Intent 3
ブクマありがとうございます。
「おい!リューク、本当にあんな奴でいいのかよ!」
島原はマッチが始まってすぐに姿を晦ました雪穂に腹をたてていた。
島原は雪穂に対して怒りを露にしていた。
島原の雪穂の印象は、元々協力する気がなく、ただの口だけ野郎だった。
そんな島原を宥める様に竜輝は声を掛ける。
「シクルド今は怒ってる場合じゃないだろ?さっさと移動するぞ」
島原は納得がいってないようだが、PTリーダーは竜輝で、竜輝のことは信頼している島原は渋々竜輝の指示に従う。
スタート時に最初の数秒だけ映し出される敵の位置を確認していた竜輝はまず接近することにした。
「敵の位置は北側の岩山ですけどどうしますか?」
敵との人数差は十二人……最初の人数は十四人だったが、まだ男達には他のメンバーが居た。作戦が上手く決まらなければ勝ち目は薄い戦い。竜輝は少し考え込んでいる。
竜輝の当初の作戦は、少人数で分かれて攻め込んでくると踏んでいたためそれを一グループずつ潰していくつもりだったが、レーダーを見るとまだ男達の位置が映し出されている。
予想通り分かれての突込みだが、数は6人ずつの三グループ。一グループだけで実質竜輝達よりも人数は多い。
「ルルは北側の辺りを見渡せる場所で敵の位置を教えてくれ。それと射程圏内で当てられる時だけ撃ってくれ」
ルルは「わかりました」とだけ答える。
スナイパーは一キロの射撃で、命中率が4割あれば凄腕と言われるほどスナイパーは扱うのが難しい。
「他のみんなは俺と一緒にばれないように近づいて不意打ちで優勢になるぞ」
竜輝達は左側から来る集団に向かって進み始めた。
一方開始早々移動を開始した雪穂は右側からやって来ている集団を見つけていた。
距離にして約四キロ先の相手を確認していた。
なぜ四キロ先の相手を視認できるかと言うと、スキル《スコープアイ》を装備しているからだ。
【IGO】でもプレイヤー装備のスキルがあり、5つまで装備することができる。
《スコープアイ》の能力は遠くを視認できること。しかしレベルを大幅に上げなければ大して遠くを見れないことからあまり装備する人がいない不人気スキル入りしている。
しかし本来見れて一キロ先が限界と言われる《スコープアイ》だが雪穂の《スコープアイ》のスキルLv82、こんなにもLvを上げている人はいない。
「不人気スキルとか皆アホだよな」
雪穂は呆れながら独り言をつぶやく。
「ガトリンガーか……」
ガトリンガーはミニガン装備の人のことを言う。ソロでは見ないが五人以上のPTでは稀に見ることもある。ミニガンは強いが、移動速度の大幅な低下、弾の値段が高く、ミニガン自体も相当高いため買う奴は珍しい。
金があるなら関係は無いが、【IGO】は金が手に入りずらいため余裕がある奴なんてそう多くはない。
「撃ち合えば厄介だけど、撃ち合わなければいい的だな」
寝そべりながらスコープを覗く。スコープ越だと更に近くによって見える。
《スコープアイ》の効果としてスナイパー使用時のスコープを覗いた時、視認できる距離が追加される。
俺の場合は最高六キロくらいまでは視認できるため、六キロの視認距離が追加される。
今回の射撃ではサイレントはわざと装備していない。
位置をばらす為だ。竜達の位置もしっかりと確認もして反対側にいることは分かっている。
「ふぅ……」
ターゲットアイコンのブレが徐々に少なくなっていく。
バンッ!
響きのいい音がフィールドに響き渡る。
俺の撃った弾丸は綺麗に標的の額を射止めていた。スナイパーによる射撃での顔へのヒットはワンキル。しかし距離が離れれば離れるほど威力が下がる。
普通ならば下がる。でも俺が使っているスナイパーは、【IGO】オリジナルのユニークウェポンの、スターズⅢ。付属効果は、《遠距離火力増加》Lv10、《射程増加》Lv8が付属されている。
武器に付属するスキルの最大Lvは10となっている。
《遠距離火力増加》は【IGO】の中でも最高位に入るレアスキル。Lv5が付属されていれば高値で取引される。Lv1につき弾丸ダメージが3%増加する。
《射程増加》はスナイパーのみに付属される限定スキル。言葉のまま射程距離が増加するするスキルとなっている。Lv1につき百五十メートルの射程増加がされる。
まぁ、射程が伸びても当たるかはプレイヤーの腕だけど……
スコープから見える光景は残った男達五人の慌てる様子。すぐに岩陰に隠れたが、焦りからか体が全部隠れきっていない。
「たまたまとか思ってるのかな」
もう一度集中をし直す。
「なにやったんだユキ!?」
「っ!?」
びびった……
聞こえてきた声は竜からだった。無線による遠距離通信システムの機能で遠くにいても会話ができるようになっているのだが、久しぶりと言うのもあったけど、集中しててからめちゃめちゃびびった。
「どうしたんだユキ!?」
反応がない俺に竜が心配そうに声を掛けてくる。
「いやただいきなりだったからビックリしただけだよ。心配かけた」
耳には竜の安堵の溜息が聞こえた。
「それで何をやったんだ?」
「いやたまたま撃ったらまぐれ当たりしただけだ。二回目はない」
「そうかナイスユキ!」
顔を見て無くても喜んでいるのは分かった。
「おう」
嬉しいものだ。自分のように喜んでくれる仲間がいるのは。今回に関しては自分のことだけど……これだから俺はゲームにはまったんだしな。
俺は声には出ないくらいで笑った。
またゲームにのめり込みそうだな……でも妹がいるからそんなことはできないけど……
「ユキ俺らも頑張るからお前も頑張れよ!」
「分かってるよ」
今は辛気臭くなるのはやめて、目の前の敵を屠るか。
俺は口元が緩んでにやけてしまった。
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