ですか?」
「三人ともそんな焦ってどうしたんだ?」
「どうもこうも木が倒れていたり、粉砕されてるからモンスターに襲われたのかと思って急いだんだよ」
あーそう言うことか。
普通こんな状態を見たら焦ってしまう物なのか。
周りの木々は俺の実験により、粉砕されていたり、根元から折れていたりしている。
けど、冷静になって考えてみたらまだここの森は最初のステージだ。だから、森を一部でもこんな状態に出来るモンスターは存在しないだろう。
「大丈夫だ。モンスターに襲われた訳じゃない。それに、もしモンスターにやられていても死に戻りするだけだろ」
「死に戻りするだけって言うけど、SLOの死に戻りはステータスの一時的ダウンは12時間もあるんだよ!?今のレベルでステータスダウンしたらろくに進めないよ」
「知らなかったよ。気をつける」
「それよりもお兄さんこの森の状態は何があったんですか?」
「うん。これは、いつの間にかこうなっていた」
「どういう事ですか?」
「いつの間にか」
「お兄ちゃん?」
俺を見るユカの目が今まで見た事ないような目をしている。
これは正直に答える以外道が無いようだ。
何年も一緒にいると直感で分かってしまうものだ。
「説明する前に一つだけ聞きたい事があるんだけど聞いていいか?」
「う~ん。それに答えたらこの状況を説明してくれるの?」
「約束する」
「ならいいよ。聞きたい事って何?」
「まず、ミーサとイルミはスペシャルスキルに当選できたのか?」
「私は当選しましたよ」
「私も当選しました」
「そっか。三人ともスペシャルスキル持ちか」
「それがどうしたの?言っとくけど、まだスペシャルスキルの詳細を言う気はないからね」
「いや、それを聞きたいわけじゃないんだ」
「じゃあ何?」
「そのスペシャルスキル名に因んだ武器や防具、消費アイテムがアイテムボックスに入ってたりしなかったか?」
「なんで知ってるの!?」
「お兄さんはスペシャルスキルを持ってないって聞いてたのに……」
やっぱりビックリするか。
まぁ当然か。スペシャルスキルを持ってない俺がスペシャルスキルを持っているプレイヤーしか知らない事を知っているのだから。
「え?ユカとミーサはそんなのあったの?」
「イルミは何も無かったの?」
「……うん」
イルミは何も無かったのか。
だとすると、運営の言っていたレア度が関係しているのだろう。
レア度が一定以上ならスペシャルスキルの名に因んだアイテムが配布されるのだろう。
「まぁ、一旦この話は置いといて、説明してよお兄ちゃん」
「あぁ……そうだったな。この状況は俺がやったことだ」
「「「えっ……」」」
だよな。こういう反応になるよな。
俺でもいきなりこんな事言われた同じ反応をする。
「えっとだな……さっきはスペシャルスキルを無いって言ったんだけど、実は俺も持っているんだ」
「なんで隠してたの!」
「それは……」
「な~に?」
こんな怖い顔見た事がないな。
さっさと白状してしまおう。
「俺の持っているスペシャルスキルがバレたら面倒な事になりそうだったからだ」
「そのスキルって何ですか!?」
「ちょっとイルミちゃん。ダメだよ所持スキルを聞くのは」
「あっ!すいません!」
「大丈夫だよ。俺だってイルミちゃんの立場なら聞いてただろうし。教える条件として代わりに三人のスキルも教えてくれるか?」
「う~ん。皆に秘密にしときたかったんだけどな」
「私はその条件呑みます」
「私もお兄さんのSS知りたいです!ユカはどうするの?」
「う~ん」
ユカはまだ悩んでいるみたいだ。
俺がユカだったら同じように悩んでいる所だろう。
好奇心に負けて自分の大切なスキルを教えてしまうか、それとも今後のプレイのために自分だけの秘密として残しておくかは大事な選択だ。
もし、ここで自分のスキルを教えてしまって、後々このことが仇となってしまうことだって十分に考えられる。
その事を十分に分かっているからこそユカはここまで悩んでいるのだ。
けど、ユカは確実に好奇心に負けてこの条件を呑んでくるだろう。
兄妹だからこそ分かる事だ。
「う~ん」
今回のユカはしぶといな。
いつもならすぐにでも好奇心に負けているのに。
それだけ、SLOを本気でプレイしようとしているのか。
「じゃあ、ユカはちょっとここにいてくれ。二人に教えるから」
ユカを置いて、ミーサ、イルミを連れてユカのいる場所から少し離れる。
「ここなら聞かれないか」
