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星よりきたりしもの  作者: ヒルナギ


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夜明けから夜まで 第七十六話

アルケミアの魔道師は残虐で、わたしにはそぐわない気もしたがでもその話にわたしは救われたとも言える。

わたしは、孤独であり孤立していた。

師匠は、その事実に理由と必然性を与えてくれたのだ。

そうすることで、自分の孤独さに耐えられる気もした。

それに、師匠はわたしと同じ世界から来たひとということになる。

これまでわたしの世界には、別宮六指しかいなかったが替わりに師匠が居てくれるようになった。

もちろん師匠は、何一つわたしを助けてくれるわけではないし、伽藍堂なひとである。

けれど、わたしは師匠と同じ世界を、つまりは師匠の妄想を共有することができた。

それで、十分である。

おそらくあの夢は、師匠の話が記憶の中で育って造り上げられたものではないかとも思う。

しかし、それだけでは解決できないところも色々ある。

何ににせよ、わたしは師匠と話をする必要があった。

師匠の病室は、わたしの病室と中庭をはさんで対角線上にある。

わたしは、薄暗い廊下を真っ直ぐ進んだ。

まるで洞窟の奥深くにある、秘密の儀礼小屋へ向かっているような気持ちになる。

師匠はある意味わたしにとって、秘儀の伝承者であるとも言えた。

病院を半周して、ようやくわたしは師匠の部屋へとたどりつく。

大きく重い木の扉を前にして、深呼吸を一度するとノックをした。

「入れ」

師匠の少し掠れた低い声が、中から響く。

わたしは、扉をひらき中へと入る。

そこは、図書館の一室のように本で満たされていた。

大学の研究室といったほうが、いいのかもしれない。

しかしその中心にいる師匠は、学者には到底見えないならずものの雰囲気を纏っている。

師匠は真夜中の太陽を嵌め込んだその瞳で、わたしを見つめた。

師匠は老いたおとこであるが、その瞳が持つ力は物理的な圧力を宿しわたしの心臓を貫く。

師匠は、そっと口を歪めて笑みを見せた。

「よう、ローズ。何があったんだ?」

師匠は、わたしの表情を見てあらかたのことに察しをつけたようだ。

わたしは師匠に促されるまま、椅子に腰をおろす。

師匠は、読書机の前に置かれたワーキングチェアに深く腰をおろしている。

燃え盛る漆黒の炎が持つ輝きをその瞳は宿しているが、痩せて皺が深く刻まれたその顔にはなんの覇気も感情もない。

ただ、呆然と全てを了解しているように見える。

師匠の、沢山の書物に囲まれたその部屋で、わたしは語りはじめた。

「夢を見たのです」

「ほう」

老いて枯れたその顔には特に表情が浮かんだわけではないが、その瞳は闇色の輝きを発する。

「王国の夢か?」

「そうです、わたしはアルケミアの魔道師でした」

師匠は何もいわず、眼差しでわたしに語ることをうながす。

わたしは息の続く限り、夢中で話を続けた。

その夜から朝までの、星よりきたりしものが地上へ現れてくる物語を語る。


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