夜明けから夜まで 第九十四話
わたしは、キャプテン・ドラゴンの言葉を繰り返す。
「レーダーにひっかかれば、と言ったわね」
「そうだ」
物憂げに頷く美貌の青年に、わたしは嘲るような笑みを投げつけた。
「言っておくけれど、わたしは夜の眷属なの」
驚いたように、キャプテン・ドラゴンは片方の眉をあげる。
「それが?」
わたしは、無言のまま部屋の入り口近くにある鏡を指差す。
そこには、キャプテン・ドラゴン、ヤン、それに百鬼が映っている。
そこに並んで立っているはずの、わたしの姿は無い。
「あれが、どうしたんだ?」
甘い笑みを浮かべながら、囁くように言ったキャプテン・ドラゴンをわたしは睨みつけた。
「ああもう、鈍いわね!」
わたしは、腰に手を当てキャプテン・ドラゴンに向かって噛みつくように言葉を発する。
「いい、わたしたち夜の眷属ヴァンパイアは、存在の位相がお前たち家畜とはずれているの。だから本当は、お前たちの視覚ではとらえられない。ただ本能的な恐怖がお前たちのこころにわたしたちの存在を感知させ、架空の像を脳内に作り出す」
キャプテン・ドラゴンは興味なさそうに微笑んでいたが、おかまいなしにわたしは言葉を重ねた。
「けれどこころを持たないもの、鏡にしろカメラにしろレーダーもいれていいけれど、そうしたものはわたしの姿を映さない。わたしが身に付けているものも含めて」
「ほう」
キャプテン・ドラゴンは面白がっているように目を光らせる。
「お前は、便利な能力を持っているということだな」
わたしは、大きく頷く。
「わたしは、わたしが触れることで、存在の位相をずらすことができる。レーダーになんて、ひっかからないわよ」
キャプテン・ドラゴンは、楽しげに笑いヤンのほうを向く。
「お前はどう思う、ヤン」
「そうですねぇ」
ヤンは、少しうんざりしたような表情で語る。
「わたしたちの船は、図体がでかいですからね。レーダーに映らんでも高度を4千メートルまで下げりゃあ視認されるでしょうね。へたすれば、高射砲の餌食になりますよ」
「5千メートルでいい」
百鬼の言葉に、ヤンとキャプテン・ドラゴンが少し驚いた顔になる。
「そこからパラシュートで、降下する。高度を下げるのは5千までだ」
わたしは、驚いて百鬼を見る。
「わたしパラシュートなんて、使えないよ」
「なんとかしろ、夜の眷属なんだろ、一応は」
わたしは、百鬼を睨みつけた。
「判ったわよ、飛んでやるわ、5千メートルくらい」
キャプテン・ドラゴンは頷いた。
「決まりだな」
美しい若者は、そのまま立ち上がる。
「おれたちの船へ、案内しよう」