「私もユカちゃんと同じ考えはあったんですけど、私はどっちかと言うとちょっぴり生産職寄りでやっていこうと思っているので、お兄さんとイルミちゃん達に教えても今後のプレイにあまり支障はないと思います」
「私はガッツリ攻略を進めていこうと思っていますよ。もちろんユカと一緒に」
「私も冒険を一緒に進めていって、その中で生産系スキルとかで支援していけたらと思っているんです」
二人ともユカと一緒に冒険してくれるのか。
本当にいい友達を持ったな。
俺が昔やっていた頃なんてソロプレイで、恨まれてさえいたからな。
友達と仲良くゲームを進められるのは良い事だ。
「そっか。仲良くしてやってくれ」
「「もちろんです!」」
「ありがとう。そろそろ本題にいこうか」
「「はい……」」
二人ともどんなスキルが言われるか相当気になる様子だ。
人から聞く人の秘密ほど好奇心をそそられる物は早々ないと俺は思っている。
俺からしたら後2回はドキドキを味わえるのだ。
「俺の持っているスペシャルスキルは」
「ちょっと待ったーーーー!!!」
我慢できなかったか。
そわそわした様子でユカが駆け寄ってくる。
「やっぱ私も聞きたい!」
「安心しろ。まだ言ってないから」
「よ、よかった~」
「最初から我慢しないでいたらよかったのに」
「だって、自分だけのスキルなんだよ?出来るだけ教えたくないじゃん」
「そうだけど、お兄さんのスキルが気になったんでしょ?」
「……うん」
この光景を見てるだけでも分かるな。
どれだけ三人の仲が良いのか。
「三人ともいいか?」
「すいませんでした。つい夢中になちゃって」
「すいません」
「ごめんお兄ちゃん。お兄ちゃんのこと忘れてたよ」
「ユカ。お前にだけ教えないぞ」
「すいません」
「よろしい」
「さっ!教えてよお兄ちゃん」
「分かってるよ。俺の持っているスキルはな、《星月の姫》だよ」
「「「………………」」」
固まり始めてから10秒程。
最初に硬直から動き始めたのはユカだった。
「二人もちょっとこっち来て」
ユカは二人を連れて、俺に背を向ける。
「ねぇ、本当だと思う?」
「スキルの事だよね?」
「うん」
「お兄さんが嘘をついているとは思えないけど、運営があんな事言ってたから信じれないよ」
「私もイルミちゃんと同意見だよ」
「同感です」
「どうやって確認しようか」
「お兄さんに何か見せてもらうとかはどうかな?」
「例えば?」
「運営は《星魔法》があるって言ってたよね?それなら《星魔法》を見せてもらうのはどうかな?」
「それは多分無理だよ。だってお兄ちゃん魔法剣士を方針とするとは言ってたけど、《魔力》と《魔力適性》が無いと発動しないこと知らないと思うもん」
「でも森の木があんなに倒れていたりするなら、森をあんなんにした事見せてもらうのはどうかな?」
「見せてくれるかな?」
「それを見せてもらうしかないね」
「うん」
「行くよ」
「「うん」」
少ししてから三人は何かの話し合いを終え、俺の元へと戻ってきた。
「俺の持っているスキルは言ったぞ?次は三人のを教えてくれ」
「その前に一ついいかなお兄ちゃん」
「なんだ?」
「その証拠を見せて欲しいんだよ」
「証拠って《星月の姫》のことか?」
「うん……」
「ダメでしょうか?」
「いや、問題はないよ」
証拠といっても何を見せればいいだろう。
魔法は見せる事は出来ないし、《星影》も多分今の俺のLvじゃ意味が無いし。結局選択肢は一つしかないか。
「少し離れていてくれるか」
俺の言葉に従って、三人は俺から離れる。
「天星の領域」
「……すごい」
「……何これ」
「綺麗です……」
《天星の領域》が発動すると、三人はそれぞれの感想を述べる。
「一度しか見せないからしっかり見ていてくれ」
「「わかりました」」
「わかったよ」
相変わらず1本しかないスターカンナを見つめる。
スターカンナは実体化する。
「剣が浮いている……」
「……魔法?」
やっぱり驚くか。
それと、実体化させないとやっぱ他のプレイヤーには視認できないのか。
「行くぞ。しっかり見ていてくれ」
三人は剣に視線を向け、次ぎ起こる動作に反応出来るように集中している。
三人には悪いけど、全てを晒す気はない。
だから全力ではやらず、軽く見せるだけにしよう。
さっきまでいた木を的にして、スターカンナを一直線に発射する。
スターカンナは最初の頃より数倍速いスピードで木に直撃して粉砕する。
木の粉砕を確認して三人を見ると、やっぱり呆然としていた。




