Intent 22
ブクマ評価感謝です。
目を開くとそこは今までいた鉄臭さと【IGO】プレイヤーの声が聞こえていた場所とは全く別の場所だった。
今回の大会の最後の舞台となるフィールド。
最初に始めるのは行動よりも現在位置の確認だ。マップを見ると俺のいる場所は中心の島を囲う五つの島のうちの南に位置する島だった。
周囲には南国の島に生えている様な植物が育っている。
「木の上に隠れるのは無理そうだな」
木は全て枝など一切無く、木の最長部にヤシの実がなっているだけだ。周りの木も全て同じで木の上で周囲を見て、待ち伏せは出来そうにない。
「ま、いっか。さっさと仕掛けますか」
場所を移動するのもありだが、開始早々ここから移動するのも他のプレイヤーと鉢合わせする可能性が出てくる。ならその危険性を出来るだけ少なくして、自分が今までやってきた最も得意なプレイスタイルを貫くのがここでは得策だ。
元々自分でも自覚があるくらい外道を極めているユキは、開始早々移動する気は全く無く、一定以上持っているとスピードステータスにがマイナスになる量の設置用の爆発物を持ち込んでいた。
ステータスにマイナスが生じる量を持ち込むなど、大会史上初だろう。
「ふぅ……さすがにこの量は疲れたな」
ユキが仕掛けた設置型爆発物は、ユキがいる場所を中心に半径三百メートル、百メートルと二十円を描く用に設置している。爆弾の間隔は五メートル。爆弾の真上を通っても起爆し、間を通れば二つが起爆するように設置されている。
この爆弾地獄を起爆させず俺のいる場所まで来れるのなは多分あいつしかいなだろうな。
本選出場プレイヤーの中にはあいつの名前は無かったが、名前を変えているかもしれない。だからあいつくらいしか掻い潜ってこれないように設置した。
感覚がさえ鈍っていなければ何一つ起爆せず俺の前に現れるだろう。
爆弾を設置するだけして何一つ動かないでいること十分ほど経った頃だった。
数回にわたる爆発が中心の島へと繋がる橋の方面から聞こえてくる。
橋の方で爆発したのは、ユキが念のために仕掛けておいたものだった。
「ちっ、はずれか」
俺の視界の右上には今の爆発でHPが全損したプレイヤーの名前が出ている。
数はあったが威力は低めのを使っていたのにHPが全損すると言う事は全くといっていいほど爆発耐性スキルを取っていないか、爆発耐性にポイントを振っていないのだろう。
「アホめ。俺みたいな奴がいる事を考えてないのか。もう少ししっかりとしなきゃ対応出来ないって言うのに最近のやつらはダメだな……」
「なら私はOKですか?」
南国を風物とさせる木々の中からはこの場所には合わない大和撫子と言う言葉が似合う女性が立っていた。
「やっぱお前だったのか。ネットの世界って意外と狭いんだな。ルル……アウルって言った方がいいのか?」
「気付いていたんですか。それならすぐに言ってくれれば良かったのに。別に呼びやすいほうで構いませんよ」
「そっか。ならルルのままでいいや。それで質問なんだけど、最初からこの島にいたのか?」
「いや私のスタート地点は中心の島ですけど、何となく五つのどこかの島にいそうだったので回って来ました。そしたら二つ目で運良く爆弾を見つける事が出来たんですけど、どうやって行こうか迷ってたら不意打ちをくらいましてね、代わりに爆発に巻き込まれてもらいました」
「お前、さり気なく酷い事を言うな。今まではその本性隠してたのか」
「いえいえごく自然な考えだと思いますけど?ユキ君だって私と同じ状況だったら同じ事をするでしょ?」
「当たり前だろう。このゲームは自分が生き残るのが最優先だからな。どんな手を使ってもでも敵を排除して、最後まで生き残るのがこのゲームの目的だと俺は思っているぞ」
「ユキ君は昔と変わりませんね。一つ変わったとしたら、自分のことを私から俺にって言う所くらいですね」
「そりゃあもうお前に男って事バレてるからな。わざわざ隠すこともないだろ」
「じゃあ、質問に答えたので私からも一つ質問いいですか?」
「なんでも聞いてくれ。答えられる範囲だったら答えてやるぞ」
「ありがとうございます。いつから私のことをアウルって気付いてたんですか?」
「あぁそのことか。ルルは知らないだろうけど、予選の時の試合を一度だけ見てたんだけど射撃のときの仕草が似てたんでな」
「それじゃあ違う可能性だってあるじゃないですか」
「それはな、その仕草が出るときは絶対に相手の鼻の上を撃ち抜くんだよ。そんなの見たらお前としか思えないだろ。それに、ゲームの世界じゃ、結構長い間お前と一緒にいたんだから本選前には気付いていただろうよ」
「そうですか。私はあの時あった瞬間分かりましたけどね」
「そんなの俺の姿は年齢が上がっただけで殆ど変わってないからな」
「それもそうですね。じゃあそろそろ」
「だな。こんなたらたらと喋っていると他の奴が来るかもしれないからな」
「来ても即死ですけどね」
ルルは微笑みながら銃を構える。
装備は前見たのと同じスナイパーをメインとしている。
俺もルルが構えたのを見てからすぐに射撃が出来るように軽く構える。
潮の匂いと、少しばかりの鉄の匂いを含んだ暖かな心地の良い風だけが吹く。
心地よい風だけが吹き、無音の中で不自然に、ボトンッ!と鈍い音をたて木の上に実っていたヤシの実が落ちる。
そして、俺とルルの一対一が始まった。




