Intent 19
ブクマ評価感謝です。
次の更新は明後日を予定しています。余裕があれば、明日も更新したいと思います。
今日はいつもより早く夕食を済ませ、【IGO】に皆とほぼ同じ時間にログインしていた。
今日は当分【IGO】から離れる予定のため皆で決めた記念に出ることにした予選の日だ。
《ONE STRONGEST INTENT》
【IGO】の最強のプレイヤーを決める大会の正式名称。
この大会に優勝すれば、多額の金と、限定武器、限定アイテム、限定スキルのいずれか三つから選び贈呈される。限定武器は、一般に手に入る武器よりもステータスが高く、売れば超高額で取引される。しかし、限定武器はステータスが高くても、癖が強いため、使いこなす為にはひたすら使い続けなれていくしかない。そんな武器を使いこなしていたのがアウルだった。
今回の大会でまたアウルに再開できるのではないかと少しばかりだが期待を膨らませてる。
大会の出場受付は数日前には済ませているため今は時間に余裕もあり、中心街の路地裏にあるカフェで、リューク、ルル、ミカン、ユーリン、優花、ミサちゃん、絵実ちゃんと談笑をしていた。
優花のアバターネームは、ユカ、ミサちゃんは、ミーサ、絵実ちゃんは、イルミだ。
このメンバーでの談笑などつい最近までは考えられなかったが、この間会ったことにより、互いに仲良くなったのだ。
しかし、談笑と言っても、今行われているのは意気込みを言い合っている。このままいけば、笑いを貼り付け、心理戦が始まってしまうほどに今は緊迫している。
《ONE STRONGEST INTENT》の予選は、A~Oまでのグループに分かれ、トーナメント形式で、半径二キロ内のフィールドで1VS1が行われる。そして本選に出場できるのはグループで上位二名だ。
本選は、予選とは違い、広大なフィールドで行われる。今回本選が行われるフィールドは既に公開されている。今回の本選のフィールドは、中心となる街がある島を五つの島が囲んでいる。五つの島と、中心となる島はそれぞれ橋で繋がれており、五つの島同士も橋で繋がれている。橋の横幅は五百メートルあり、島と島との全長は一キロもある。これでは橋を渡っていたらいい的となると思うが、橋には、草や木が生えており、岩などもあるため、渡る時はそんなに狙いやすい的とはならない。それと、中心の島を囲う島もそれぞれ、街があったり、ジャングルになっていたりする。この広大なフィールドで総勢30名でのフリーバトルが行われる。
俺とミカンはAグループ。リュークとミーサ、ルルはDグループ。イルミがFグループ。Gグループにユカ。Jグループにユーリンとなっている。
どのグループを見ても、アウルの名前は確認することはできなかった。
しかし、今回は、リュークや、ルル達が参加するため不満はない。
「そろそろ時間だな。お前らもう終わりにして行くぞ」
時間が近づいてきたことを確認し、心理戦が始まりそうになっていたミカン達の話を終わらせ、メインタワーへと向かい始める。タワーへと向かう最中には、俺たちと同じように予選に参加するであろう人達がちらほらと見える。まだ予選が始まる前だというのにも関わらず、メインタワーに向かう道中には様々な屋台やプレイヤーによる武器やアイテムショップが開かれており、お祭り騒ぎとなっている。これが本選となると更なる賑わいとなり、予選、本選終了時にはパレードや祭りが行われる。このパレードや、祭りなどを楽しみとしているプレイヤーも少なくは無い。それだけ盛大に行われるのだ。
雑談をしているとあまり距離も無かったためすぐに到着した。
中に入るといつもより賑わっている。本選に出場出来る人を当てる賭博が行われている。中々大き目のモニターには各グループ毎に分けられた表があり、予選に参加するプレイヤーの名前が映し出されており、倍率が出ている。賭けはする気はないが、倍率は少しばかり気になってしまう。自分は注目されているのか。それとも注目はされていないのかだ。注目されているならその期待に応えたいと思っている。注目されていないならダークホースとなりたいと気合が入る。
人によって違うとは思うが、ゲーマーは皆そうだと俺は信じている。
だって、その方が燃えるでしょ??
「どうしたのお兄ちゃん。笑っちゃって」
「いや、なんかワクワクしてきただけだよ。気にしないでくれ」
「そっか。昔みたいな笑顔が見れて妹としてはとっても嬉しいよ」
「おっさんかよ……」
「ひどいよお姉ちゃん」
「ごめん……」
「よろしい」
優花は「ふふん」と言わんばかりに主張の無い胸を主張する。
(優花……悲しくならないのか?)
「二人とも兄弟でイチャつかないでさっさと行くわよ」
「待ってくださいよミカンさん。それと私はイチャついてなんかいませんよ。兄弟の仲の良い会話をしていただけですよ」
「私からしたら恋人にしか見えないわよ雰囲気が」
「お兄ちゃんはどっちかと言うとお母さんですよ」
「それもそうね」
俺を差し置いて言いたい放題の二人を追うようにして追うが、それを遮る者が現れた。
昔よく絡まれたことのある人種。
そう………おっさん達だ。そしてナンパだ……
俺は、ナンパしてきたおっさん達に分かるようにあからさまに嫌な顔をする。
「あの~。私あなた達に構っている暇ないんですよね。そこどいてもらっていいですか?」
「おいおい。つれねーなー穣ちゃん。おじさん達と一緒にそこらへんのカフェかなんかでお茶しようぜ」
「へっへっへっへ」と三人のおっさんは笑う。
これは、あれだな。うん。よくマンガとかに出てくる雑魚キャラの笑い方だな。
「今言いましたよね?私にはもう時間が無いんですよ。私も大会に出なきゃいけないんですよ。だからそこどいてください」
男達の間を抜けようとすると、俺の進路を塞ぐように男達が前に出てくる。
こいつら面倒過ぎる……
どんどんイラつきが募ってきてしまう。
「いい加減―――」
「「「うごっ」」」
俺の言葉を遮るように三人のおっさん達は股間を押さえながら膝から崩れ落ちて行く。
倒れこむおっさん達の後ろからは、ミカン、ユカ、イルミが立っていた。
こいつら、何の躊躇も無く男の大事なシンボルを潰しに行きやがった。
仮想世界じゃなかったら確実にお亡くなりになっていたでだろう威力だ。
今の俺には無い、男のシンボルのある位置を俺は両手で覆い隠す。
「何やってるのよ。早く行くわよ」
「お兄ちゃん。こんなやつら気にしないでいいのに」
「お兄さん。私も同感ですよ。こんなやつら蹴っちゃえば一発ですよ」
「あ、あぁ……」
こいつらは何を言ってるんだ。俺をお兄ちゃんや、お兄さんと呼んでるなら分かるだろ。俺は男なんだぞ。蹴り飛ばすなんて俺には出来るわけがないだろ。
俺はこの後股間を守りながら歩いた。




