Intent 1
ゆっくりと更新していく予定です。
文章に矛盾点や、誤字、脱字がある場合ご指摘お願いします。
VRMMOが普及し始めてから五年が経った。
VRMMOの完成はゲーマーはもちろん、一般人も待ちわびていた。
俺はその待ちわびたゲーマーの一人だった。
VRMMOを導入するに当たってβ版として作られたゲームが2つ。
1つは、《Second Life Online》
通称【SLO】。名前の由来はそのまま。魔法が使えて、モンスターを狩っていき成長していくRPG。
2つ目は、《Intent Gun War》
通称【IGO】。【IGO】は戦争をテーマにしたFPS。ゲームの最終目的地点は無く、本格的に始まった時には定期的に大会を開催すると予告されていた。
俺はこの両方のβ版をプレイするために抽選に申し込んだ。
結果は、【IGO】の抽選に当選することができ俺はβテスターとなった。
【IGO】は一年後には正式プレイが開始された。
しかし【SLO】は四年経った今も正式プレイが開始されていない。制作会社からのコメントは、「もっと素晴らしいものを作り上げたい」のみだった。
コメントをしてから四年が経ち、近々正式プレイが始まるとの噂も流れている。
でも今の俺にはいくら待ち望んだゲームが出ようと関係が無い。
二年前から両親の仕事の時間が変わり、両親は夜遅くに帰ってくることが多くなった。それに伴って俺はゲームをする時間を減らした。理由は簡単、3つ下の妹がいるからだ。妹はまだ中学一年生だったため、親が居ない時は俺が家事全般を代わりにやった。そのような日々が長く続いたためかゲームやらなくても昔のように、ゲームがやりたくてしょうがない症候群は起こらなくなった。
そんな俺は今高校二年なり、妹は中学三年になった。
今日は妹のリクエストでカレーにする予定だった。けど、昔からの親友でゲーマー仲間だった、岸原 竜輝に昔の黒歴史を楯に竜輝の家に強制連行された。
連行された俺はリビングのテーブルを六人で囲んで座っている。
「なぁ竜、この人達は?」
テーブルを囲んでいるのは、連行された俺、連行してきた竜、同じクラスの漆原藍月、御坂未樹、それと隣のクラスの島原、知らない少女一人。
漆原は男子、女子からも人気のあるゆったりとした人だ。
島原のことはたまあに竜の話で出てくる。竜の話ではこいつもゲーマーらしい。
御坂は運動神経抜群のスポーツ少女。身長が妹とほぼ同じで、似た雰囲気を感じる。
「漆原達のことは紹介はしなくていいよな?
えっと、こっちは俺らと同じ二年で、隣のクラスの島原雄二、それでこっちは一年生の夕崎林檎ちゃんだ」
夕崎は小さいながら落ち着いている雰囲気がある。
「それで、なんで俺はこのメンバーの中にいるんだ?」
「それは雪穂に一度だけでいいから【IGO】をやって欲しいんだ」
真剣だな……他の奴らも真剣な目で見てきている。皆【IGO】をやっているのか。島原は分かるが、この3人が【IGO】をやっているのは以外だ。
「理由を聞いてもいいか?」
「それはお前の力が必要だから」
「言ってる意味が分からないんだけど?」
「明日の九時からプライベートマッチがあるんだよ」
【IGO】にはフリーフィールドとプライベートフィールドに分けられてプレイされる。
基本的にはフリーフィールドでのプレイで、広大なフィールドで殺し合いをする。プレイヤーをキルすると経験値が貰え、キルしたプレイヤーの持っているランダム消費アイテムを貰える。しかし例外的に行われるのが互いに負けた時に渡す物を決めた戦いが行われるのがプライベートフィールドだ。
「で?どうしたいんだ」
「参加してほしい。雪穂はβ版からやってたよな?」
竜、それに他の四人が俺に縋る様な目で見てくる。
俺は四人を見渡す。
「………やだ」
「そ、そこをなんとかならないか?」
「竜、お前俺がなんでゲームやらなくなったか知ってるよな?それにプライベートってことはお前らが納得した上での勝負だろ?」
竜は俺の問いに俯く。他の皆も同じように俯いている。暗いオーラが全開だ。
