夜明けから夜まで 第九十五話
キャプテン・ドラゴンに連れられ、わたしたちはミシシッピ沿いの港を歩く。
かつては南部の穀倉地帯から運ばれた穀物や、南米大陸からの輸入品がここで荷揚げされて東北部へ向かう飛行船に積み込まれたらしい。
しかし、ミシシッピ沿いに国境ができて東側は黒十字の帝国が支配しているので、河の向こうへゆくことは困難になった。
さらに飛行機の航続距離が伸びたことによって、水路から飛行船へ連携する理由も今ではほとんどない。
しかし、この港には未だに飛行船格納用の、巨大な倉庫型ドックがある。
飛行船用ドックは五階建てくらいの高さがあり、街の一ブロックを越えるほどの長さがあった。
正面の扉は、高さが20メートルはありそうな巨大なものだ。
そうしたドックが一ダースは並んでいそうだが、そのほとんどが空である。
廃墟のようになったその港にあるひとつのドックに、わたしたちはたどり着いた。
ヤンが、扉のそばにあるパネルを操作し、巨大な扉につけられたワイヤーをウィンチで巻取り扉を開いていく。
わたしは、薄暗いドックの中に出現した飛行船に目をみはった。
全長はおそらく100メートルほど高さは15メートルほどで、飛行船としては中型であるが、その姿はかなり特異なようだ。
それは、通常の楕円形をした飛行船とは形状が異なっている。
水上をゆく船のように、上面が平らとなっており船首が斜め上に鋭く突き出して後方へゆくにしたがい丸みを帯びていた。
巨大な海獣のような姿にも、見える。
オフグレーの目立たない色に塗装されていたが、船腹には金色の龍が描かれていた。
どうやら、その龍がキャプテン・ドラゴンの由来となっているのだろう。
飛行船にしては大きな前進翼が取り付けられており、左右に二機ずつの大きな排気タービンエンジンが付けられていた。
船の前に立ち止まったキャプテン・ドラゴンがわたしを見ると甘い笑みを浮かべながら船の解説を始める。
「紹介しよう、おれの船、オダリスク号だ。彼女は、特殊装甲で被われているから20ミリ弾程度でやられることはない。しかし、その分自重が20トンほどになっているため最大ペイロードである10トン分の積荷を載せると自力では離陸できなくなる。そのためにリフティング・ボディの形状で船体が、造られている」
なんだかよく判らないが、この船は飛行機と飛行船の中間的な存在であり翼の替わりに船体で浮力を生じさせるということのようだ。
通常の飛行船と違って船体からは車輪のついた降着装置が出ており、地面に接地している。
船底に取り付けられているはずのゴンドラは、船体と一体化しており見た目にはゴンドラと見えない。
そのゴンドラを格納した船体の扉を開き、キャプテン・ドラゴンはわたしたちに手を差し出す。
「ようこそ、オダリスク号へ。何もないが、まあゆっくりくつろいでくれ」