「事情は知ってるけど、どうしてもこの戦いだけは負けられないんだ。頼む!」
こんな光景は見たくなかったな。
親友の高速土下座。凄まじいスピードで胡坐から正座に切り替え頭を床に突きつけた。
俺はこんなことをして欲しいわけじゃない。俺も協力はしてやりたいが、妹がいる。家事だってやらなきゃいけない。だからどんなに頼まれても協力をする気はない。
「すまんな。土下座されても無理だ。俺以外に協力してくれるやついるだろ」
「あ、あの先輩なんでダメなんでしょうか?」
「夕崎さんだっけ?理由としては俺には中三の妹が居て、面倒を見てやら無いといけないし、家事も俺がやらなきゃいけないからそんな暇がない」
「そこをなんとか時間を作って貰えないでしょうか?」
「なんでそんな必死なんだ?レアアイテムでも賭けたのか?」
頭を上げた竜が答える。
「レアアイテムもそうなんだが、御坂さんと漆原さんも賭けに含まれているんだ」
「意味がわからないぞ?」
竜が言っていることはこうだ。
御坂と漆原が待ち合わせをしている時にナンパをされたらしい。そこに待ち合わせしていた竜と島原、夕崎が到着して、無視してフィールドに出たら待ち伏せで全滅をさせられたらしく、レベル自体は低くないが数が多く5人では対処できなかったらしい。
その待ち伏せが何度も続き、我慢ができなくなった御坂がキレたらしく、プライベートマッチをする流れになったらしい。
勝った場合はレアアイテム献上と、今後一切関わらないと誓って貰う、負けた場合はレアアイテムの献上、御坂と漆原のPTの加入。
フリーでの待ち伏せ行為は禁止されてるわけではないが、特定のプレイヤーを狙うのは普通はやらない。
そんなことをやる奴らは逆に待ち伏せでやられる。しかし、竜達が喧嘩を吹っかけたのは大人数での行動をしている集団らしく、数で押し負けてしまうらしい。
「それはもう諦めてアカウントを作り直すしかないだろ?それに人数が差がありすぎるだろ。俺が加わったとしても六人のこっちに対して相手は十四人だろ。無理だろ」
こんなのは相当レベル差が離れていて、武器の差が無ければ勝つのは無理がある。
「話はこれで終りか?終わりなら帰るぞ」
素っ気ないとは自分でも思うが俺にもやらなきゃいけない事がある。
俺は御坂と夕崎の横を通り過ぎてドアに向かう。
そんな俺を止めるかのように竜は声を掛けてくる。
「雪穂どうしてもダメか?」
「おい、竜輝もういいだろ?β版をやってて、正式プレイを最初からやっていたと言っても一人加わっただけじゃ大した戦力になるとは思えない。それに俺はゲームを捨てた奴を無理にやらせようとは思わない」
島原の言ったことには少しばかり………少し所じゃない、めちゃくそ腹がたった。
俺はドアに向かっていた体を島村の方へと向け思ったことをぶちまけた。
「お前に何がわかるんだ!大好きなものができない辛さがわかるか!?目の前にあるのにできない辛さを!好きなだけ好きなものをやれるお前なんかにわかるのか?なぁ!」
こんなに怒ったのはいつ振りだろう。こんなに言いたい事をぶちまけたのは。
御坂、漆原、夕崎はこんな俺を想像できなかったのかビックリしている。竜は俺がキレることが分かってたみたいだ。俺を怒らせた張本人は御坂達同様驚いていた。
「俺が戦力にならないだって?ふざけんなよ、協力してやるよ!協力する代わりにお前らよりいい成績で終ったら俺の言う事を1つ聞け。それと俺は単独で動く。この条件を呑めるなら協力してやる」
「俺は異議はない。他の皆はどうだ?」
竜は呆然としている御坂達に確認を取る。
俺のキレことにはまだ驚きながらだが皆俺の出した条件に納得のようだ。
確認も取れたことだし、俺はドアに向けて歩き出す。
「待ち合わせ場所だけ明日教えてくれ。それと怒鳴ってごめんな。じゃあな」
俺はこれだけを言い残して竜の家を後にする。
家に帰る途中俺は竜の家であったことを考える。
恥ずかしい……あれじゃまるで中二みたいだ。恥ずかしすぎる!
でも………言ったからには勝つ!負ける気はない。こんな形でもう一度あの世界に行くことになるとは思わなかったけど、やるからには楽しむ。




